【三橋貴明】イメージに騙されない

日本経済

2022年11月7日

【近況】
「イメージ」というのは怖いもので、
論理的な思考能力を奪い取る。
というよりも、思考停止に追い込む。

例えば、皆さんの多くは、
「農耕文明は採取・狩猟・漁労の文明よりも、
生存確率が高い」
と、思い込んでいません？

　日本でいえば
「弥生時代」対「縄文時代」です。
確かに水田稲作は生産性が高く、
大量の米を生産できます。

とはいえ、不作の時は？
　他に選択肢はあるの？
縄文時代の各地の遺跡から出土した
食品関連品目は、陸上動物６０種類、
魚類７０種類、貝類３００種類を数えます。

季節の「旬」に応じ、
多様な食生活を実現していたわけです。
「○○が採れない。
ならば、▽▽で食いつなごう」
が可能だったのは、
弥生ではなく縄文時代の方なのです。
「何かに依存する」ことほど、
危険なことはない。

さて、弥生時代、水田稲作が広まった。
結果、離乳食を作ることが可能になり、
子供の乳離れが早まり、多産化しました。

農耕文明が、採取・狩猟・漁労文明よりも
人口が増えるのは確かなのですが、
それは「食料の安定供給」が
可能になったためではなく、
離乳食が理由です。

人口が増えた農耕民族は、
不作になると「全滅」することになる。
というわけで、
「他の土地を奪いに行く」ことになります。
すなわち、戦争です。
日本は水田稲作と共に、
戦争をも輸入したのです。

イメージでは、
「採取・狩猟・漁労」民族の方が
好戦的に思えるでしょう。
農耕民族は、牧歌的に
畑や田んぼを耕している、と。

とんでもない。逆です。
耕作により食料確保のリスクが高まり、
人口が増えた。
当然ながら「争いごと」が
多発するようになるのです。

実際、縄文時代の遺跡からは
「大量殺戮」の遺骨が全く見つからない。
そして、弥生時代の遺跡から出てくる。

いかがです？
　論理的に考えてみれば「当たり前」
の話なのですが、
イメージにより思考を制約されていません？

無論、人間がイメージから
完全に解き放たれるのは不可能でしょうが、
とりあえず「そういうことはあるよ」
を理解してもらうために、本稿を書きました。

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