日本経済

2020年1月29日

【藤井聡】消費「減」税は是か非か? ~片山さつき議員とのTV討論報告~

From 藤井聡@京都大学大学院教授

 

先週、テレビ朝日の「羽鳥慎一のモーニングショー」のそもそも総研というコーナーの「消費減税 是か非か?」という企画で、消費減税賛成派の立場で登壇いたしました。「減税反対派」の方としては、自民党の税制調査会幹事(以下、税調幹事)の片山さつき参議院議員が登壇されました。

この内容は、SNSなどを通して様々に拡散されたようです。消費減税の可能性について多くの方々にご一考頂く機会となり、大変有難く感じているところです。こうした機会を設けていただいた番組作成者、ならびに、ご議論いただいた片山さつき議員に心より感謝申し上げます。

このTV出演については既に
https://foomii.com/00178/2020012416024463005
でもご報告差し上げていますが、今日は改めて、消費税減税が必要なのか否かを判断いただく際の基礎情報のご提供という趣旨で、片山自民党税制調査会幹事のご発言をご紹介いたしたいと思います。

(1)現在の景気の低迷は「台風」が原因と主張

まず、当方から今、消費、小売りが大幅に冷え込んでいること、しかもその冷え込みは、2014年の8%増税の時よりも激しい水準だと言うことを、下記データを用いて解説しました。

https://pbs.twimg.com/media/EO7YuT2U8AAG91N.jpg

これに対して片山議員は、現時点の景気の冷え込みは「台風」が大きな影響であると主張されました。

このご発言に対して、当方からは、消費増税直前の9月に大きな駆け込み需要があったことから考えて、この10月の消費の冷え込みの主要因は消費税であることは確実だと考えられます、と解説しました。

https://pbs.twimg.com/media/EO7YuT2U8AAG91N.jpg

当方と片山議員の見解は相違していますが、いずれの主張が正しいのでしょうか・・・? ご判断は是非、皆様にお任せしたいと思います。

(2)現在の消費の成長率の下落は「少子高齢化」が原因と主張

続いて、当方からこちらのグラフをお示ししながら、

https://twitter.com/bakutaro2/status/1220138689084325890/photo/1
過去、消費税増税を繰り返すたびに消費が冷え込み、かつ、その「成長率」が下落していっていることを解説しました。

そうしますと、この長期的な消費の伸び率の下落は「少子高齢化」が原因だと主張されました。

このご発言に対して、当方からは、次の様に発言差し上げました。

「少子高齢化の影響はゼロとは言わないけれど増税した途端にストンと下がって伸び率が下がってるんですから、このグラフを見て消費増税の影響がないって考える理性的な人は僕はこの世に存在しないと思う。詭弁を吐く人以外、消費増税が関係ないとは、絶対言えない。ですから、これを少子高齢化(が原因だ)と言うのは詭弁に過ぎると思う。

筆者はどれだけ考えても、詭弁を弄しない限り、「少子高齢化主犯&増税無罪」説を唱えることは不可能だと思うのですが・・・いかがでしょうか?

(3)「奈落の底なのかどうかを、今見てるわけですよ」

さらに、討論の中で、片山さつき議員が、「人口が減っていくなか、社会保障費を確保するために消費増税が必要だ」とご発言されたので、当方から、今片山先生がおっしゃったのが政府の今の公式の見解だが、その政府の考え方は「完全に間違いだと大学教授として確信している」と申し上げました。

そもそも、片山先生がおっしゃったように人口が減っていくのだから、成長するためには、一人当たりの消費を増やさなければいけない、一方で、経済成長のメインエンジンは消費で、消費税は消費の罰金として働く、だから、そんな時に消費増税やったら、経済が奈落の底に落ちていくのは間違いない。1人あたりの消費を増やすのに、消費減税ほど効果的なものはない、と申し上げました。

そうしますと、片山議員は、

「奈落の底なのかどうかを、今見てるわけですよ」

とご発言されました。

これは、片山税調幹事は、消費増税をすると、奈落の底に落ちるリスクがある、そして、今、まさにそうなっている可能性がある、という認識を持っている、と解釈可能でしょう。

なお、当方はこのご発言について特に発言差し上げませんでしたが、奈落の底に落ちている可能性をご認識されているのなら、是非とも、その認識の下、消費減税も含めた徹底的な対策を政府与党としてさらにお進めいただきたいと思います。

(4)「マレーシアは消費税の代わりに物品税を導入してるから、結局、消費の伸び方は、消費税導入後も変わっていない」

最後に、ちょっと細かい点ですが・・・もう一つご報告します。細かすぎて、あまり詳しく説明するのは気が進まないのですが、あの番組を見て、筆者の説明に「間違い」「切り取り」等があったと誤解している視聴者も中にはおられるかもしれない・・・という点がありましたので、説明させていただきたいと思います。

今回の討論で、当方は5%への消費減税を行うことで、消費は確実に拡大すること、そしてそれを通して、税収も大幅に拡大するであろうという数値シミュレーションを報告差し上げました。

https://ameblo.jp/kinakoworks/image-12569605977-14701596986.html

その上で、これはもちろん一つの試算ではありますが、97年増税後の「実績」と類似した計算結果であることは、本試算の信ぴょう性をサポートする傍証だと思われる、と述べました。

さらに、

1)マレーシアでは消費税を廃止した直後、消費「増加率」が上昇したこと、
2)しかしその後に(消費税と類似した)売上税を再導入した結果、消費「増加率」はまた下落してしまったこと、
3)ただし、導入された売上税の方が廃止された消費税よりも規模が小さいことから、消費税導入直前よりも、売上税導入後の方が、消費「増加率」が高い状況となっている、

