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日本経済

2022年12月28日

【藤井聡】年末年始は是非、『「反転」の年 2022-2023――戦争、テロ、恐慌の時代の始まり』 をじっくりご一読下さい。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

みなさん、こんにちは。表現者クライテリオン、編集長の藤井聡です。

この度、表現者クライテリオンの最新刊『「反転」の年 2022-2023――戦争、テロ、恐慌の時代の始まり』の特集号を刊行しました!


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  定期購読(10% off): https://the-criterion.jp/subscription/

この号は、2022年最後の号ということで、クライテリオン初の試みとなる「今年を振り返り、来年を展望する」特集として編纂しました

この号のまず第一の特徴は、その表紙イメージ。これまでのイメージを一新し、黄色と黒で、時代に「警告!」を発する表紙を(西部邁時代のクライテリオンからお世話になっているデザイナーの芦澤氏)に仕上げて頂きました。この表紙はまさに、この2022年から、世界も日本も明確に、「戦争、テロ、恐慌」という超弩級の危機が連発する時代に突入したことを象徴しており、こうした危機意識を広く国民全般に共有してもらいたいという思いで、本誌を編纂いたした次第です。

思い起こせば2022年は、本当に様々なものが、「平和」状態から「危機」状態へと〝反転〟した年でした。

何と言ってもまず、ロシアによる欧州・ウクライナ侵攻は、中東やアフリカ、南アメリカといった途上国が主体となる地域ならいざしらず、いわゆる先進国で構成される地域においては全面的な戦争は起こらないだろうという漠とした空気を大きく〝反転〟させることになりました。

この戦争は、「地球を一つの共同体と捉え、世界の一体化を図ろう」というグローバル思想に漠とした明るい未来を見いだす薄甘い空気を一気に〝反転〟させることとなりました。東西冷戦直後は、本誌で伊藤貫氏が指摘している様に、いわゆるフランシス・フクヤマ流の「アメリカニズム」が世界を支配するという認識が広まり、これがグローバリズム推進の機運を作り上げていたのですが、そういう薄甘い期待がこのロシアのウクライナ侵攻によって完膚なきまでに叩き潰されたのです。

 結果、旧・覇権勢力である欧米を中心とした「自由民主主義勢力」と、新興勢力である中国を中心に朝鮮、ロシア、イラン等が連携する「権威主義勢力」とが覇権を巡る闘争・紛争・戦争を繰り返す時代へと、完全に突入してしまったのです。

 この「新興勢力と旧勢力との覇権争い」という歴史の流れは、本誌にて(本誌初登場の)政治活動家・外山恒一朗氏や政治学者の吉田徹氏が指摘している様に、決して2022年に唐突に起こったものではなく、かねてからマグマの流れのように世界史の底流を静かに、しかし強烈に流れていたものではありました。しかし、地下のマグマが時に噴火して突然に現れ出でるように、その覇権闘争を巡る巨大なマグマは、ウクライナ・ロシア戦争という名の火山として大きく噴火することになったのが、この2022年だったわけです。

 その結果、旧・覇権勢力である欧米の相対的地位はますます低下していくことになることは必至。

 それは第一に、中国の専門家である遠藤誉氏ら、多数の論者が指摘する様に、露中連携がさらに加速するからです。

 そして第二に、ウクライナ戦争によって生じた様々な資源・食料の供給力不足によって、世界は一気にインフレ経済へと〝反転〟することとなり、その結果、アメリカは超絶な金利引き締めを行うに至ったからでもあります。しかし、本誌編集委員の経済思想が専門の柴山桂太氏が指摘するように、こうした金利引き締め策は、23年におけるアメリカ経済の大幅な低迷を導かざるを得ないのです。そうなれば、ただでさえ低迷していた、旧勢力の欧米勢力の世界的影響力が下落していくことになるのです。

 こうして、欧米の相対的地位が引き下がってくれば、旧勢力はますます勢いづき、欧米とさらに激しく紛争・対立していくことは必死です。その結果、この紛争は、吉田氏や伊藤氏が指摘するようにあと10年、20年継続していくことは、もはや避けられなくなっていくことでしょう。なぜならこうした覇権を巡る世界的な紛争・戦争は、いずれか一方の勝利が明確な形となるまで継続するからです。

……2022年からまさに、本誌の先号で特集したように「第三次世界大戦」状況へと世界は突入することになった訳ですが、そんな中で日本が生き残っていくためには、経済的にも、軍事的にも弱小なままであっては絶対に許されないのであり、何とか経済的にも軍事的にもその力を拡大していかねばならないのです。

 しかし、本誌編集委員の柴山桂太氏や、経済アナリストの森永康平氏が強調するように、我が国が緊縮政治を貫いているままでは、経済的、軍事的な成長は絶対無理であり、日本を取り囲む米中露の覇権闘争の中で、様々な形で侵略され収奪され隷属化されていく隷属的奴隷的弱小国家へと転落することは必至なのです。

 そうした危機感を、自民党の中で相対的に比較的持っていたと目されていた有力政治家として安倍晋三氏がいたわけですが、2022年は、あろうことか、テロによって殺害される事態となりました。

