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2014年3月27日

【三橋貴明】なぜ家計の金融資産が過去最高になったのか?

From 三橋貴明@三橋ブログ

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「三橋貴明」のライフワークとでもいうべき「国の借金問題」。

厳密には、
「国の借金問題(正しくは政府の負債)とやらで使われているレトリックを片端から叩き潰し、嘘を言いまくっている連中の権威を失墜させ、日本を財政均衡主義から脱却させ、国民の所得が拡大する経済を取り戻す」
でございますが、以前は、
「国の借金(正しくは政府の負債)がGDPを超えると、100%破綻する」
と、真顔で主張する人がいました(06年くらいまで)。何故に「フロー(所得)」であるGDPを「ストック(蓄積)」である政府の負債が超えたら破綻(デフォルトという意味だと思います)するのかさっぱり分かりませんが、未だに新聞では、
「投資家が国債を売り払い、金利暴騰で破綻する」
といった、無茶苦茶な論がまかり通っております。

その中でも、最も「統計を無視したファンタジー」理論が、
「家計の金融資産を政府の負債が超えたら破綻する」
でございます。

『家計の金融資産残高が過去最高、昨年末に1645兆円
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA2O00420140325
日銀が25日に発表した2013年10─12月期の資金循環統計によると、家計が保有する金融資産残高は12月末時点で前年比6.0%増の1645兆円となり、過去最高を更新した。
株高・円安基調を背景に株式や投資信託などの時価が膨らんだことが背景。好調な収益環境を背景に企業の資産残高も増加を続けている。
昨年12月末の家計の金融資産残高は、同9月末の1609兆円を上回り、過去最高を記録した。株高基調に伴う時価の上昇などを受け、株式・出資金が前年比38.5%増の155兆円と2007年9月末以来の水準に拡大。投資信託も同28.4%増の79兆円と過去最高を更新した。
もっとも、前年比伸び率の上昇要因を新規投資と時価増加分に分解すると、投資信託はほぼ半々だが、株式・出資金は新規投資が売り越し(マイナス6.6%)となり、時価の増加がけん引する格好となっている。
また、現金・預金は同2.3%増の874兆円で過去最高となり、根強い家計の貯蓄志向も継続している。(後略)』

「家計の金融資産を政府の負債が超えたら破綻する」
はずなのですが、現実には政府が借金を増やせば増やすほど、家計の金融資産も膨れ上がっていく状況になっています。

「な、なぜなんだ・・・・。なぜ、政府の借金が増えているにも関わらず、家計の金融資産も積み上がるんだ。これでは、追いつけないではないか・・・・」
などと、ファンタジスタな財政破綻論者の方々が嘆いているのかは知りませんが、政府の負債が増えれば家計の金融資産も増えるのは当たり前です。何しろ、「負債のみを増やす」ことは、この世の誰にもできないのです。

【2013年末時点(速報値) 日本国家のバランスシート(単位:兆円)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_45.html#BS

【2012年末時点(速報値) 日本の国家のバランスシート(単位:兆円)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_42.html#12BS

というわけで、2012年末と2013年末の国家のバランスシートを比べてみましょう。
貸方において政府の負債(国の借金&地方自治体の負債)は1112兆円から1150兆円へと、48兆円増えています。ところが、反対側の借り方で、家計の資産が1547兆円から1645兆円へと98兆円「も」増えてしまっています。

わお! 国の借金(しつこいですが政府の負債)が家計の金融資産に追い付くどころか、引き離されているぞ! てなもんでございます。

政府が国債を発行すると、バランスシートの借方で「現金・預金」という資産が、貸方で「国債」という負債が増えます。この世に資産を増やさずに、負債「だけ」を拡大することができる存在はいません。

政府は国債発行で調達したお金(現金・預金)を何らかの目的で支出します。すると、借方で政府の「現金・預金」が消滅しますが、別にこの世から消えるわけではありません。お金は年金や公務員給与ならば「家計」に、公共事業などは「企業」に移るだけです。すなわち、政府が支出をしたとき、家計もしくは企業の金融資産が「必ず同額分、増えます」。

というわけで、
「家計の金融資産を政府の負債が超えたら破綻する」
は、「お金は使うとこの世から消える」「金融負債だけを増やすことが可能」という、物理法則を無視したファンタジー理論ということになります。

ちなみに、今回の家計の金融資産増加の「反対側」で負債を増やしたのは、政府には限りません。日本銀行もまた、「現金・日銀預け金」という負債を増やしているわけです(量的緩和政策により)。

ファンタジーワールドではない現実の世界では、誰かが資産を増やしたとき、必ず誰かの負債が増えます。というわけで、本日のタイトル「なぜ家計の金融資産が過去最高になったのか?」の答えは、
「政府や日銀などが負債を増やしたから」
というわけでございます。
本ブログに長年、アクセスしてくださっている読者様にとっては常識でしょうが、最近は新読者の方が増えているようですので、改めて「国家のバランスシート」について解説してみました。
それにしても、家計の金融資産がひたすら増えていく割りに、所得(GDP)がそれほど拡大しないというわけで、我が国は本当に金回りが悪いことが分かります。要するにデフレというわけですが。

デフレを継続させ、日本経済の足を引っ張っている要因の一つ、財政破綻論あるいは財政均衡主義を打破するためにも、繰り返し、繰り返し「嘘」を否定していく必要があるのです。

PS
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【三橋貴明】なぜ家計の金融資産が過去最高になったのか?への1件のコメント

  1. 江崎守 より

    来年末にドル円が113円くらいにならないと、来年は国の借金が上回ってしまうので、将来の日本の為にもちゃんと知識を学んでリスクが中抵度の投資してほしいですね。

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