日本経済

2025年3月2日

【三橋貴明】農業は人類を幸せにしたのか?

【近況】

Mitsuhasism第四巻
「農業は人類を幸福にしたのか?縄文と弥生」
がリリースになりました。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/mitsuhashism/

 第一章 史上最長の文明
 第二章 農業の誕生
 第三章 農業文明の光と影
 第四章 弥生文明の後継者たち

人類の文明を考えたとき、
狩猟・採取・漁猟文明と、
農耕文明は決定的に違います。

何が違うのかといえば、

農耕文明には「投資」が
必要という話です。

投資とは、
生産性を引き上げるための
リソース(労働含む)の投入です。
将来の生産量の拡大のために、
今、労働(※主に)をつぎ込む。

縄文文明は、
自然から
多種多様な旬なカロリー源を
獲得する文明でした。

日本の縄文文明は、
典型的な
採取・狩猟(及び漁労)文明でしたが、
食生活は恐ろしいほどに
「多様化」していました。

縄文時代の各地の遺跡から
出土した食品関連品目は、
陸上動物60種類、魚類70種類、
貝類300種類を数えるのです。

季節の「旬」に応じ、
多様かつ「安全」な食生活を
実現していたわけですね。
食料調達の安全性は、
実は縄文時代の方が、
弥生時代を上回っていました。

日本に水田稲作がもたらされ、
我々はカロリー源について
「コメ」に依存するように
なっていきます。
弥生文明の始まりです。

しかも、水田稲作は、
まさに投資です。
灌漑設備、水路、貯水池、畦など、
労働を投入し、
様々な設備投資をしなければならない。

投資をすると、
「所有権」の感覚が生まれる。
投資した水田の設備を奪われるのは、
許せない。
さらには、
土地利権、水利権という概念が
誕生。

水田から膨大なコメが収穫できると、
それを「守る」という発想が
生まれます。
稲の貯蔵をしたとして、
それを守る。

さらに、せっかく投資をしたにもかかわらず、
水害が発生すると、
全て無駄になる。
防災の概念が生まれた。

そして、
投資した生産資産が失われれれば、
他の共同体のカロリーを
奪いに行かなければならない。
つまりは、戦争。

農耕のために投資する、
資本を投じる経済、
つまりは資本主義とは、
確かに生産性は向上します。

同時に、階級の分化、投資に対する
固執、土地の権利、水利権、
災害のリスク、そして戦争と、
様々な弊害をもたらしたのは確かです。

別に、縄文文明に戻るべき
といいたいわけではないのですが、
まずは現在の「投資の経済」の現実を
知ることです。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/mitsuhashism/
是非とも、ご購入下さい。

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https://foomii.com/00305/20250301090000135531

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[三橋TV第983回]三橋貴明・菅沢こゆき
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公益資本主義について
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江田憲司議員が進める
「消費税減税」への道のりを
徹底インタビュー
https://youtu.be/CX_0O5DOhK4

Mitsuhasism第四巻
「農業は人類を幸福にしたのか?
縄文と弥生」
https://youtu.be/byiR9xG63RE

財務省解体デモを応援します。
https://youtu.be/H6ouPRYbmXk

◆三橋経済塾
3月15日(土) 
三橋経済塾第十四期第三回対面講義が
開催されます。
https://members14.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=2346
ゲスト講師は宇山卓栄先生です。

現時点までに決定している
十四期3月以降のゲスト講師の皆様は、
以下の通りです。
12月以外は、全て決まりました。
https://members14.mitsuhashi-keizaijuku.jp/

 第三回 3月15日 宇山卓栄先生(著作家)

 第四回 4月19日 森永康平先生
(株式会社マネネ CEO/経済アナリスト)

 第五回 5月17日 saya様
(シンガーソングキャスター)

 第六回 6月21日 中野剛志先生(評論家)

 第七回 7月19日 藤井聡先生
(京都大学大学院 教授)

 第八回 8月16日 荒川和久先生
(独身研究家)

 第九回 9月20日 吉田敏浩先生
(ジャーナリスト)

 第十回 10月18日 峯村健司先生
(一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所 主任研究員)
<<<NEW!!!

