From 宍戸駿太郎@筑波大学・国際大学名誉教授
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<1>歴史は教える
咋日衆議院が解散。アベノミクス審判選挙が12月14日に実施。第3次安倍政権発足。・・・というシナリオが予定されています。これによって安倍政権は大方の反対を振り切って、10%への消費税増税を17か月延期という決断を成功させる可能性は大きいと大方はみており、私もたぶん自民党が過半数割れになり、アベノミックスへの国民的否決の可能性は低いと予想します。
以下はこの前提でこれまで2年間のアベノミクスの評価とこれからの注文を要約してみたいと思います。
まず今回は20年デフレという世界でも珍しい長期デフレからの脱出を宣言し、金融、財政、成長という3つの矢で戦うことを世界に宣言した割に経済成長が腰折れした原因はなぜかという反省から始めましょう。
その前に3つの歴史の教訓を考えてみたいと思います。
第1は統計的実証データの軽視した事実です。大東亜戦争開始に近衛政権は自由主義の英米陣営との開戦に備えて統計データの収集と解析を行い、企画院でいくつかのシミュレーションを行っています。結果は極秘にされましたが、かなり楽観的な要因も混在し、政治家・軍の上層部の判断は、精神力で十分克服し、戦勝の可能性はあり、ということでした。
敗戦直後のマッカーサー占領時代、極端の食糧不足で、餓死者200万人の予定と報道せられ、吉田首相はマッカーサー個人に直談判し、食糧の緊急援助を懇請したことがあります。
マッカーサーは食糧援助を若干程度でしたが、応じましたが、餓死者は100万前後にとどまった。お礼に参上した吉田首相に対して、マッカーサーは傲然として、日本の統計はどうなっているのだ!もう信用できない!と怒鳴った。吉田首相は平然とし言い放った。‘日本の統計は信用できない。もし信用できたなら、こんな戦争がやれますか?・・・と。
マッカーサーは爆笑し、了解した。その後、ライス統計視察団を派遣、今日の統計法が出来上がったわけです。この法律にもとずく個人・企業情報は他の行政や税務目的に使用すると厳罰に処せられます。
20世紀に入り、金本位制から管理通貨制への切替えと並んで、前世期後半から起こった社会主義運動による政権国家(ソ連など)の誕生、一方では資本主義の変貌とくに‘修正資本主義’の誕生を支えたケインズ革命と福祉理念の進展がみられました。
修正資本主義の基本理念は市場競争と完全雇用と社会福祉であり、具体的には次の3点が柱になります。
1.マクロの裁量型の金融と財政政策とミクロの公正な自由市場
2.自動安定機能:累進課税制度と失業保険と最低賃金制
3.社会保険(医療、年金など)
これに対して計画経済型社会主義国は
1.供給先行型の計画経済
2.基礎物資の価格統制と配給制
3.安定雇用
この計画経済は不況知らずで、一見、安定して見えるが、自由競争市場の欠如から、技術進歩が乏しく、勤労意欲の低下から、修正資本主義圏との競争に敗れ、今は、中国、北朝鮮、など少数の国家体制が残るだけです。その中国も市場的社会主義と名のって混合型独裁制で生きながらえている状態です。
東西冷戦で西側が勝利した真因はなんでしょうか?
1.裁量型マクロ政策は議会制民主主義のために政治権力によっては変動があり、成長派と物価安定派とではマクロ政策にニュアンスの違いが起こります。
2.自動安定機能のほうは‘修正資本主義’の中核ともいえるもので景気過熱時には増税、不景気には減税と失業手当とが自動的に支払われるので、政権政党の変動とは原則として無縁です。
アメリカン・ケインジアンの代表ともいえるサミュエルソンは、この機能で完全雇用時には財政黒字が発生し、景気の過熱を防止するだけでなく、夢多き財政支出を増やすこともでき、財政余剰とも呼んでいる。完全雇用達成時のボーナスと呼んでもよいでしょう。
東側の陣営がよく攻撃する資本主義経済の恣意的変動や不安定性はこの2.の自動安定機能の存在を軽視し、無視したためで、この機能こそ修正資本主義経済の主柱ともいえるものなのです。敵を見誤り、計画主義の自己陶酔におぼれたことこそ、東欧経済の自己崩壊につながったのです。
<2>アベノミクスの反省と強靭化策
A.デフレ脱出を軽く見るな!
過去2年の実績からではまだ論じるのは早いが、日銀の物価目標2%(コアコアCPI)を安定的に達成するには、現在までの安倍政権の実質GDP目標2%は中期的にみて過少で、これまでの民主党政権、旧自民党政権の単純な踏襲に過ぎないのです。 デフレ脱出を困難にしているのはこの低い成長目標で、アベノミクスは実質GDPの成長率を3〜4%まで加速する必要があります。
この場合名目GDPは5〜6% となり、政府収入(税、社会保険料、官公企業利益を含む)は1.5倍のスピードで拡大するから、増税(税率アップ)なき財政の自然増収が実現します。
先の修正資本主義の主柱の自動安定機能で述べた通りです。中央・地方政府の債務の返還も促進され、巨大に悩んでいた政府債務/GDP比率も急速に低下します。一方、地価・債券価格の上昇から官公営の余剰資産の処理も進み、債務の償還は一段と促進されるのです。(拙著:奇跡を起こせ、アベノミクス、あうん出版)
この日本経済の自動安定機能を無視して、いたずらに増税に走りデフレ脱出を困難にする現状を、浜田浩一教授は‘日本人の天動説‘と呼びましたが、成長加速こそデフレ脱出の妙手であり、財政再建の王道であることをこの際、特にに強調したいと思います。
最後に11月13日の内閣府の消費増税のヒアリングで説明した社会保障のシミュレーション結果を掲げ、成長促進策:特に国土強靭化などの公共投資・その他の成長促進と財政余剰が社会保険財政に与えるプラス効果をかかげて読者の参考に供したいとおもいます。
資料1
資料2
PS
もしあなたが、
「デフレという負の遺産を未来に残したくない」
とお考えなら、このVideoは必見です。
http://youtu.be/FYzYGcCtZpI
【 宍戸駿太郎】歴史の教訓を想えへの1件のコメント
2014年11月30日 8:24 AM
非常に判り易くて勉強になりました。有難い事どす。でも、なんで安倍さんは、外国(人投資家)にばかりばら撒いて(ジャブジャブマネーで銀行を経由して)、直接その有り余るマネーを日本の成長に使いたくないのでしょうか?
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