From 三橋貴明@ブログ
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●月刊三橋最新号のテーマは「2015年の世界と日本」。
三橋貴明が解説する「2015年」が聞けるのは、1月10日まで。
https://www.youtube.com/watch?v=eQUSqYvie2s
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三橋経済塾第四期「経済時事」、開講しました。本日から、IDとPDの送付が始まります。お待たせして申し訳ありませんでした。
http://www.mitsuhashi-keizaijuku.jp/
「月刊 リベラルタイム 2015年 02月号 [雑誌]_ 」に、「「輸出数量」伸びず「賃金上昇」は期待薄」を寄稿しました。
年が明け、いいニュースも入ってきております。
『パナソニック、国内生産回帰…円安・人件費高で
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150104-OYT1T50103.html
パナソニックは、海外で生産し日本に逆輸入している洗濯機やエアコンなどの家電製品の大半を、今春から順次、国内生産に切り替える方針を明らかにした。
円安の進行や海外の人件費の上昇で海外生産の利点が小さくなったためだ。家電最大手のパナソニックの「国内回帰」が他社に波及し、国内製造業の空洞化に歯止めがかかるかどうかが注目される。
パナソニックの家電の国内販売額は5000億円前後とみられ、うち約4割を中国を中心とした海外で生産している。
パナソニックはまず、ほぼ全量を中国で作る縦型洗濯機の生産を静岡県袋井市の工場に戻す。その後、全量を中国から輸入している家庭用電子レンジは神戸市での製造に、中国で生産している家庭用エアコンも滋賀県草津市に、それぞれ切り替えを進める。』
おお! これは嬉しい! と言いますか、パナソニックの中国生産、国内販売の四割にも達していたのですか・・・。実質輸出が増えないわけです。
他の製造業も、パナソニックに続いて「国内回帰」の路線を採ってくれるよう期待します。わたくしがヒアリングしたところ、「脱中国」を考えている企業は多いのですが、移転先は東南アジアが中心だそうで、日本回帰を名言してくれたところはありませんでした。
政府は、助成金や長期の支援により、日本の製造業の「国内回帰」を後押ししても構わない局面だと思います。
『リニア大阪延伸 国費で調査 政府、来年度予算に初計上へ
http://www.sankei.com/economy/news/150104/ecn1501040003-n1.html
政府は3日、JR東海が平成39年の東京(品川)−名古屋間の開業を目指して昨年着工したリニア中央新幹線について、大阪まで延伸開業した場合の経済効果などを調べる費用を来年度予算案に計上する方針を固めた。大阪延伸の関連費用を国が計上するのは初めて。政府・与党内にはリニアの前倒し開業を促すため、JR東海が自己負担する建設費を財政支援する案も浮上しており、大阪延伸関連の国費投入は波紋を呼びそうだ。
来年度予算案に盛り込むのは、リニアを含む高速交通ネットワーク形成の影響をつかむための調査費で、数千万円を計上する見込み。39年の開業を目指す東京−名古屋間と、その18年後に大阪まで延伸した場合の経済効果を調べるほか、リニア全線開業に伴う首都圏・中部圏・近畿圏の一体化が既存の新幹線網などを通じて全国に波及する効果も検討する。(後略)』
リニア中央新幹線は、JR東海が自ら資金調達し、大阪まで延伸する予定になっています。JR東海が資金調達し、営業のキャッシュフローから返済をしていかなければならないため、「資金的な制約」がかかり、大阪まで開通するのが2035年と「遅い」わけでございます(無論、環境アセスメント等に時間を取られるという問題もありますが、最大の制約はお金です)。
お金がボトルネックになり、建設が遅れるならば、政府が予算を投入し、早期開通を目指すというのは合理的です。何しろ、現在の日本は国債金利が長期金利で0.32%という、超を四つくらいつけたいほどのカネ余り状態にあるのです。
JR東海がなぜ自己資金でリニアを開通させたいのかといえば、
「政府の資金を入れると、建設に際した自由度が下がるため」