 第十一回 11月15日 大場 一央先生
(早稲田大学非常勤講師)

初登場の方は、
宇山先生、吉田先生、大場先生でございますね。
https://members14.mitsuhashi-keizaijuku.jp/
是非とも、ご入塾下さいませ。

◆チャンネルAJER 
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【三橋貴明】農業は人類を幸せにしたのか?への4件のコメント

  1. 利根川 より

    >>さらに、せっかく投資をしたにもかかわらず、
    水害が発生すると、
    全て無駄になる。
    防災の概念が生まれた。>>

    定住してその地で生産するから拠点を守るために防災が必要になる…そういえば、少し前には若者の間で定住せずにノマド生活をするみたいなのが流行ってると聞きましたが、あの流行は今はどうなっているのだろうか。

     話は変わりますが、久々にサンデージャポンを見たら怪しい稼ぎをたくさん持っているというお話の杉村太蔵先生がこんなことを言ってました。

    杉村太蔵先生(以下、杉村先生)「高校無償化は少子化対策にはなりません」

    杉村先生「日本の少子化は婚姻が減っていることが原因。収入面で結婚に踏み切れない人たちも多い」

    杉村先生「今、結婚して子供がいる世帯というのは比較的富裕層が多い」

    ※ここまでは分かる

    杉村先生「結婚できない貧困層から奪った財源で富裕層の子育てをやるなんてけしからん」(←解せぬ)

    最後のくだりは財務省にでも吹き込まれたのでしょうか(苦笑い

    私は政治家ではない杉村太蔵先生は好きなのでディスる意図はございません。

    今後、ご自身の立場を守るためにもコチラの動画⇓をご視聴ください。

    税は財源ではない。では集めた税金はどうなってるの?税金は何のため?国債と税金の関係を解説

    10分程度の動画ですので時間はとりません。

    最近では「信用創造」について大学入試共通テスト(2022年1月15日「倫理・政治・経済・問4」)でも出題される時代になってきましたので、経済についてコメントをするのなら目を通しておいた方がよろしいかと…

    加えて、財務官僚は国民同士を争わせて自分たちにヘイトが向かないようにする手法を使うので、のせられないようにご注意ください。

    杉村先生「結婚できない貧困層から奪った財源で富裕層の子育てをやるなんてけしからん」

    のせられちゃってますよ(苦笑い

    よく「俺たちの税金が〇〇に使われるなんて!」と怒っている人を目にしますが、俺たちの税金が何かに使われることなどありません。

    2024年度の予算はすでに執行されましたが(2024年度の支払いは済んでいますが)2024年度の徴税(確定申告)はこれからです。

    ”まだ支払ってもいない税金が何かに使われてるわけがない”

    我々が払った税金は国庫短期証券と相殺されてこの世から消滅しているだけです。

    当然、貧困層からとった金を富裕層にバラまくなんてできませんよ(苦笑い

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      1. 利根川 より

        それから、「お前が貧乏なのは財務省のせいではない」という意見があるそうですが…まあ、財務省だけのせいではないです。

        自民党が行ってきたコーポレートガバナンス改革(株主資本主義への転換)や労働規制の緩和による雇用の不安定化、過当競争によるコストカット合戦(賃金カットや下請けいじめ)そういったものの影響もあります。

        が、数字を見ると明らかに増税による影響がデカい。以下、森永卓郎さんによる解説。

        ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
        国民負担率は、2010年の37.2%から22年に47.5%へと10.3ポイント上がっている。

