日本経済

2019年7月29日

【三橋貴明】「債務」に関する正しい理解を!

From 三橋貴明

ケルトン教授はNHKのインタビューに答えて、

『われわれが最も親和性があるのは、
私たち自身の家計なので、「債務」と聞くと、
個人的な枠組みで考えてしまう、
自分の家計に置き換えて考えてしまうのです。
こんなに借金があったら、これは私にとってすごく悪いことだと。
でも政府は、家計とは全く違います。
その違いを理解していないから、
「債務」や「赤字」ということばが不安をあおるのです。』

と語っていますが、各経済主体によって「負債」「債務」「赤字」の意味が異なるのは「事実」です。

家計にとって、負債、債務、借金は「増やしてはいけないもの」です。
何しろ、家計は最も脆弱な経済主体であり、しかも稼ぎ手は「死ぬ」のです。
家計は稼ぎ手が死ぬまで(あるいは働けなくなるまで)の期間で、
稼いだ所得から負債を返済する必要があります。
主流派経済学の言う「予算制約式」、
つまりは「所得の範囲内でしか借金できない」は、
家計については適用できるのです。

さて、企業にとって、負債とは「成長の源」です。
そもそも、企業が負債を増やし、
投資をすることで資本主義経済は成長するものなのです。

銀行からの借り入れは減価償却として、
長期に渡り費用計上していきます。
借り入れで投資した資本を、長期間、
使用し続ける以上、当たり前です。

さらに、企業は基本的には「永続」が前提になっています。
つまりは「死ぬ前に借金を返済する」といった発想は不要なのです。
この考え方を「ゴーイングコンサーン」と呼びます。

損益計算書上、負債の拡大による投資金額は、
減価償却により「分割」で計上されるため、
投資した企業が赤字になるとは限りません。(というか、普通はなりません)

とはいえ、キャッシュで見れば、
企業は常に赤字(資産不足)でなければならないのです。
さもなければ、企業が投資や成長を
拒否しているということになってしまいます。

まさしく、日本は経済がデフレ化した98年以降、
企業が常に資金過剰になっています。
だからこそ、政府は財政赤字、政府債務を増やし、
経済のバランスを目指さなければならないのです。

具体的には、
「企業が安定的に資金不足になり、
負債・投資を拡大するようになるまで、
政府が財政赤字を拡大し、
政府債務を積み上げなければならない」
のでございます。

そして、政府にとって財政赤字や政府債務の拡大は、
「民間黒字拡大」「政府貨幣発行残高の増加」に過ぎない。
統合政府で見ると、政府の国債発行残高が、
そのまま「貨幣発行残残高」であることが理解できます。

家計にとって、債務は「死ぬまでに返済を強いられるもの」。
企業にとって、債務は「投資し、利益を稼ぐための機能」。
政府にとって、債務は「政府貨幣発行残高」。

経済主体によって、ここまで性質が違う
「債務・負債・借金・借入」について、同じ土俵で考えてしまう。
根本から間違えていることが、子供でも理解できると思います。

ちなみに、政府債務がなぜ「政府貨幣発行残高」なのかは、
メルマガ「週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~ 」で解説しています。
Vol531 民間黒字と政府貨幣発行残高
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
ご興味がある方は、是非、ご登録を。

◆経世史論において、中野剛志氏との対談コンテンツ「歴史とナショナリズム」がご視聴可能です。是非、ご入会下さい。
(8月15日まで限定公開なので、間もなく終了となります)
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
【三橋貴明×中野剛志「歴史とナショナリズム」】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/keiseishiron/2019/06/15/video/

◆経営科学出版「知識ゼロから分かるMMT入門」が刊行になりました。
https://38news.jp/38MMT/MT_TV/
ケルトン教授招聘プロジェクトにご寄付下さった方及び月刊三橋会員の皆様には、月末に特別価格でご案内が参ります。上記URLからのご購入はお控え下さい。

◆ビジネス社「米中覇権戦争 残酷な未来透視図」が刊行になりました。
https://amzn.to/2UEWkYK

◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第330回 ステファニー・ケルトン教授来日
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/

◆メルマガ 週刊三橋貴明 Vol531 民間黒字と政府貨幣発行残高
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
「財政赤字」がなぜ「民間黒字」なのか、「国の借金(政府の負債)」がなぜ「政府貨幣発行残高」なのか。現実のデータに基づき解説しました。

◆メディア出演

三橋TV、続々リリースされています。

【三橋貴明×ステファニー・ケルトン】MMTポリティクス
https://youtu.be/6NeYsOQWLZk
<字幕版>概論、MMT(現代貨幣理論)+三橋・高家の感想戦
https://youtu.be/tdODDuBL1VY
三橋TV第115回【慟哭! 日本経済の悲鳴が聞こえる!】
https://youtu.be/hO0clr_5TwU
三橋TV第116回【資本主義は借金で成長するモデルなのだよ】
https://youtu.be/KI1fbMBJ1YA

8月2日(金) チャンネル桜「Front Japan 桜」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1651

◆三橋経済塾

令和元年7月20日(土)三橋経済塾第八期 第七回対面講義を配信致しました。
https://members8.mitsuhashi-keizaijuku.jp/?p=630
ゲスト講師は 施 光恒先生(九州大学准教授)でした。インターネット受講の皆様、お待たせいたしました。

◆チャンネルAJER 
今週の更新はありません。

【今週のNewsピックアップ】
民間黒字と政府貨幣発行残高
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12497921717.html
資本主義は借金で成長するモデルなのだよ
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12498227043.html

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【三橋貴明】「債務」に関する正しい理解を!への2件のコメント

  1. たかゆき より

    エロイム エッ サイム

    我は求め訴えたり

    サイムくん もとい 財務くんは、、

    悪魔を召喚して 日本を滅ぼす

    つもりかと、、、

    ツケを子孫に 遺すな は

    国家を子孫に 遺すな と

    同義なのだ ♪

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  2. やまさん より

    こんにちは
    つい一月前、偶然に三橋さんのMMT理論に関する動画を見て
    猪木にカツをいれられ目から星が飛びまくる位の衝撃を受けた者です。
    それがら毎日ブログやYouTubeでMMTについて勉強しています。
    今日、思いきって動画だけではなく書籍を購入してさらに理解を深めたくて、某有名書店に行ったら
    MMTが見当たらない。
    やっと見つけた一冊はMMT批判のヤツ。
    どこからか圧力でもあったのでしょうか?

    そのせいかますますMMTを広めていかなきゃと決意が固くなりました。
    三橋さんを含め数少ないMMT推進派の方々をこれからも応援しています。

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