 その結果、国内は岸田文雄現総理大臣に象徴される〝緊縮派〟勢力が一気にその影響力を拡大し、あらゆるタイプの増税を繰り返し、経済はさらに失速し、我が国はまさに、自滅の道をひた走る状況になっています。

 したがって、新しく迎える2023年は、この岸田路線=緊縮増税路線から〝反転〟し、安倍氏が晩年熱心に広めようとしていた「積極財政」路線を採択できることができるか否かが問われているのです。

 それさえ出来れば、座談会で筆者が、そして、記事の中で森永氏が繰り返し主張しているように、我が国のデフレによる国家衰弱の流れを大きく〝反転〟させ、力強く成長する、「富国強兵」の軌道を歩み始めることが可能となるのです。

 こうした道を我が国日本が採択するためには、堀茂樹氏や星山京子氏らが指摘した、私たちは一体どういう民族であり、どういうアイデンティティを持つ存在なのかをしっかりと認識することが必要です。その上で與那覇氏が論じた「正しきこととは何かを求める精神性」を取り戻していくことが必要不可欠です。

 そしてそれらができた時に初めて、(この度日本再興大賞を受賞した)評論家・小幡敏氏が論じた様に、真に〝義〟の為に「戦う」精神が立ち現れるのです。そしてそれができて初めて、大恐慌と大戦争の狭間で、我が国が正しく戦い、正しく生き残る道を選び得ることができるのです。

 我々は、2023年にそうした道に踏み出し、滅び去らずに生き残る道を、正しく選び取ることができるのでしょうか……それはもちろん絶望的に難しい状況ではありますが、決してみが完全にたれている訳でも有りません。それが仮に〝希〟なものであったとしても、そこには確かに〝望〟みが、未だにあります。

その望みを実現させ、「反転」攻勢を仕掛けるためにもまず、この年末年始は、本誌クライテリオンの

『「反転」の年 2022-2023――戦争、テロ、恐慌の時代の始まり』

をじっくりとご一読頂きたいと思います。

何卒よろしく、お願い致します。

追伸1
本特集号にご関心の方は是非、下記、


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あるいはこちらを御参照下さい。
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追伸2:今年は実は、次の様に総括することもできます! 来年に向けて是非、ご一読下さい!
『今年の日本の状況は岸田文雄氏の「無為無策、ただし増税だけは決断実行」路線でますます最悪……しかし「緊縮が絶対必要だ」という空気は今年は確実に大きく縮退した!』
https://foomii.com/00178/20221225165441103598

追伸3:一見どうでもいい話の様に見えますが……クロちゃんは実は日本の暗部を深く考察するにあたって秀逸なモンスターなのです……。
『ご当人達は幸せだろうし批判する人もいるでしょうけれど、水ダウのクロちゃんの「モンスター・ラブ」のハッピーエンドは正直、メチャクチャ残念だった……という件。』
https://foomii.com/00178/20221224232333103580

追伸4:「防衛増税」については、以下の二点を認識することが、絶対に必要です!
『【景気条項・導入論】政府は「法人税」は堂々と増税すべきである。しかし、それは不況が続く状況下では慎むべきである。』
https://foomii.com/00178/20221223153038103528

『防衛「施設」投資を全額、「建設国債」で充当せよ。さすればそれだけで防衛のための所得増税&たばこ増税は全額〝不要〟となる!』
https://foomii.com/00178/20221221100000103414

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  1. 利根川 より

    >>ウクライナ戦争によって生じた様々な資源・食料の供給力不足によって、世界は一気にインフレ経済へと〝反転〟することとなり>>

    未来投資会議「これからはグローバル化の時代なんだから、食料なんてわざわざ自国で作らなくても買ってくりゃあいいじゃん」

    とやっていたために、ウクライナ戦争の影響で海外から小麦をはじめとする食料品が入ってこなくなって品薄に…結果、コストプッシュインフレで苦しむことになったわけですが、この段にきてまだ農業・畜産を苦しめるようなことをしている政府に対し「頭がおかし」と書きなぐったのが数日前のことでした。
     12月28日の読売朝刊に以下のような記事が載っていました⇓

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    政府は27日、輸入の割合が大きい農作物や肥料の生産を拡大する「食料安全保障強化政策大綱」を策定した。

    ・30年までに肥料使用量に占める国内資源の割合を40%へ拡大

    ・海外比率の高い作物の生産面積を拡大

    ・30年までに21年比、小麦9%増、大豆16%増、飼料作物32%増、米粉用米2.8%増

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ようやく食料安全保障に真面目に取り組む姿勢を見せてくれるようになったかと一瞬安心したわけですが、内容を読むと

    「必要な財源については責任をもって確保すると明記した」

    …緊縮・増税の布石にされとるやないかい!

    財源とかプライマリーバランスとか言っている限り「何かを良くすると何かが悪くなる」意味のない動きを繰り返すことになるだけなんですよね。はやいところ金貨銀貨の時代でストップしてしまっている古い脳味噌を最新版にアップデートしてもらいたいものです。
     それにしても、岸田総理は必死に財務省の方針を守っているというのに、財務官僚達は自分達の出世・保身のために岸田総理を捨て駒にして

    財務官僚「岸田が総理の内にできるだけ増税をやらせてしまおう」

    とやっているのだから何とも哀れ。

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