From 藤井聡@京都大学大学院教授
岸田首相は令和4年3月10日、東京都の豊洲市場を視察し、原材料や食品が相次ぎ値上がりしていることについて「新型コロナの影響とウクライナ情勢による影響とダブルパンチに見舞われているという話を伺った」と述べたそうです。
そして、「緊張感を持って、政府として対応を準備していかなければいけない」と述べたそうです。
これは大変結構なことです。
この部分だけ見れば、速やかに効果的な対策を準備し、それを実施していくのだ、と大いに期待することでしょう。
では一体岸田氏が何をいっているのかを、具体的に確認してみると、実にその内容はお粗末な内容です。岸田氏の発言はこうです。
「特に、ウクライナ情勢については状況が不透明で長期化するおそれがあることを考えると、実情の把握が重要だ。原材料費の価格高騰について、進めている激変緩和措置などの対策の効果を見極めながら考えるが、追加の対策について、引き続き準備をすることが重要だと感じた。緊張感を持って、政府として対応を準備していかなければいけない」
実に回りくどい表現だが要するにまとめると、
1)ウクライナ情勢は長期化しそうだから、その「実情の把握が重要」だ。
2)進めている激変緩和措置などの「対策の効果を見極める」。
3)政府として緊張感を持って「対応を準備」していく。
という事になります。つまり、岸田氏がやると言っているのは、「実情の把握」であり「対策の効果を見極める」事であり、それらを踏まえた「対応の準備」に過ぎないのです。
つまり、「対策を速やかに実施する」とは結局一言も言っていないのです。
なんと緊張感の無い発言なのでしょうか。
「緊張感を持って」という言葉を使っているところが、さらに、岸田氏の緊張感の無さを逆説的に強調しているかのようでもあります。
この発言は、実情の把握が終わらなければ、対策をしないと言っているに等しいものです。
同時に、対策の効果を見極めて、追加対策の必要性が明らかにならなければ何もしないと言っているに等しくもあります。
さらには、実情が把握され、追加対策の必要性が明らかになったところで、実施するのは「準備」に過ぎない。準備をしたところで、それをいつ推進していくのかは、依然として判然としないのです。
この発言後に岸田内閣が一体何をどうするのか不明だが、この発言の重要なポイントは、やらないことの言い訳、いわば、いくつもの「逃げ道」が用意されているという点です。
例えば、結局何もやらず、それで他者からえらく批判されたとしても、上記の様にさえ言っておけば、実情の把握が十分出来なかったからとか、今やっている激変緩和措置の効果の見極めができなかったからだとか、激変緩和措置の効果があるという事が一定程度確認できたからだとか、準備を行っている内に価格が下落しはじめたからとか、最終的に準備したものを実施するためには、さらなる検討が必要だったからとか……のらりくらりとあらゆる言い訳ができる様になっているのです。
ところで岸田氏が、「いま行っている激変緩和措置」と言っているのは、ガソリン代の補助金の事です。
全国平均ガソリン価格が1リットル170円以上になった場合、1リットルあたり「25円」(かつては5円)を上限として、燃料油元売りに補助金を支給する、という仕組みです。この制度は、上述のように「燃料油元売り」に対する補助だから、その販売価格にそのまま反映される保証はありません。だから、その補助が農家を含めた食産業にどの程度の効果を持つのかは未知数です。
だからこそ岸田氏は、「原材料費の価格高騰について、進めている激変緩和措置などの対策の効果を見極めながら考える」という逃げを打っている訳です。
ただしここで重要なのは、岸田氏が言う激変緩和措置は、単なるガソリン価格の高騰対策に過ぎないという点です。
今、食産業が直面しているのは、ガソリン代の高騰という危機だけなのでなく、ウクライナ情勢の煽りを受けた小麦を中心とした輸入食品の価格高騰です。
そもそも、ロシア、ウクライナで全世界の小麦輸出量の3割を占めていますが、この供給が止まったのであり、それによって世界マーケットで小麦価格が高騰しているのです。
だから、岸田氏がどれだけガソリン価格についての激変緩和措置をやろうが、この小麦価格高騰に対する対策には何らなっていないのであり、食産業はこの価格高騰のダメージをそのまま被る事になるのは、100%間違い無いわけです。
で、それが価格に転嫁されれば、その被害は国民全体に広がる事になるのです。
にも拘わらず、この小麦価格の高騰に対する対策を、準備するかどうかは、ガソリン価格についての激変緩和措置の効果がどれくらいあるかどうかを見極めてから考えると、岸田氏は言っているのです。
どこまで果てしなく、岸田氏には危機感が欠如しているのでしょうか―――。
言うまでも無く、この岸田氏の恐るべき及び腰は、偏に、財政当局に気を使っているからに他なりません。
この小麦価格の高騰に対する最も効果的な対策は、補助金の支給です。