        消費税導入前の1988年度と2022年度にかけての負担増のなかで、主要なものを整理したのが次ページの図表2だ。

        図2 消費税導入前1988年度と現在2022年度の国民負担率の比較

        1税金 1988年/2022年

        ・消費税 0/10%
        ・復興特別所得税 0/所得税の2.1%
        ・給与所得控除 上限なし最低保証65万円/年収850万円で上限の195万円 最低保証55万円
        ・生命保険控除 上限10万円/上限5万円
        ・配偶者控除 所得制限なし/合計所得1000万円以上は適用なし
        ・専業主婦特別控除 配偶者控除に38万円加算/廃止
        ・老年者控除 50万円/廃止
        ・公的年金控除 120万円/110万円
        ・相続税基礎控除 5000万円/3000万円

        2医療

        ・健康保険料 8.30%/10.00%
        ・サラリーマン窓口負担 1割/3割
        ・国民健康保険賦課上限(年額) 40万円/102万円
        ・後期高齢者医療保険料 なし/6472円
        ・後期高齢者の窓口負担 800円/医療費の1割~3割

        3年金

        ・厚生年金保険料 12.4%/18.3%
        ・国民年金保険料 7700円/16610円
        ・厚生年金支給開始年齢 60歳/65歳
        ・国民年金満額給付(月額) 52208円/64816円
        ・国民年金満額給付(現在価値) 61711円/64816円

        4福祉

        ・介護保険料(現役) 0%/1.64%
        ・介護保険料(高齢者) なし/5869円
        ・障碍者福祉の自己負担 応能負担(9割は無償)/1割負担

        もっとも負担増が大きいのは、もちろん消費税増税だ。

        消費税収は、2022年度予算で21兆5730億円だが、これは国税分だけなので、地方税を入れると、27兆6577億円が国民に降りかかってきたことになる。

        厚生年金の保険料率は12.4%から18.3%へと引き上げられた

        次に大きいのは、年金保険料率の引き上げで、たとえば厚生年金の保険料率は12.4%から18.3%へと7.9ポイントも引き上げられている。それだけ負担を増やしたのに、厚生年金の支給開始年齢は60歳から65歳へと繰り延べられた。

        一方、国民年金の保険料は、月額7700円から1万6590円と2倍以上に上がっている。

        そのほかにも負担増は目白押しだ。東日本大震災の復興を支えるための復興特別所得税は、2013年から所得税に2.1%を上乗せする形で設けられていて、25年間続けられることになっているが、防衛増税との関係もあり、延長される可能性が高い。

        「控除の縮小」も相次いでいる

        一方、控除を縮小するという形での所得税増税も行なわれた。

        たとえば、サラリーマンの経費相当額を概算控除する目的で設けられている給与所得控除は、1988年当時は、給与収入に応じて無制限に増えていた。

        しかし、2013年分から、給与収入1500万円を超える場合の給与所得控除に245万円の上限が設けられた。

        また、2017年分からは、給与所得控除の上限が給与収入1000万円超で220万円となり、さらに2020年分からは、給与所得控除の金額が、給与収入の金額にかかわらず、一律10万円引き下げられるとともに、給与収入850万円を超える場合の上限が195万円とされることになった。

