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2023年12月7日

【藤井聡】「東京一極集中が日本を救う!」という日本のインテリ達の『大嘘』

当方にしてみれば、東京一極集中が是か否か、なんて問われれば、「そんなもん、ダメに決まってるでしょ! そんなこと聞くなんて、おタク、バカなんですか…?」という風にスグに思うのですが、世間はそうでもないのです。

例えば、都市工学のエラい先生であられる市川宏雄先生という方は、「東京一極集中が日本を救う」(ディスカバー携書、2015)なんて本を 書いて、次のようなことを宣っておられます。

『今後,15歳~64歳の生産年齢人口が年々減り続けていく状況のなかで…限られた資源と労働力から日本経済を最大限に活性化させるには,やはり「選択」と「集中」しかありえないのではないかと,私には思えるのだ.』

まぁ、そう思うのは自由ですが、そんな根拠薄弱な事をいけしゃぁしゃぁと本に書いて出版するなんて、誠にもって困った話しです。

彼がそこまで言っているのは、要するに一極集中してた方が、「規模の経済」なるものが働いて、経済的に効率的だ、っていう話しで、とりわけ今日重要になりつつある三次産業においてそうなのだ、ということのようです。まぁ、規模の経済が存在するのは自明ですが、過疎と過密という弊害があることを無視してるのかと思えるような言説です。

同じような議論は、小峰 隆夫さんという経済学者が「東京一極集中是正論への疑問」(日本不動産学会誌、2015 年 29 巻 2 号 p. 36-41)なる論文で繰り返されています。要するに、人口の集積によるメリットは大きく、やはり、特にサービス産業で規模の経済のメリットは大きいのだ、とのこと。

ちなみにこうした、東京一極集中を是認する市川さんや小峰さんやの論調は、日本のいわゆる「インテリ層」の中で結構平均的なもの。逆に言うと、市川さんや小峰さんが一極集中を是認する本を出したり論文書いたりするのは、そうした「インテリ層」の中に蔓延している空気を吸い上げて形にしたものに過ぎないものなのです。

ですが、改めて論証するまでもなく、彼らの主張は、完っっっっっっ璧に間違えています。

まず第一に、彼らが言う「一極集中の集積の効果」なるものが重要であるなら、一極集中している国は成長していて、一極集中してない国は成長してない、という事実がある筈です。

この点を確認するためにまず、下記をご覧下さい。
これは、GDP上位20位までの20カ国における一極集中度ランキング。

ご覧の様に、日本はダントツの一位!

 

 

中心都市への一極集中が経済合理性が高い、というのなら、日本の成長率が世界一であってもいいはず…ですよね。

じゃあ、GDP成長率のランキングを見てみましょう。こちらは主要なOECD加盟諸国のランキングなのですが…

 

 

ご覧の様に、日本は世界各国の中でも、「ダントツの最下位」なのです!

逆に、一極集中度が当該諸国の中で「最下位」の中国の成長率は、GDP上位20カ国に絞れば、「ダントツの一位」となっています!

つまり、一極集中度トップの日本は成長率が最下位であり、一極集中度最下位の中国は成長率トップと、正反対の結果になっているのです!

つまり、市川さんや小峰さんに象徴される日本のインテリ達が共有している「東京一極集中は、効率的なんだから、今のままでいいんだよ。分散化なんてやったって意味ねぇよ」という空気は、実証データで完全に否定されているわけです!

これはもちろん、「集積のメリットなんて存在しない」なんて事を意味している結果ではありません。

ただ、集積が日本の様に過剰に進んでいる状況では、「集積のメリット」を「集積のデメリット」が遙かに上回っている、というだけの話しです。

昔の社会科の教科書では、「過疎や過密は問題だ」ということが当たり前の様に書かれており、当たり前の様に子供達は過剰な過疎や過密は問題だから、東京一極集中なんてダメだよなと思っていたわけですが、そんなことは、昔の子供達にとっても常識に属する当たり前の話しだったわけです。

ホンット、日本のインテリってのは困った人達ですね…

彼らは意図的かどうかは知りませんが、東京でビジネスして金儲けしてる奴等に、とりわけ、東京への公共投資が拡大したら金儲けができるビジネスマン達に陰に陽に媚びをうるために、東京一極集中を是認してみせているに過ぎないわけです。

ちなみに、この東京一極集中問題は、日本国家の存続にとって何よりも大切な議論の一つでありますので、この問題は、また改めてより突っ込んで論じていきたいと思います。

追伸1:本記事は当方のメルマガ『表現者クライテリオン編集長日記』からの抜粋。毎週5,6本の記事を配信中。ご関心の方は是非、ご購読下さい。
https://foomii.com/00178

追伸2:「東京一極集中」を緩和のために最も効果的なのは「インフラ」政策!道路、新幹線、港…あらゆるインフラの地方投資が超絶な効果を発揮します。是非『ももいろインフラーZ』、ご視聴下さい!
https://s.mxtv.jp/variety/momoiro_infra_z/

追伸3:岸田さんの少子化対策の概要が今、あれこれ報道されていますが…それがどれだけ出鱈目なのか、徹底解説。ご関心の方は是非ご一読下さい。
『岸田総理の「異次元の少子化対策」は完全な間違い。やればやるほど「子供が減る」最低の愚策である。要は、「総理が岸田だ」という一点こそが、日本最大の危機なのである。』
https://foomii.com/00178/20231202124053117342

 

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【藤井聡】「東京一極集中が日本を救う!」という日本のインテリ達の『大嘘』への2件のコメント

  1. 赤城 より

    こと日本経済やらマクロ経済のことについては特に抽象的なデータ根拠のない印象だけの記事ばかりが情報工作のように報じられてきた。
    そのようにひたすら何の検証もなく政治も報道も記事もなされるので地獄への道の行進を嬉々として進める途方もない阿呆の日本という国を作り上げた。こと日本経済の情報工作については財務省は意図して日本を地獄に突き落としてきたとしか考えられない。

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  2. bibliography より

    「過ぎたるは及ばざるが如し」

    インテリ()はこんな言葉も知らないんでしょうかね?

    「ある程度の都市集中」←世界中で起こってること
    「東京一極集中」←最低成長の日本と発展途上国でしか起こってないこと
    をごちゃ混ぜにして正当化するアホが多すぎる

    出生率最悪の東京とかいうダメな土地に若者という種を撒いて「子供が少ない」と騒いでるのとか本当に頭悪いし、もはや東京一極集中論者は売国奴、国賊と呼んでも差し支えない

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