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2024年3月11日

【藤井聡】【3月14日に土木学会で記者会見】首都直下地震と巨大洪水・高潮で経済と財政が超巨大被害。インフラ投資で、国民の生命と財産、そして「財政の健全性」を守るべし。

この度、土木学会(の某小委員会)が二年度にわたって作業した内容をとりまとめた、最新のデータと技術を用いて行った、首都直下地震や巨大高潮・洪水の被害推計が公表されました。そしてこの度、その公表値についての記者会見を、下記要領(3月14日 午後1時~@東京四谷・土木学会)にて開催することとなりました。ついてはメディア関係の方は是非、多数、ご参加頂きたいと思います。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000041422.html

さて、この結果を公表したのは「国土強靱化定量的脆弱性評価委員会」という(土木計画学研究委員会内の)小委員会。僭越ながら当方がとりまとめ役を仰せつかり、経済分析や洪水や高潮等の日本有数の専門家・技術者の方々で構成された委員会です。
(詳細は、コチラの公式HPをご参照ください https://x.gd/4lClx

本小委員会では、2018年に土木学会が公表した同趣旨の推計方法を踏襲しつつ、それをヴァージョンアップしたアプローチを用いて推計し、この度その結果を公表することとなりました。

その計算結果がコチラ。

計算の詳細は下記委員会のHP(https://x.gd/4lClx)に掲載した報告書をご覧頂ければと思いますが、以下、この結果を簡単に解説いたしましょう。
【報告書】 https://jsce-ip.org/wp-content/uploads/2024/03/R6_Mar_jsceip_resilience_report.pdf
【報告書要旨】 https://jsce-ip.org/wp-content/uploads/2024/03/R6_Mar_jsceip_resilience_report_summary.pdf

まず、超大型の台風が東京や大阪、名古屋に襲いかかり、巨大高潮が発生すると、資産(モノが壊れる被害)と経済(所得や生産が縮小する被害)の双方の被害をあわせて合計で100~200兆円の被害が生じてしまう、という結果となりました。

ちなみに、東日本大震災では、資産被害が約10兆円、経済被害が約65兆円の合計75兆円という被害水準でしたから(報告書:付録1-58参照)、巨大高潮が大都市で起これば台風一発で、あの国難と言われた東日本大震災を遙かに上回る(最悪ケースでは2倍以上もの)被害が生じてしまうと推計されたのです。

ただしそれよりも恐ろしいのは、やはり、首都直下地震。

ご覧の様に、資産・経済の被害をあわせて合計でなんと、1001兆円もの被害が発生するという恐ろしい結果となりました…。

これは東日本大震災の十倍を遙かに凌ぐ被害です。

やはり、東京には日本中の生産施設が集中しており、そこが一気に破壊されることで、途轍もない経済被害が発生することが示されたわけです。

最後に、洪水については、300兆円~500兆円強という合計被害が推計されていますが、これは、全国の109水系のそれぞれで想定されている「戦後最大級の洪水」が生じた場合の資産・経済被害を改めて推計し、それらを109水系分全て合計したものです。これは一発の地震や台風の被害ではありませんが、全国各地の洪水被害は合計でこれだけの被害ポテンシャルがあるということを示すものですから、極めて深刻な推計結果です。

(※ ちなみに、南海トラフ地震については、内閣府が推計する最新の想定外力の公表が、この度の能登半島地震に対する対応で忙殺されてしまい、公表が遅れ、いつ公表できるか分からない、との連絡があったため、今回の公表は見送ることとした次第です。内閣府が公表すればスグに計算し、改めて我々の被害推計値も公表する予定にしています)

さて、当方の委員会ではこうした巨大災害に対して、我々が一体何をすればいいのか、それによってどれだけ被害が減ぜられるのかについても、二カ年にわたって検討を重ねました。その結果がこちらになっています。

ご覧の様に、高潮については1兆円前後の予算で対策すれば(主として堤防整備)、約30兆円~40兆円程度減災(割合にすれば2割~7割程度)されることが示されました。そして洪水については、12~40兆円をかけて対策(堤防等)をすれば、それぞれの河川が想定している規模の洪水ならば、100%被害を食い止めることが可能となります。

そして、首都直下地震は、21兆円の予算をかけて道路ネットワーク、そして港湾をしっかりと強靱化すれば(それと同時に、建築物を耐震強化する民間投資を進めれば)、約370兆円、割合にして約4割もの被害を削減することが可能となることが分かりました。

これらの結果は、巨大災害をあらかじめ想定し、しっかりとした対策を行っておけば、その投資額の少なくとも約6倍(気候変動を考慮した洪水対策)、多ければ約10倍(洪水対策)から約20倍(首都直下地震)、約80倍(東京湾高潮対策)もの効果的な減災効果が期待できることを意味しています。

