From 三橋貴明@ブログ
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●●中国大暴走。日本は国家存亡の危機を回避できるのか?
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安倍政権が「骨太の方針」と「新成長戦略」を閣議決定しました。
『政府 「骨太の方針」と新成長戦略を決定
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140624/k10015468441000.html
政府は24日の臨時閣議で、日本経済の再生に向けて、法人税の実効税率を来年度から数年で20%台まで引き下げることを目指すなどとした「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」と、新たな成長戦略を決定しました。
このうち、いわゆる「骨太の方針」では、安倍内閣の経済政策で経済の好循環が動き始め、日本経済は力強さを取り戻しつつあるとしたうえで、「成長戦略の成果は中小企業や地域経済に波及しつつあり、それが全国津々浦々まで広がり、中長期的な地域経済の展望が見いだせるよう対応していくことが必要だ」などとしています。
そして、海外からの投資を呼び込むとともに日本企業の競争力を高めるため、法人税の実効税率について、必要となる恒久財源を確保し来年度から数年で20%台まで引き下げることを目指すとしています。(後略)』
本ブログで批判していた構造改革、新自由主義的な政策が、全て詰め込まれた形になっています。各政策について整理してみました。
【日経平均を直接上昇させる見込みがある政策】
・GPIFのポートフォリオの見直し:世界最大のファンドであるGPIFの株式への投資配分を増やす
・法人税の実効税率引き下げ
【実質賃金を切り下げ、企業の利益を増やす政策】
・外国人技能実習制度の延長
・家事支援外国人労働者の受け入れ(国家戦略特区にて)
・年収1000万以上労働者の労働時間規制緩和(いわゆるホワイトカラーエグゼンプション)
・介護分野における外国人留学生の活躍
【既存の市場への新規参入を容易に】
・混合診療の大幅拡大
・農業委員会・農業生産法人・農業協同組合の一体的改革
・PPP/PFIを活用したインフラ運営の実現
【財政均衡主義】
・プライマリーバランスの2020年度までの黒字化
・PPP/PFIを活用したインフラ運営の実現
今回の「新成長戦略」では、やたら「稼ぐ力」が強調されています。この「稼ぐ力」という言葉が大好きなのが、ご存知、竹中平蔵氏になります。
「稼ぐ力」について、「日本再興戦略2014」では、以下の通り説明されています。
「日本経済全体としての生産性を向上させ、「稼ぐ力(=収益力)」を強化していくことが不可欠である」
「岩盤規制に穴を空け、どんなに企業や個人が活動しやすい環境を整えても、経営者が「稼ぐ力」の向上を目指して、大胆な事業再編や新規事業に挑戦しなければ、いつまでも新陳代謝が進まず、単なるコスト抑制を超えた、日本経済の真の生産性の向上にはつながらないのである」
政府の文書からは、「需要」が常にあり、日本企業の生産性向上の努力が足りない、新陳代謝が進まず、生産性が低い企業が残っていることが問題、という「思想」が読み取れます。
需要が足りない状況において、新陳代謝も生産性向上もあったものではないですが、少なくとも政府の文書を読む限り、「需要が十分にある」という立場で書かれています。すなわち、セイの法則を前提にしているのです。
先日、「日本人に投資する日本」において「生産性向上」の重要性について書きました。
「なんだ、三橋と言っていることが同じじゃないか」
と、思われた方がいるかもしれませんが、全然違います。わたくしが言う「生産性向上」とは、デフレから完全に脱却し、国民の所得が増え、生産年齢人口の伸び悩みにより「需要>供給能力」と、インフレギャップ状態になった時点での「生産性向上」です。デフレから完全に脱却しておらず、国民の貧困化が続いている状況での話ではありません。
宮崎哲弥氏の名言の通り、
「全ての政策はタイミング」
なのです。生産性向上自体は、別に善でも悪でもありません。あらゆる政策同様に、正しさはタイミングで決まります。
もっとも、個別の企業にとって生産性の向上は常に善です。何しろ、企業の目的は利益なのです。生産性を向上すると、利益が増えます。
とはいえ、政府の目的は利益ではありません。政府の目的は「経世済民」であり、国民の豊かさを追求することです。経世済民を推進する場合、特定企業の利害と衝突するケースもあります。それでも、国民全体のためにやらなければならない、あるいはやるべきではないことをやらないのが「政治」だと思います。今回の新成長戦略には、「企業の利益」は見えても、経世済民の精神は全く感じ取ることができません。
しかも、安倍政権の成長戦略が特に問題だと思うのは、「成長する分野」を政府が勝手に決めつけている点です。わたくしが「生産性の向上」という言葉を使うとき、特定の産業分野での投資拡大等を意味していません。何しろ、どの分野が成長するかなど、事前に人間に分かるはずがないのです。
生産年齢人口減少が続いたとして、特定の分野でインフレギャップが拡大し、その分野における投資が「儲かる」と民間の経営者たちが判断したとき、設備投資や人材投資が進み、生産性は向上するでしょう。すなわち、成長分野を決定するのは「市場」なのです。
構造改革主義者の皆様は、やたら「市場」という言葉を使う割に、「成長分野」を政府に勝手に決めさせます。申し訳ないですが、成長分野とは「需要>供給能力」になっている分野です。例えば、現在の「農業」がインフレギャップ状態ですか? 農産物や酪農品の供給能力が不足し、価格がひたすら上昇し、国民が苦しめられていますか? 決して、そうではないはずです。
需要と供給能力のバランスを無視し、政府が特定の分野を「成長分野」を決めつけ、規制を緩和し、「新規参入」を促進する以上、
「日本国民ではなく、特定の企業の利益ための政策なのでは?」
という、疑惑が沸き起こらざる得ないわけでございます。
今回の成長戦略は、もちろん国会で法律を成立させなければ、有効にはなりません。舞台は内閣から、国会へと移ります。特定の企業を利し、日本の国の形を壊す政策を止めるには、国会議員を動かすしかありません。わたくしもこれまで以上に「議員」へのインプットを強化致しますので、皆様のご支援、ご協力をなにとぞよろしくお願いいたします。
PS
日本人は中国共産党の幹部をなめすぎていないか?
本当は怖い中国の話を三橋貴明が解説中
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