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2015年10月29日

【柴山桂太】崩びゆくジャーナリズム

From 柴山桂太@京都大学准教授

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「中国の読み方–地獄に引きずり込まれないために日本人が知るべきこと」
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

●他国と違う・・・中国経済成長率の算出のカラクリ
●中国に存在する”鬼の城”とは?住んでいるのは一体誰なのか?
●日経新聞に煽られて中国進出した日本企業の悲劇
●地図を横にすると見えてくる…日本は中国の世界進出を邪魔する”蓋”

http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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このごろ、ジャーナリズムの見識を疑いたくなるような出来事が相次いでいます。

例えばTPP問題。一〇月五日の大筋合意を受けた全国紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の社説は、どこも歓迎論一色でした。これは驚くべき事態と言うほかありません。

国民生活に重大な影響を及ぼす可能性のある問題について、意見が分かれるのは当然のこと。現に安保法案では、全国紙の論調も分かれていました。ところが、話がTPPとなると各紙の論調は横並びになる。それも政府発表を鵜呑みにした論調が目立つのは、どういうわけでしょうか。

そもそもTPPは秘密交渉なので、合意内容の全容はまだ明らかではありません。いま出ているのは、政府が発表した情報のみ。

難しい交渉を終えた政府が、その歴史的意義を強調したり、国民にメリットになりそうな部分だけを強調して情報を出すのは、ある意味では当然のこと。現に、内閣府の資料などを見ても、TPPが国民生活にどれほどプラスになるかが盛んに強調されています。

ジャーナリズムの使命は、その情報が本当に正しいのかをチェックし、政府の見落としや、政府が隠しているかもしれない論点を明らかにすることにあるはずです。そうでなければ、ジャーナリズムの意義などありません。国民は政府のHPを見ればいいわけで、わざわざ新聞を買う必要もない。

言うまでもなくTPPは、食の安全や公的医療制度の存否、紛争解決など国民生活に悪影響を与えかねないデリケートな論点を多々含んでいます。政府発表では「心配ない」ということになっていますが、本当にそうなのかを精査するのがジャーナリズムの役目というものでしょう。合意内容の精査に時間がかかるなら、それまで社論の判断を留保すればいいだけのこと。必要な作業も終わらないうちに、政府発表の尻馬に乗って世論を一方向に誘導するなど論外です。

TPPだけではありません。関西では一一月の大阪ダブル選挙が近づくなかで、選挙関連の報道が増えてきましたが、見過ごすことのできない問題も起きています。
http://www.sankei.com/west/news/151016/wst1510160100-n1.html

公権力の立場にある政党が、自らの政策に反対する大学教授の私信を入手し、本人の承諾も得ずに内容を公表した上で、番組に降板圧力をかける。常識では考えられない話です。

まず、公権力が私人のメールを勝手に公表することなど許されるのでしょうか。逆のパターンならまだ話は分かります。例えば、公権力が報道機関に圧力をかけ、報道内容を変更させたという場合。これは明らかに公権力の濫用ですから、ジャーナリストが権力者側の私信を入手・公表して、その不正を告発することはありえるでしょう。

しかし今回は、話が違う。公権力が私人のメールを勝手に公表するということがまず問題ですし、それを根拠に番組に圧力をかけるというのはもっと問題です。これが許されるなら、テレビ番組で公権力の政策を批判することなど、出来ない相談となってしまいます。テレビで発言するコメンテーターが、いちいち「お前は特定政党とつながっているのではないか」と公権力にチェックされ、私信まで暴かれる。そんな不条理な世界があるでしょうか。

大阪維新の会の橋下代表は、政治家を辞めて私人に戻られるとのことですが、今回のケースを杓子定規に当てはめるなら、橋下氏が今後、テレビの報道番組にコメンテーターとして出演するのは難しくなりますね。特定政党とつながっているのは明白だからです。氏が、番組の内容を変更しようと働きかけてもいけません。その証拠となるメールが、公権力によって暴かれても文句は言えなくなります。大阪維新の会の事務局は、自分たちが何をしているのか、本当に分かっているのでしょうか。

