From 三橋貴明@ブログ
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●なぜ、情報の歪みが危機をもららすのか? 韓国の実情から学ぶべきこととは?
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv.php
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本日はテレビ大阪「たかじんNOマネー」に出演します。
http://www.tv-osaka.co.jp/ip4/takajin/
何か、今週はメディアに出てばかりですが、まあ、こういう週もあります。
さて、先日のTOKYO MX「モーニングCROSS」において、山口さんが、
「北海道の電気料金がまた値上げされる」
件について触れていらっしゃいましたが、わたくしが解説する時間がありませんでしたので、本稿で補足しておきます。例により、公開情報を元にしていますが、マスコミで取り上げられることはまずないでしょう。
マスコミで取り上げられない公開情報ってあるの? と、思われた読者の方がいらっしゃるかも知れませんが、山ほどあります。と言いますか、ほとんどの公開情報はマスコミに取り上げられません。
ある意味で、公開情報のフィルタリングこそが、マスコミの本質です。現在の日本は、フィルタリングの基準があまりにも歪んでいるからこそ、わたくしは日夜、キーボードに指を走らせているわけでございます。(というわけで、当たり前ですがわたくしも「フィルタリング」はやっていますからね。別に、三橋ブログは中立公正なフィルタリングをしている、などと言う気もありません)
『電気・ガス料金、一斉値下げへ…北電だけ値上げ
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140828-OYT1T50095.html
電力大手10社と都市ガス大手4社は28日、10月分の料金を値下げすると発表した。
平均的な使用量の家庭では、電気料金が月額10〜63円、ガス料金が32〜43円値下がりする。燃料や原料となる液化天然ガスや石炭の輸入価格が下落したためだ。
このうち、北海道電力は今回の見直しとは別に、家庭向け電気料金を平均17・03%値上げすると政府に申請し、10月からの実施を目指している。認可された場合、10月分の電気料金は9月分より1142円高い8494円となり、大幅に値上がりする。
電気とガスの料金は、政府の認可が必要な値上げと別に最近3か月の原料や燃料の輸入価格の変動に応じて毎月見直されている。
10月分の料金の基準となる5〜7月の原燃料の輸入価格は、9月分の基準となる4〜6月に比べて、原油が0・5%上昇したが、液化天然ガスが1・8%、石炭が2・0%下がった。』
電気料金やガス料金は、基本料とは別に燃料調整費(いわゆるサーチャージ)でも変動します。世界的な鉱物性燃料の価格上昇が一服したため、日本の電気料金やガス料金も「燃料調整費」により変わるわけです。
問題は、なぜ、そんな環境下でも北海道電力が値上げ(基本料引き上げ)せざるを得ないのか、です。
平成25年の北海道電力の経常損益は、三期連続の赤字となりました。赤字額、988億円。
そして、25年末時点の北海道電力の純資産は、何と929億円しかなかったのです。
財務が少しわかる方であれば、これがいかに凄まじい状況か分かるはずです。何しろ、もう一度929億円を超す赤字を出した時点で、北海道電力は債務超過になってしまうのです。(他の電力会社にも、危険なところ(債務超過に陥りかねないところ)が数社あります)
なぜ、北海道電力が純資産を取り崩しているかといえば、もちろん原発を再稼働できていないためです。泊1号機、2号機、3号機の再稼働ができないため、北海道電力は毎年2500億円超の「利益」を喪失しています。日本の電力会社は原発一基を稼働させると、一年間で約900億円の収支改善となるのです。
さすがに洒落にならないので、北海道電力は日本政策投資銀行に議決権なしの優先株を発行し、500億円増資しました。とはいえ、原発を再稼働しない以上、現在の北海道電力は大量に出血し、止血しないまま輸血している状況なのです。
結果的に、北電は再値上げに踏み切らざるを得ず、燃料調整費の値下げ分があったとしても、10月から電気料金が値上げになるわけでございます。
要するに、現在の日本の電力サービスは、一基、年間900億円の収支改善効果がある原発を再稼働しない限り、
「ひたすら、電気料金が値上げされていく」
か、もしくは、
「どこかの電力会社が債務超過になり、銀行融資を受けられなくなり、恐らく国有化」
という、悲惨な状況になりかねないのです。
さらに、電力会社の赤字が続き、貿易赤字として数兆円の所得が外国に流出していっている以上、「脱原発」のために必要な技術開発のための投資資金は出てこないでしょう。脱原発を本当にやりたいならば、使用済み核燃料の再処理、地層処分、原発の廃炉、そして蓄電技術に莫大なお金を投じ、研究開発、技術開発を進めなければいけません。(しつこいですが、わたくしは脱原発に賛成していません)
などと書くと、ルサンチマンに染まった「知ったかさん」が、
「そんな金(投資資金)、悪の電力会社が人件費を削って調達すればいい!」
などと、頭の悪い(「ものすごく」もしくは「超」という枕詞がつきます)ことを言い出すわけですが、お願いですからせめて「公開情報」だけでも調べてから発言してください。
例えば、北海道電力の人件費が総原価(営業費+事業報酬)に占める割合は、8.2%の505億円です。北電が人件費を「ゼロ」にしたところで、原発を一基再稼働する際の半分強の収支改善効果しかないのです。
企業が実際に人件費を10%切り詰めるなどということは至難の業ですが、北電が本当に人件費を一割削っても、50億円の収支改善効果でしかありません。北電の毎年の赤字は、その20倍規模なのです。
他の電力会社も、同じです。別に、わたくしは電力会社の回し者でも何でもないので、正直、電力会社の社員さんの給料が上がろうが、下がろうが、個人的にはどうでもいいです。とはいえ、乾いた雑巾を絞り上げるように電力会社の社員の給料を削ったところで、原発一基動かす数分の一の収支改善効果でしかないというのが現実なのです。この現実を踏まえて、「真剣に考えて」欲しいと、切に願います。
いい加減、数字を見もしないで、ルサンチマン丸出しの醜い意見、すなわち日本の安全保障強化のために尽力している「同じ国民」の足を引っ張る戯言を口にするのはやめてほしいです。電力マンに限らず、公務員も土木・建設業者の場合も同じです。
結局のところ、脱原発派が脱原発を本当に望むなら(くどいですが、わたくしは望んでいません)、技術開発投資を拡大するために原発を再稼働し、電力会社の出血と貿易赤字としての所得流出を止めるしかないのです。それを拒否するということは、結局のところ脱原発派の皆様は、本気で脱原発を望んでいるわけではないんだなあ、と、断ぜざるを得ないのでございますよ。
PS
これは経済学者のルサンチマンの結果なのか?「EUの闇」とは?
https://www.youtube.com/watch?v=DID9wg3PIVo
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