From 佐藤健志
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前回、および前々回の記事で取り上げた「聖羅ちゃんツイート」に関し、ある方から面白いご意見をいただきました。
あらためて記しておけば「聖羅ちゃんツイート」とは、今年の夏、安保法制をめぐる反対デモが各地で開かれたことに関連したもの。
内容は以下の通りです。
【拡散希望】安保反対国会前デモに連れていかれた、
我が孫、聖羅が熱中症で還らぬ人になってしまいました。
あの嫁はゆるせません。
わたしたちは何度も聖羅を置いてくように話したのですが…。
聖羅は何度も何度も帰りたい、と母に泣いてたそうです。
これについては、じつは作り話だったことが判明しているのですが、前回記事ではツイートの論理構造に注目しました。
「炎天下、安保法制反対デモに無理やり連れてゆかれた孫が死んだ」ことは、かりに事実であれば同情を誘うものがある。
ついでにそれは「安保法制に反対する人々はひどい」ことを暗示しますので、間接的に同法制を肯定するニュアンスも持つ。
しかしお立ち会い。
このすべては、安保法制の良し悪しや必要性(の有無)について、何も証明してはいないのです!
チープなお涙頂戴に訴えることにより、理屈抜きで安保法制を正当化しようとしている、そう言われても仕方ないでしょう。
事実、「聖羅ちゃん」が安保法制賛成デモに連れてゆかれたことにするだけで、問題のツイートは法制反対を訴えるものになってしまいます。
・・・と、こう書いたわけですが。
寄せられたご意見は、こんな問題提起をしていました。
「聖羅ちゃんツイート」について、そのままでも安保法制反対のニュアンスを見出すことはできないか?
安保法制を国会で審議しなければ、反対デモが盛り上がることもなかったのだから、「聖羅ちゃん」の死をめぐる責任も、突き詰めれば現政権が負っていることになるのでは、というわけです。
残念ながらこの解釈、ツイートの文面に照らすと少々苦しい。
「あの嫁はゆるせません」と、ハッキリ書かれているからです。
嫁が安保法制反対派であることは、文脈から言って疑問の余地がない。
そして反対デモをやるにしても、炎天下、わざわざ子供を連れてゆかねばならない必然性はありません。
政府としても、そこまでの責任は負えないでしょう。
しかし、くだんの問題提起は別のレベルでは的確なもの。
かりに「聖羅ちゃんツイート」が、こんな内容だったらどうでしょう?
【拡散希望】安保反対国会前デモに参加した、
我が孫、聖羅が熱中症で還らぬ人になってしまいました。
あんな法案を審議するなんて許せません。
わたしたちは安倍総理が日本を良くすると期待していたのですが…。
聖羅は「へいわがすき」と、何度も何度も言っていました。
「聖羅ちゃん」が行ったのは、あいかわらず法制反対のデモですが、ツイートの趣旨はみごとに逆転していますね。
これこそ、お涙頂戴に訴えることの危険性。
引き合いに出した事柄と、主張したい結論との間に、論理的なつながりが存在しないので、話の持ってゆき方次第で、どんなことでも言えてしまうのです!
「聖羅ちゃんツイート」に限った話ではありませんよ。
10月28日の記事「正義感と自己欺瞞」で紹介した、SEALDsの某メンバーの発言を思い出してください。
いわく。
安倍首相は日本を〈美しい国〉、〈すべての女性が輝く社会〉、〈一億総活躍社会〉にしたいそうです。しかし現状はどうでしょうか。この国には、進学を諦めキャバクラで働き家族を養わなければならない十代の子がいます。
この国には、子どもの学費のために裏で自分の内臓を売り、生活をくいつなぐ母親がいます。この国には、何度も生活保護を申請したが拒否され、食べるものもなくやせ細り、命を失った女性がいます。この国には、ひとりぼっちで、誰にも看取られることなく、冬の寒空の下、路上で命を落としていく人々がいます。
やはりお涙頂戴ですが、話をこう続けたらどうなるか?
だから強い経済が必要なんです! そのためにすべきことは、構造改革とグローバル化の徹底です!
既得権益の否定、岩盤規制の打破、そしてTPPの早期批准! これらが達成されれば、放っておいても女性は輝きますし、一億総活躍もおのずと実現されるんです! 今、お話ししたような悲劇だって、すべて防げますよ!!
政権打倒も何もあったものじゃありませんね。
あるいは、こんな「戦争の語り部」トークはどうでしょう。
女学校時代、一番の仲良しだったA子さんが、
戦争末期、勤労動員で軍需工場に連れてゆかれ、
空襲で還らぬ人になってしまいました。
戦争は許せません。
私たちはいつも「平和がいいね」と話していたのですが…。
息を引き取る直前、A子さんは何度も何度も
「もっと生きたい」と涙を流して訴えていたそうです。
これだって、話の持ってゆき方次第では以下のようにできるんですよ。
女学校時代、一番の仲良しだったA子さんが、
戦争末期、勤労動員で軍需工場に連れてゆかれ、
空襲で還らぬ人になってしまいました。
アメリカは許せません。
私たちはいつも「勝つまで頑張ろう」と話していたのですが…。
息を引き取る直前、A子さんは何度も何度も
「仇(かたき)を取ってほしい」と涙を流して訴えていたそうです。
降伏したとたんアメリカに尻尾を振って、
70年たっても追従をやめないとは、まったく恥ずべきものです!
たまにはこんな語り部がいても悪くないとは思いますがね。
とまれ、お涙頂戴はなぜ悪いか?
ずばり、どんなことのダシにでも使えるからです。
そして前回も書いたとおり、物事をまともに考えようとせず、チープな感情に支配されたまま付和雷同することこそ、全体主義の始まり。
われわれの自由は、主体的な思考を続けることによってのみ保証されるのです。
ではでは♪
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4)いや、近代日本そのものが非論理性を抱えているのです。
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