ただし、災害が破壊するのは経済、そして人命だけでは有りません。

大災害は政府の「財政」も徹底的に破壊するのです。

改めて表1をご覧いただきますと、その一番右列に「財政被害」という項目がありますが、これは、災害による経済被害に伴う「税収減」と復旧・復興のための「支出増」の双方による「財政赤字の拡大額」を意味します。

この項目に着目すると、各災害によって少なくとも25兆円(東京湾の高潮)、多ければ100兆円以上(気候変動を考慮した大洪水)、そして最悪では約400兆円(首都直下地震)もの財政悪化が予期されるのです。

これだけの被害を受けたとすれば、(緊縮財政はの学者・政治家が主張するような)「復興基金」を毎年毎年、数兆円ずつシコシコシコシコ積み立てていたとしても、そんなものは「雀の涙」にしかならず、災害時の財政悪化を食い止めることは不可能です。

ところが、下記の表3に示したように…

上述の堤防対策、道路・港湾耐震強化対策を行っておけば、インフラ投資学の何倍もの「財政健全化効果」(つまり、財政赤字額の圧縮効果)が得られるという結果となったのです。

まず、首都直下地震対策として21兆円の投資を行っておけば、その7倍以上もの「151兆円の財政健全化」が導かれるのです。これはつまり、21兆円投資をしておけば、財政は(その差し引きの)130兆円も「健全化」することを意味します。

逆に言うと、緊縮等によって21兆円の支出を避けてしまえば、短期的には21兆円赤字は減りますが、長期的には130方円も赤字が「拡大」し、財政が「悪化」する事になるのです。

このことはつまり、仮に政府・財務省が生命や財産や経済の事を度外視し、財政の健全化だけを考えるような存在であったとしても、首都直下地震のリスクがある以上は、21兆円の投資を行うことの方が圧倒的に合理的だということを意味します。

そしてもちろん、彼らが生命や財産や経済に配慮すれば、こうした21兆円投資の合理性はさらに確固たるものとなるということは、改めて指摘するまでもないでしょう。

同様の事が、高潮についても洪水についても言えるのです。それぞれ投資金額の少なくとも3倍、おおければ20倍弱もの、「財政健全化効果」が見込めるのです。

いずれにせよ、これまでの推計(例えば、2018年の土木学会推計)では、経済被害が計算されていましたが、こうした推計に対して緊縮財政派は、「これだけの被害がでるのだから、財政余力を残しておくために、平時においては緊縮を進めて、復興費を積み立てよう」という事を言っていました。

ところが、今回の推計結果は、そうした緊縮財政派の議論に重大な「誤り」があることを意味しています。

つまり、そんな「積み立て」をやったところで災害後の財政赤字は減らないが、そんな「積み立て」をするよりも、むしろその資金を「防災投資」に回した方が、災害後の財政赤字は大幅に削減できるからです。

具体的に言うなら、積み立てに1兆円使うよりも、防災投資に1兆円使う方が、少なくともその3倍、ケースによっては20倍弱も、その「財政健全化効果が高い」ということが示されたのです。

しかし、この結果は、計算するまでもなく、当たり前、という事もできるでしょう。

銀行に何兆円もためていても、そんなおカネは人の命も経済も財政も守ってはくれませんが、そのおカネで堤防をつくり、命の道をあらかじめ整備しておけば、そうしたインフラは人の命、経済、そして財政をしっかりと守ってくれるのです。

ただし…「土木学会」という学術組織ができることは、ここまで、です。最善の技術と最善のデータに基づいて以上の数値計算を公表し、その意味するところを解説すること以上のことは、「学会」という組織が直接推進することはできないのです。

後は、日本国民と国家、そして財政を守らんとする政治家の皆さん、そして、その政治家を支える一人一人の国民の判断に罹っています。

我が国の政治が、そして我が国国民が、未曾有の巨大災害危機に対して、理性的で合理的で冷静な判断を下されんことを、心から祈念いたしたいと思います。

追伸:テレビ、新聞、雑誌等のメディアの皆様、是非、本報告書についての記者会見にご参集いただき、ご取材下さいますよう、お願い申し上げます。ここで公表した計算結果を、一人でも多くの国民の皆様が認識することができれば、ここで想定した最悪の悪夢を回避する見通しが拡大していく事になります。何卒よろしくお願い致します。

■日時:2024年3月14日(木)13:00~(1時間程度)
■場所:土木学会 講堂(東京都新宿区四谷一丁目無番地)、オンライン(ZOOM)併用
■参加: 下記フォームから(3月13日(水)17:00までに)https://forms.office.com/r/a3tz9iTMB3
■その他詳細 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000041422.html

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