しかし、そんな事を勝手に決めてしまっては、後々財務省から批判され、今後の政権運用に支障を来してしまうかも知れない―――岸田氏は、そうした財務省に怯え、今後の政権運用に支障が生じてしまう事を恐れているからこそ、小麦価格の高騰対策についての抜本的な対策について、超弩級に慎重な態度を崩してはいない―――そうとでも考えなければ、こうした岸田氏の及び腰には説明が付かないのではないかと、思います。
そもそも岸田氏は、国民がコロナ禍で苦しんでいる令和4年1月の時点で、早々とプライマリーバランス「25年度黒字化」目標維持を表明しているのです。
つまり、税収以上に政府支出はしないように、徐々に支出を削っていきます、ということをコロナ禍のまっただ中で表明したわけです。
岸田氏は、この財政規律目標を守りたいからこそ、日本の農家や食産業、果ては国民経済を守る事を蔑ろにしているわけであり、つまり、政府のお財布の事情を、国民の暮らしの窮状よりも大切にするのだ、と言っているのです。
この岸田氏の緊縮的態度が無い限り、岸田氏の「政府がオカネを国民に使う事を準備することを検討することを検討します、そのために情況、とりわけ今やっている対策の効果を、緊張感をもって見極めて参ります」というような緊張感のまるで無い発言は繰り返され、その間、日本国民は激しい被害に苛まれ続ける事になるでしょう。
財政規律至上主義、PB規律至上主義とは、一見、理性的で倫理的で社会的に望ましいかのように見えるものの、その実態は、実に反社会的で恐ろしく危険な代物なのです。
つくづく、PBの恐ろしさを感ずると同時に、それを巧妙に我が国政府に決定させた財務省の恐ろしさに戦慄を覚える次第です……。
追伸:この最悪のPB規律による国民経済被害を回避するためにも、今年の参議院選挙の争点をPBにせねばという流れが生まれつつあります。是非、ご一読下さい。
『参議院選挙が行われる2022年の政局は「プライマリーバランス規律の凍結」が機軸となる! その背景を徹底解説します。』
https://foomii.com/00178/2022030710583091826
【藤井聡】岸田総理が「対策をする準備をする検討をするための情況把握」をしている間に石油と食料の輸入価格高騰で、日本経済は地獄に落ちる。への3件のコメント
2022年3月11日 12:31 PM
財務省に怯える理由がよくわかりません。私が総理なら喧嘩の弱い官僚など様々な手段を使って虐めて言う事をきかせます。何が恐いのでしょう?
そこが全く分かりません。
岸田が気配りしているのは高齢者の票ですかね。
言っても分からない政権にはクーデターか革命。
それが無理なら個人が出来る事は他人の事など気を使わず自分の利益に直走る事ですね。当然高齢者や若者や他人の子供や女性は割を食う事になります。
そうと決めたら形振り構わないのが私です。「命?はあ?自分の命くらい自分で守れや、何やその不細工な顔と頭の悪さは?お前が弱いのが悪いんちゃうか?」と意図も簡単に私は言ってのけます。
誰かと友達になろうとも思っていない、誰かを特別にアテにはしていない、ただ同じ土地に同じ人種の人間がいるだけとの認識です。
借金は踏み倒すもの、タバコと乳首は吸うもの、戦争や差別はあるもの、ホモは気持ち悪いもの、不細工な女は性格も悪いもの、金払いが悪い企業など相手にしないもの、言っても解らないヤツは暴力などあらゆる手段で痛めつけろ、やられたら断固として倍返ししろ、法を恐れない。私はそんな風な価値観ですね。
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2022年3月11日 12:58 PM
以下 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
より 引用
破綻国家(はたんこっか)、或いは崩壊国家(ほうかいこっか)とは、権力の弱体化によって政府が国家の構造(主権国家体制)を制御できなくなり[1]、政府が果たすべき基本的な責務(例えば、1.正常に作動する法体系の維持、及び2.国民に対する電気・水道・教育・病院といった公共サービスの提供等)を果たせなくなっていると考えられる国のことである[2]。
引用終わり
なんと 日本国の目指す 国家像じゃあない ですか、、
これからは 日本国ではなく
失敗国 破綻国 崩壊国
と 呼びませう ♪
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2022年3月11日 5:39 PM
この小麦価格の高騰に対する最も効果的な対策は、補助金の支給です。
パンでなく、米、寿司、食いね
うどんでなく、そば、食いね、
あっ、関西は無理か
おっと、さっき、クリームパン買うたわ。
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