橋下氏がテレビに出てはいけない、などと言いたいわけではありません。そんな窮屈な世界はおかしいだろう、と言いたいだけです。

これは「言論の自由」などという法律論以前の、常識の問題ではないですか。特に政権政党がある政策(TPPであれ大阪都構想であれ)を強力に推し進めようとしている場合、その政策の問題点なり疑問点を、報道機関がチェックするのは当然です。「公平中立」を理由に反対党派の者をテレビに出してはいけないとなれば、それも公権力が圧力をかけて出演者を降板させてもよいとなれば、テレビの言論は死んだも同然になります。

私が気になるのは、こんなおかしなことが起きているにもかかわらず、大手メディアを含めて疑問の声がほとんど上がらないということです。ジャーナリズムは何のために存在するのか。その根本が見失われれば、まともな言論はいずれ地を掃うことになるでしょう。

PS.表現者最新号、発売中です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B014BY4GJG

—発行者より

・・・中国経済は、高騰していた不動産価格、株価がともに大幅に下落し、バブル崩壊の苦境に直面している。この状況に対する解釈は二つに分かれている。

一つは「単なる景気後退」あるいは「投資主導の経済から消費主導の安定成長への過渡期」とする見方、もう一つは「メッキが剥がれた中国経済が崩壊を始めた」あるいは「経済のみならず、中国共産党の独裁体制崩壊の序章」などとする見方だ。

単なる景気後退なのか、それとも崩壊の序曲なのか? 日本への影響は? われわれは今後、どう対処していくべきなのか?

中国取材から帰国したばかりの三橋貴明が、自らの足で集めた最新の情報を元に、「中国の読み方」、そして「中国との付き合い方」について解説する。
(月刊三橋最新号「中国の読み方〜日本が地獄に引きずり込まれないために」)
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_mag.php

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【柴山桂太】崩びゆくジャーナリズムへの12件のコメント

  1. メイ より

     全く仰る通りだと思います。 柴山先生がこのように主張して下さる事は、大変心強く感じます。

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  2. ねこ より

    朝日新聞が社説で安倍政権がNHKの番組に口出ししたのはけしからん、と書いていて、もっともだと思いますが、大阪の朝日放送とBPOに、維新が口出しした事例は、どう思っているのでしょうね?一言も触れませんが。維新のやり方は、NHKのヤラセと違って、番組自身が偏っていたわけではないようですのに、いわば維新が因縁をつけて、そのやり方も私信傍受の疑いとか、勝手に私信公開など、よほど悪質だと思いますが、それは報道しないのでしょうか???「政権政党が表現の自由の領域に立ち入ることで民主主義がいかに脅かされるか、安倍政権は理解していないようだ」と書いていますが、橋下維新は、理解しなくていいのでしょうか?安倍政権だから書く、橋下維新だから書かない、というのは、ダブルスタンダードで、新聞の公正性が疑われますね。いかに立派そうな記事を書いていても、「書かないこと」から、その品性や思惑を推し測ることができそうですね。

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  3. かなや より

    普通に考えて、柴山さんのような意見になると思います。が、大阪ではこの件で、まるで鬼の首を取ったかのように藤井先生を叩く人が少なくなりありません。逆だろっていう‥。いまだに既成政党や反維新への批判は強く、問題はかなり根深いと思います。

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  5. docholiday より

    そうそう宮崎さんも出ていませんでした。藤井先生の出演見合わせに抗議?代わりに小西や高橋といった全く気骨の日向水が座っています。あの席は藤井先生と宮崎さんでないと治まりません。

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  6. ねこ より

    自分で考えさせない、というのは、奴隷化の初歩ですよね。・・・そう見ると、今日のパネラーの人たちの表情が、死んでいるように、見えます・・(ねこのミカタ)