        こうして本来経費として控除されるはずの金額が所得に振り替えられ、増税されていったのだ。

        配偶者控除の減額、相続増税も

        配偶者控除は、2018年から、夫婦どちらかの年収が1120万円を超えると減額になり、1220万円を超えるとゼロになった。

        さらに、人によってはとてつもない増税になったのが2015年の相続税増税だった。

        それまで相続税には、5000万円プラス相続人1人当たり1000万円の基礎控除があった。

        たとえば、配偶者と子ども2人で相続をする場合、8000万円までは相続税がかからないし、申告の必要もなかった。庶民にとって、相続税は縁のない税金だった。

        それが3000万円プラス相続人1人当たり600万円に減額されたため、配偶者と子ども2人で相続をする場合の基礎控除は4800万円に減額された。

        つまり、基礎控除の額が4割減となったのだ。

        このため、大都市に不動産を持つ人の場合、相続税の対象となる人が激増した。
        75歳以上の2割が医療費負担倍増

        医療の負担も、サラリーマンの窓口負担が2割から3割に増額され、後期高齢者医療保険料も課されるようになった。

        また、2022年10月からは、中所得の後期高齢者の窓口負担が倍増された。

        単身者の場合、年収200万円以上383万円未満の医療費窓口負担は、それまで1割負担だったが、それを2割負担に変えたのだ。

        それまでの制度では、後期高齢者の窓口負担は原則1割で、現役世代並み所得の人(単身世帯で年収383万円以上)のみが3割負担になっているのだが、新たに「中所得層」区分を設けて、その窓口負担を倍増させたのだ。

        75歳以上の2割が窓口負担倍増

        この中所得層の200万円というラインはかなり微妙だ。現在の厚生年金受給者の平均年金月額は14万5665円だから、年額は175万円だ。年金が平均より少し高い人や勤労収入がある人は、対象になる可能性が高い。

        実際、政府の試算でも窓口負担倍増となるのは、75歳以上の2割、370万人と見込まれた。

        この窓口負担増は、2021年6月に成立した医療制度改革関連法で決まっていたのだが、実施時期については2022年10月から2023年3月の間と、幅を持たせていた。

        実際には、そのなかでもっとも早い時期に負担増が実施されたのだ。

        社会保険料は111.3%も増えている

        社会負担増政策の犠牲者になったのは、高齢者だけではない。一般の勤労者世帯も同じだ。

        図表3は、総務省「家計調査」を用いて、消費税導入前と2021年度の家計の比較を行なったものだ。

        図表3 消費税導入前(1988年度)と現在(2022年度)の家計の比較

        1988年/2021年

        ・世帯主収入 474万円/533万円 12.5%アップ
        ・直接税 53万円/57万円 7.1%アップ
        ・社会保険料 37万円/78万円 111.3%アップ
        ・税社会保険 90万円/135万円 50.1%アップ
        ・手取り収入 384万円/398万円 3.8%アップ
        ・消費税後手取り 384万円/366万円 4.6%ダウン

        まず、勤労者世帯の家計を31年前と比較すると、世帯主収入は474万円から533万円へと12.5%増えている。

        ところが、所得税と住民税を合わせた直接税は4万円増え、年金保険料や健康保険料などの社会保険料は41万円、111.3%も増えている。税金と社会保険料を合計した税社会保険料負担は45万円、50.1%増と、収入を圧倒する伸びを示している。その結果、手取り収入は14万円、3.8%しか増えていない。

        世帯主収入の手取りは18万円も減少

        念のために付け加えておくと、この表で使っている手取り収入は、正確ではない。

        なぜなら、税金と社会保険料には、世帯主以外の働き手が納めた分も含まれているからだ。

        ただ、世帯主以外が稼いでいる勤労収入は家計全体の1~2割であり、その収入は所得税や社会保険料のかからない水準のものが大部分であるため、無視しても大きな間違いにはならないだろう。

        さて、税金と社会保険料だけを差し引いた世帯主収入は、33年間で、384万円から398万円へと3.8%増加している。

        しかし、注意しておかなければならないことは、この期間で消費税率が0%から10%(食料品は8%)に引き上げられているということだ。

        この間接税の負担増は、32万円に及んでいる。つまり33年間で、税金は36万円、社会保険料は41万円も増えたことになるのだ。

        消費税増税分も含めた税社会保険料を差し引いた世帯主収入の手取りは、384万円から366万円と、18万円も減少している。

        「急激な増税と社会保険料アップ」が日本経済を破壊した

        なぜ、日本経済がこの30年間、ほとんど成長しなかったのかという疑問がしばしば提起されている。

        日本企業がイノベーションを怠ったからだとか、終身雇用・年功序列処遇が時代に合わなくなったからだとか、企業が雇用を守るために賃金を抑え込んだからだなどといろいろな意見が出されているが、この表を見れば、答えは明らかだろう。

