日本経済

2018年3月22日

【三橋貴明】人が大切にされる社会

From 三橋貴明@ブログ

連日、移民問題
(外国人労働者問題)を
取り上げていますが、
事の始まりは少子高齢化による
生産年齢人口比率の低下です。

つまりは、人手不足です。

人手不足は、
もちろん良い面もあります。

と言いますか、人手過剰と比べると、
はるかに望ましい環境です。

少なくとも、ブラック企業に
代表される、人手過剰が
もたらした問題は、
解消に向かいます。
(時間はかかりますが)

また、企業もようやく
「正規雇用」を増やさなければならない
という現実を理解しつつあり、
帝国データバンクの調査によると、
正社員採用を予定している
企業の割合は65.9%と、
リーマンショック前の水準を
回復したとのことです。
(対前年比では1.6ポイント上昇)

特に、建設や運輸といった業界で、
正規雇用採用の意欲が高まっています。

企業規模で見ると、
やはり大企業の方が高く、84%。

中小企業は61.3%。

人口構造の変化という
抗いがたい圧力が、次第に
日本国を「人が大切にされる社会」
に戻しつつあります。

かつて、我が国は
「人が大切にされる社会」でした。

何しろ、高度成長期の日本は
完全雇用だったわけで、
そうならざるを得なかったのです。

その後、バブル崩壊と緊縮財政を経て、
日本経済がデフレ化。

人が安くなる国へと
落ちぶれてしまいます。

日本国民の多くは、過剰なサービスや
品質を「安く」提供することを強いられ、
「所得がある人は暮らしやすい」
と言えば暮らしやすいのですが、
生産者が酷使される悲惨な
デフレーションが継続。

国民にはルサンチマンが
貯まっていき、政治も混乱。

同じ国民である「誰か」を
攻撃することで、自らの支持を
高めるルサンチマン手法が大流行。

実質賃金の下落も続き、
国民が貧困化。

若者が結婚「できなく」なり、
少子化が進行。

結果的に、生産年齢人口比率が
低下していき、「人が大切にされる社会」
に戻りつつあるわけで、経済とは
不思議なものです。

この日本の「人が大切にされる社会」への
回帰を潰すのが、移民受入
なわけでございます。

というわけで、わたくしは

「人手不足は移民受入ではなく、
投資による生産性向上で解消を!」

と、訴え続けているわけですが、
素晴らしい社説を見ましたので、ご紹介。

社説、でございますので、日刊工業新聞の
「社としての意見」になります。

『社説/深刻化する人手不足 外国人受け入れに頼らない解決策を
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00466370

外国人労働者に頼るだけでなく、
人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、
ロボットの活用など、人手不足解消に
もっと知恵を絞るべきだ。

人手不足が深刻な産業の各分野について、
外国人労働者の受け入れ拡大が
議論されている。

専門的・技術的な人材に限って
入国管理法で定める在留資格を
緩和する方向のようだが、
安易な受け入れ拡大は
安い労働力の流入を加速し、
賃金の引き下げ圧力につながる。

デフレ脱却にも支障を来しかねない。

一方で別の動きがある。

東京都内のスーパーマーケットでは
続々と無人清算レジが登場している。

レジ打ちのパート労働者を減らす目的だ。

当初は機器操作に抵抗を持たない
若い世代が中心だったが、慣れるにつれて
高齢者も利用する姿を見かける。

スーパーだけでなく外食店舗や
ホテル、病院でも無人精算機は
一般的になっている。

農林水産業ではドローン
(飛行ロボット)での種まき、
自動走行式のトラクターや
コンバインが実用段階に入っている。

これに加えて、野菜や果樹の
育成・収穫に向けたロボット開発が盛んだ。

水稲と違い、大きさや規格がバラバラな
野菜や果樹は自動化が困難とされてきた。

それがセンサーや画像認識、AI技術の
発達と低価格化で克服されようとしている。

漁業や水産加工も同様で、
省人化機器導入のハードルは
かなり低くなった。

安易な外国人労働力の受け入れ拡大が、
こうした技術開発の努力に
水を差すことを恐れる。

自動化機器やロボット導入は
開発費がかかり、導入初期コストも重い。

サービス業の前線では顧客に意識変化を
求めるというハードルもある。

しかし「外国人労働者の方が安くて手軽」
という発想ではイノベーションが進まない。(後略)』

「東京都内のスーパーマーケットでは
続々と無人清算レジが登場」

とありますが、まさにわたくしが
住んでいるマンションの
スーパーマーケットが、
無人清算レジを導入しています。

最初は、

「中途半端なものを入れて・・・・。
完全自動レジにしろよ・・・・」

などと、わがままな感想を覚えたのですが、
これがどうして、無茶苦茶に
効果があるのです。

以前はレジ前に客の長い行列が
できていたのですが、今は
ほぼなくなりました。

ドローンといえば、
種まきもそうですが、
何といっても「測量」です。

iConstructionのドローン測量の
「生産性向上効果」は、
本当に凄いのです
(いつか、映像でご紹介したいと思います)。

また、野菜や果実の「収穫」が
ロボット化されると、農業分野に
技能実習生や外国人労働者を
入れる必要はなくなります。

AIがもう少し進化し、パターン認識能力が
向上すれば、マニピュレータを駆使し、
イチゴを「丁寧に摘み取り、収穫する」
ことも可能になるでしょう。

日刊工業新聞が書いている通り、
移民受入は上記の生産性向上のための
技術投資(イノベーション)を潰すのです。

今、日本は人手不足という
技術投資の絶好の機会が
訪れています。

しかも、実際に様々な技術が
世に出始めているわけでございます。

日本が「技術力」で世界に
伍していきたいと思うならば、
移民受入に頼ってはならないのです。

人手不足は移民ではなく、
技術投資で解消する。

そうすることで、日本は
「人が大切にされる社会」を
取り戻すことができるのです。

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【三橋貴明】人が大切にされる社会への1件のコメント

  1. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍をいつも熱く熱く応援しております。

    真意は「働く人が」だと思われますが、直截に言ってしまうと、働く前の人、働いた後の人、働く人を支える人が世の中にはいますので、いらぬ摩擦があるのかもしれませんですね。でも正直、働く人が大事にされる社会が豊かになるのは当然かなと思います。
    日本はまだまだ幸運ですね。

    引用された社説、文末が秀逸ですね。
    安いからよい=世の中ゼニ、というスタンスではイノベーションは見えない(おっと毎日愚痴ってるような)わけで、話のゴールをカネから価値へ転換、もっていかないと従来システムの効率化しか解がなくなってしまう訳です。

    イノベーションは新技術により生み出されることもありますが(望遠鏡と天文学)、今ある技術を組み替えて違ったシステム(録音機能のない携帯カセット”レコーダー”)を提供することで社会を変えることもあるようです。もっとも、その新システムは新しい技術を要求することもあるのですが。。

    人出不足から無人レジ、無人○○、それは未来感ある社会かもしれず、世界をリードするものかもしれません。
    ただし技術のみ売るのでなく、それを実現する日本社会の良さも輸出したい。日本社会の良さをいかすイノベーションであってほしい。そんなふうに思いました。

    そのためには純然日本人むけ、ガラパゴス上等、ぐらいな気概、なんでもグローバル対応(アメリカ適応)が善という夢遊病からの脱却が根底にあってほしいものですね。

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