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  7. ねこ より

    今日の正義のミカタ、宮崎さんも出ていられないですね!この番組は、藤井先生、宮崎さんのお二人が、ご自分の見方を持っていて、面白かったのに、非常に質が低下したと評じます。がっかりですね!このお二人は、ご自分の意見を持ちつつ、これが正義だ!と押し付けず、こういう考え方もあるよ、と、パネラー視聴者に、自分で考えることを促す、というスタンスだったと思います。多面的に考えられること、それこそ教養だと思います、このお二人は、ホンモノの教養人、の雰囲気があったのに、繰り返します、非常にツマラナイ番組になりました、残念です。

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  8. ねこ より

    朝日新聞が一面から大阪選挙の特集記事を記者名入りで載せていますが、このBPO問題は少しも触れる様子ないですね。。先生方が言われる通り、これは言論や表現の自由が侵される問題ですのに、ましてジャーナリストは国を超えたコモンセンスとして、そういうものに一番敏感であることを誇りにし、時には命懸けであることで尊敬されることもあると思いますが、この人たちは、恥ずかしくないのでしょうかね!?

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  9. 赤城 より

    TPPの全大メディア賛成も橋下維新の言論弾圧の報道も根っこは同じなんだと思います。日本は表面的には自由な報道を装いながらある情報において日本の全メディアは見事に統制されていて、まったく言論の自由など無いとんでもない情報統制の国だということです。それはアメリカに占領された日本の状況とほとんど変わらず、今は完全にアメリカやグローバル資本のスパイ的な力が日本の政財界とメディアの中枢に浸透しきっていて、それによって彼らにとって不都合な情報は奴隷になりきった日本の全メディアや現政権政治家たちによって排除されるのです。TPPはアメリカやグローバル資本の金儲け策であるし、橋下維新はアメリカとグローバル資本の忠実な犬であります。日本に主権が存在しないのは表面的には占領国憲法ではありますが、実質的にはアメリカ軍駐留とこの無防備極まりないスパイ天国の日本の国家に浸透しきったスパイ的な陰の力でしょう。そしてその力は当然アメリカだけのものではなくシナや朝鮮、ロシアなどの隣国もせめぎあっていますが、決定的な力で中枢を握っているのはやはりアメリカなのでしょう。 しかしたとえそれが現実だとしても今の日本のメディアはほんのわずかも、まともな報道や批判ができないのだから救いようが無い酷さであるのは間違いない。

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  10. 丸さん より

    賛成です。特にテレビは生の報道が少なくなり保身的な編集された報道となっています。TPPや安保法案等の国民にとって重要な情報はテレビや新聞でとりずらく判断出来なくなっています。権力側の影響がないはずの有料のNHKや新聞社は特に深堀した報道が必須ですが実行出来ていません。

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  11. きらきら より

    ジャーナリズムはあてにならないので、柴山先生にはもっといろいろな記事を書いて頂きたいです。(笑)ジャーナリストは自分がどんな憂き目に会おうと、真実を伝えるということを第一に考えるべきだと思いますが、ジャーナリストになる動機は給料が良いからが大半だと聞きます。使命感ではなく、功利的な方に重きを置けば、ジャーナリズムが機能しなくなるのは当然かと思います。また、日本全体が、使命感ではなく、功利的な動機でのみ動き駄目になっていっている感じはします。

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  12. ねこ より

    賛成です!こんなあからさまな公権力の醜悪行為がニュースにならないのが、おかしいです!藤井先生をあたかも公人のように印象づけようと、百田さんがうやむやごまかしのセコい演出をしていましたが、藤井先生は公人ではないですよね!私、公人、公職、の定義を調べました。百田さん、アナタさんざけなしていた新聞と一緒だよ、セコいよ、情けない!(≧ω≦)

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