        日本経済が成長できなくなった最大の理由は「急激な増税と社会保険料アップで手取り収入が減ってしまったから」だ。

        使えるお金が減れば、消費が落ちる。消費が落ちれば、企業の売上げが減る。そのため企業は人件費を削減せざるを得なくなる……という悪循環が続いたのだ。

        ザイム真理教は、国民生活どころか、日本経済まで破壊してしまったのだ。
        ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

        数字が読めるのであれば「お前が貧乏なのは財務省のせいではない」というセリフは出てこないと思いますが…数字読めないんでしょうかね?

        それから、能力がある奴は稼いでるとか能力がないから稼げてないとか、そういった話については一度マイケル・サンデル教授のお話を聞いてから改めて(どっか隅っこで)やってたらいいんじゃないでしょうか。

        ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
        封建社会に退化する現代社会 サンデル教授

        多くの人が、自分の成功は努力だけで成し遂げられたものだと考えているでしょう。

        もし、あなたもそうかんがえているのであれば、それは大きな誤解であり、また傲慢な考えであると肝に銘じておく必要があります。

        「実力も運のうち、能力主義は正義か?」で示したのはまさにこの点です。あなたが今の自分の地位にいられるのは、もちろんあなた自身の努力によるものもありますが、それ以上に両親の所得や家庭環境などの「運」に恵まれた可能性があるわけです。

        東京大学とハーバード大学の学生が参加した講義で、大学の入試試験に合格したことが、どれくらい自分の努力によるものなのかを議論したことがあります。

        アメリカのシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターが12年に発表した調査結果で、自分の努力がどれほどの成功につながると思うかを調べたものです。
        これによると、アメリカでは実に77%もの人が、自分の努力が成功につながっていると信じているのです。

        ハーバード大学でも、多くの学生が、自分の合格は自分の努力のたまものだと信じていました。

        しかし、努力すれば成功できるというのはただの”幻想”です。

        それは「トップの大学に入った裕福な家庭の子供の割合」をみれば明らかです。

        トップの大学に合格するには、当然猛勉強が必要です。その前提に立った上でも、明らかな格差が浮かび上がってきたのです。

        たとえば、東京大学の場合は、学生の60%以上が、日本の所得上位14%の家庭から来ています。

        ハーバード大学でも、3分の2の学生はアメリカの所得規模上位20%の家庭出身でした。

        さらに広げて、アメリカ東海岸にある8つの超名門私立大学群アイビーリーグの数字も見てみましょう。

        アイビーリーグに通う学生は、所得規模の下位50%の家庭よりも、トップ1%からの家庭から来ている人が多いのです。

        アイビーリーグでは、親の年収が8万5000ドル(約1250万)以下の学生には、授業料や寮代などが、全て無料になるという寛大な援助を提供しています。それなのに、このような数字になってしまう。

        ここからわかるのは、高学歴の学生の親もまた高学歴・高収入である場合がほとんどだということです。つまり、学生たちは、親やさらにその先の代から、高水準の教育を受ける特権を受け継ぎ、享受しているのです。

        もちろん、私は大学入試のための努力を否定はしません。でも、常々学生に対して、その成功は本当に自分の努力のおかげだけなのかを疑うように促しています。

        もしかしたら、両親の所得や、家庭環境が、大学入試の合格に大きな影響を与えているかもしれないからです。

        世襲貴族が復活している

        努力によって地位を獲得してきたと考える根本には、「能力主義」の思想があります。

        「能力主義」は、チャンスが平等であれば、勝者はその対価を得られる、というものです。誰しもが同じスタートラインからレースを始められるのであれば、努力した人間が勝つ。だから、努力は報われるのだー。これが能力主義の魅力です。