という実データを紹介し、こうした

「減税すると消費の伸び率が上昇する」←上記の1)
「増税すると消費の伸び率が下落する」←上記の2)

という動きは、今回の筆者の計算事例と全く同じ動きを示しているのであり、したがって、このマレーシアのデータもまた筆者の試算の正当性を部分的にサポートする傍証の一つだとお話しました。

以上で話が終わっていればそれでよかったのですが・・・これに対して、番組コーナーが終わり、もうCMにいかないといけない・・・というタイミングで、片山議員は、

a)実はマレーシアは、(藤井は触れてなかったが)消費税をなくしたんじゃなくて、結局、売上税を入れてる(!)。

b)しかも藤井さんは、消費増税の直前からのデータしか示していないが、「消費データ」の推移をみると、実は、増税前からマレーシアは成長していたのが分かりますよね(!)、だから、増税した後も、結局同じように成長しており、藤井さんが言うような増税の影響なんて見られないんです(!)。

という趣旨のお話をされました。

この説明を聞いたスタジオの人びとは、「結局どっちも都合のいいデータをもってきて、切り取って話ししてるだけなんだな」という空気になってしまいました。

反論したかったのですが、既にCM時間に食い込んでいる発言だったため、発言が全くできず、片山議員が藤井のデータの不当性を暴露したかのような雰囲気で番組が終わってしまいました。

・・・が、この片山議員の藤井批判は、完璧なる「藁人形論法」と呼ばれる詭弁です。

なぜなら、第一に、実際は当方は「消費税を廃止した後、売上税を導入した」と説明していたにも関わらず、片山議員はa)にて藤井がさもそれを無視しているかのように話をして、藤井の説明が不当である印象付けをされています。

しかも第二に、当方は消費の「伸び率」のグラフを示しており、それが消費税をなくし、売上税を導入する間に上昇し、かつ、売上税導入後にそれが下落している、という説明をしているのに、その説明の一切を無視して、ただ単に、消費税廃止&売上税導入の前後で「消費はどちらも同じように右肩上がりに伸び続けている」という事実をもってして、藤井の説明が不当である、という印象付けをされています。

したがってこの片山議員の最後の説明は、「藤井の説明の信頼性を毀損する印象操作のための藁人形論法」という詭弁と考えざるを得ないと思うのですが・・・・ご判断は全て、視聴者にお任せしたいと思います。

・・・

当方は、こうした議論が、万人が目撃できるTVという媒体で30分以上に渡って展開されたことだけでも、「真実」を国民に届ける大変に有難い機会になったものと思っております。

ついては繰り返しますが、TV局の関係者、そして、議論をさせていただいた片山さつき議員に、心からの感謝を申し上げたいと思います。

ありがとうございました。

追伸1:
片山さつきさんが、なぜあんな発言をされたのか? について、最新の「キッチュ=まがい物/ウソ話」に関する社会心理学研究に基づいて、解説差し上げました。是非、ご一読下さい! 『「消費税を巡るTV討論」を、「キッチュ」の視点から人文学的・社会心理学的に考察しました。』
https://foomii.com/00178/2020012416024463005

追伸2:
今週の「週刊クライテリオン・ラジオ」でも、「政府のウソ」についてお話しました。是非、お聞きください!
『「ウソをつく政府」と「ウソを許す国民」 日本はなんでこんな国になったのか?』
https://www.youtube.com/watch?v=rVwFSRNUUg8&feature=emb_logo

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【藤井聡】消費「減」税は是か非か? ~片山さつき議員とのTV討論報告~への6件のコメント

  1. たかゆき より

    片山某

    出自が財務省 で 
    キレモノ だった とか、、

    といふことは ただの タワケ

    バカと議論をするな
    どっちが バカか 解らなくなる。。

    それが 小生 座右の銘

    このたびの バカとの議論
    お疲れさまで ござい まうす ♪

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  3. 日本晴れ より

    片山議員は元財務相の人だし そもそも入ってくる税金で
    予算を決めるというのがそもそもとして間違ってると思います

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  4. 拓三 より

    少子化前提で論理を組み立てるアホ丸出しの片山w

    安倍政権になり少子化が加速している事をどう思ってんの ?
    自然現象と思ってんのか ?

    少子化って生物拒否やからね。
    自殺社会より質悪いんよ。
    人間ではなく生物としてまでも拒否する社会ってどう言う事。

    片山の論理構造は「泥棒が自分の家に泥棒に入りカネが無い」と言ってる様なもんよ。

    インテリさん達の世界では通用するのねw 

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  5. 日本晴れ より

    片山議員はじめ財界やエコノミストや学者など
    消費税ごり押ししてた連中は最悪のタイミングでやってしまった事への反省は無いんでしょうか?

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  6. リグス より

    この番組は見ていませんが、面白い記事です。

    ただ(3)の片山さんの「奈落の底なのかどうかを、今見てるわけですよ」の発言の意味がよくわからないですね。

    主張)人口減のため社会保障費が減るので消費税が必要

    反論)人口減だから消費を増やして成長しなければならない。消費税は消費を落ち込ませ経済が奈落の底に落ちる

    再反論)奈落の底かどうか今見ている

    ???これは経過があるのかもしれないが、この流れからこの発言は意味不明です。消費増税しても消費は落ちないことや、社会保障費をではどこから捻出するのか、と続くのはわかるが、今見てるって?何を言いたいのだろう?

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