とのことです。要は、「カネを入れたんだから、口を出す」政治家が鬱陶しく、面倒事が増えるに決まっているため、自己資金(総計約8兆円)でリニアを大阪まで開通させようとしているのです。
というわけで、ここは政治決断で、「早期開通目標」のみを条件として、政府予算を投入し(税金ではなく、建設国債ですが)、細部(どこに駅を造る等)については政治家は口をつぐむ。という「政治決断」を、政府に期待したいところでございます。
いずれにせよ、リニア新幹線のような大規模プロジェクトを民間資金のみでやるというのも、妙な話でございます。
ところで、JR東海は「資金制約」から、大阪までの開通を2035年としています。これは定義が明白で、要は営業キャッシュフローから借入金を返済していくことを考慮し、建設期間を2035年までとしているわけです。
それに対し、公共事業、公共投資に反対する人が持ち出す「供給制約」とは何でしょうか。定義を聞いたことがないのですが、恐らく「公共事業のやりすぎで人手不足となり、事業を遂行できないか、もしくは民間の建設が進まない」といった話だと思います。
まず、そもそも「人手不足で公共事業が進まない」という話自体が、間違いです。
『4〜9月の公共事業執行状況/実施率、10ポイント超上昇/財務省
http://www.decn.co.jp/?p=20112
年度前半の経済効果の発揮を狙った14年度上期の公共事業の執行状況がまとまり、政府が掲げた執行目標をクリアした。前年度同期と比べても実施率は大きく上回っている。本年度予算の成立が3月20日と前年度よりも2カ月近く早かったことや、国土交通省が各種メニューを盛り込んで展開した円滑な施工確保対策などが奏功。経済成長率が2四半期連続で落ち込む中で、公共事業の早期執行が景気を下支えした格好だ。
財務省がまとめた9月末時点の実施率は、13年度補正予算分が1・7兆円の予算額に対して88%、14年度予算分が9・2兆円の予算額に対して62%。政府は上期の執行目標として13年度補正予算分9割程度、14年度当初予算分6割以上を掲げていた。13年度同期は、12年度補正予算分が3・5兆円に対して76%、13年度当初分が9兆円に対して49%となっており、本年度はいずれも10ポイント以上上回る高い実施率となった。
高い実施率を達成した背景には、予算成立時期が早かったことに加え、国交省が昨年4月と今年2月の2度にわたって公共工事設計労務単価を引き上げたこともあるようだ。加えて、東日本大震災の被災地では、地域の事情を考慮して積算で間接工事費の割り増しを行う復興係数の適用も効果を上げた。全国的にも、円滑な施工確保に向けた各種メニューの適用が浸透した。
7〜9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率(速報値)は年率1・6%減と2四半期連続のマイナスとなった。そうした中で政府の社会資本整備の投資である公的固定資本形成は年率8・9%増の高い伸びを示しており、4月に消費税率を8%に引き上げたことに伴う景気の腰折れを回避する一助となった。』
上記の通り、公共事業の執行状況は、むしろ上がっています。
何しろ、13年度と比べて14年度は10ポイント以上も高い実施率になっているわけです。
もちろん、上期終了時点における14年度の補正分88%、予算分62%の執行率が、
「上半期の執行率が100%に達していない。まだまだ公共事業の執行率は低い」(上期で今期予算を100%消化するなどあり得ませんが)
と、数字で論ずるならば分かります。とはいえ、供給制約といった単なる用語を持ち出し、「だから公共事業はできない」と結論付けるのは、極めて問題がある態度でしょう。
と言いますか、執行率が何%になれば「供給制約がない」で、執行率が何%を切れば「供給制約がある」という話になるのでしょうか。数字で定義づけしてくれない限り、公共事業を否定するために「供給制約」という用語を持ち出す人は、
「通貨の信認を下げるので、金融緩和はダメ」
「日本は輸出依存国」
「国債の信認が低下するから、消費税増税」
と、印象操作に努めていた連中と、同じ穴の狢であると断ぜざるをえません。
別に、いかなる意見を持とうが個人の自由ですが、政策について語るならば、せめて用語ではなく、データで語るべきでしょう。明日に続きます。
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