        しかし、ここにはある欠点があります。たとえ同じスタートラインからレースを始めたとしても、一部の人だけが有利な環境で育っている可能性があるのです。

        たとえば徒競走で考えてみましょう。ある選手が、健康で栄養状態も良く、高級なランニングシューズを持っていたり、最高のコーチやトレーナーから指導を受けたりする一方で、そうしたものを何一つ持っていない選手もいる。

        彼らの競争は真の意味で平等と言えるでしょうか。

        そこでは、努力とは無関係の要素がレースの勝敗を決めている可能性があるのです。

        大学入試の場合は、親の所得や、家庭環境がそうです。しかし、「能力主義」の世界では、そうしたアドバンテージは無視されて、結果だけが見られる。

        すると、平等なレースのように見えるが、実際のところはそうではない。先ほどのデータからわかるように、生まれによる格差はいまだ存在しているのです。

        むしろ、「能力主義」によって格差が広がっている。格差の再生産により、現代に封建制の「世襲貴族」が復活しつつあると考えています。

        たとえば、裕福な家庭では、幼少期から教育に投資をし、いい大学に入学させることができる。

        しかし、貧困層は子供への教育投資を満足にできず、貧困のサイクルから抜け出せない。

        現代社会において格差は固定され、むしろ広がり続けているのです。

        こうして最初は「努力したものは報われる」という”平等”を約束していたはずの能力主義が、今では格差を正当化するものとして機能してしまっている。

        この主張に対して、こんな反論があります。それは、「低収入の家庭に生まれても、頑張れば成功することは可能である」というものです。

        もちろん、それが当てはまる人もいます。しかし、それはほんの一握りの人だけの話です。

        OECD(経済協力開発機構)のデータを見れば明らかです。これは、社会的地位の上昇に何世代かかるかを計測し、世界中の国を比較したものです。下位10%の家庭に生まれた人が中流階級に到達するまでにかかった世代数を計測しています。

        アメリカでは5世代、日本では4世代かかっています。
        ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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      1. ts より

        ザイム真理教の世界って経済学は関係なさそう。
        スペンディングファーストの事実を理解している者からみればザイムの言うことは真理教のお経を聞いてるようです

        返信

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        1. 利根川 より

          返信ありがとうございます。

          実際、彼ら財務官僚のやっていることはどんな理論をもってしても正当化できないほどダメなことなので、森永卓郎さんの言うように新興宗教の世界なんですよね。

          高井たかし議員「中学校の公民で習う内容です」

          高井議員「景気が悪いときは消費の低下を防ぐために減税、景気が過熱している時は政府支出削減や増税で消費を減らす」

          高井議員「日本は30年間、これと逆のことを続けてきました」

          正直、財務官僚とその親派がやってきたことは頭がおかしいとしか言いようがない、もちろん悪い意味で。

           で、ザイム真理教に経済学が関係ないのかと言うとそうでもなくて、、、

          財務省・財政制度等審議会「高い家計貯蓄率と国内企業部門の豊富な資金余剰が国債の安定的消化に寄与してきたが、これが今後も維持されるとは限らない」
          (平成26年5月 「財政健全化に向けた基本的考え方」より)

          これね、主流派経済学のいう「貸付資金説」のことを言っているんですよ。財務省とその親派は確かに主流派経済学の影響を受けているわけです。

          ジョン・メイナード・ケインズ
          「いかなる知的影響からも無縁であると信じる実践家も、通常は、過去の経済学者のうちの誰かの奴隷である」

          どうせ影響を受けるのであれば、同じ主流派経済学者からも「害悪である」と言われるようなものではなく、ポスト・ケインズ派経済学の影響を受けてくれればよかったのに…

           ちなみに、最近では大学入試共通テストにも「信用創造」に関する問題が出題されるようになってきましたので、学生さんなんかはわかると思いますが「貸付資金説」は間違いです。これをやっているのは銀行ではなくサラ金ですね(苦笑い

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