From 三橋貴明
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【今週のNewsピックアップ】
●グローバル資本主義を超えて(海外編)
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●金融政策のジレンマ
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11720652455.html
1933年にグラス・スティーガル法がアメリカで制定され、それ以降、「銀行業」は面白味のない職業になりました。グラス・スティーガル法とは、簡単に書くと、
「国民から預金を集め、企業に貸し出す」
商業銀行と、
「国民から資金を『投資』として集め、株式や債券などに投資する」
投資銀行(証券会社)を分離し、銀行業は「いざ」というとき、連邦預金保険公社が救済する、投資業は「いざ」というときであっても救済しないことを定めたものです。国民にとって、預金とは銀行に対する「貸付」です。国民が貸し付けた預金は、最悪のケース(銀行倒産など)であっても政府が救済する。代わりに、銀行には「貸付(信用貸出)」のみの業務しか認めない。
それに対し、投資業(証券会社、投資銀行など)へ国民は「投資」としてお金を出したわけであり、最悪、お金が全額戻って来なくなっても自己責任。政府が救済しない代わりに、投資業を営む会社が信用投資のビジネスを拡大することを認める、というものでした。
グラス・スティーガル法が制定されて以降、商業銀行は「国民から預金を集め、企業などに貸し出す」信用貸出の業務に専念することになり、いわゆる「一攫千金」的なビジネスはできなくなったのです。
ニクソン・ショック(1971年)以降、金融の規制が次第に緩和されていき、国境を越えた資本移動の自由も少しずつ認められていきました。そして、ついに1999年にグラス・スティーガル法が廃止され、銀行業がCDO(債務担保証券)などを購入することが可能になります。(実際には、銀行がSIVなどの金融子会社を設立し、CDOを売買する形態でした)
ちなみに、貸付と投資は全然意味が違いますので、ご注意ください。貸付とは、基本的には元金が「返済」されます。それに対し、株式投資が典型ですが、投資とは「元金が戻らない可能性もある」お金の出し方です。
金融セクターの「規制の緩和」が実施された結果、商業銀行までもが「借りて、投資する」形でバランスシートを膨れ上がらせていき、最後にはCDS(クレジットデフォルトスワップ)という、「単なるギャンプル」にしか見えない金融保険商品までもが登場。最終的には、08年9月15日にリーマンショックという形で破局を迎えました。
さすがに「これはまずい」ということで、リーマンショック以降の世界では「金融規制の強化」が課題になっていきます。09年12月にアメリカのマケイン上院議員とカントウェル上院議員が、共同でグラス・スティーガル法の復活を提案しました。共同提案の骨子は、商業銀行と投資銀行を「分離」することに主眼が置かれていました。
というわけで、オバマ政権は2012年7月実施をめざし、銀行規制強化案を推進します。金融規制を主導したのが元FRB議長のポール・ボルカー氏であったため、新たな金融規制案は「ボルカー・ルール」と呼ばれるようになりました。
ボルカー・ルールの内容は、国民から預金を集める商業銀行に対し、
(1)ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドへの投資、スポンサーになることの禁止
(2)短期的な利ざや稼ぎなどを目的として自己勘定での証券売買やデリバティブ取引の禁止
(3)銀行が大きくなりすぎるのを防ぐ
というものでした。
ところが、金融セクターのロビー活動が効いたのか、ボルカー・ルールの適用は12年7月から14年7月へと延期されてしまいます。
ボルカー・ルールが延期されても、アメリカを中心に量的緩和という金融政策は拡大していきました。結果的に、金融規制「強化前」に世界各地で金融経済が膨張し、その割に実体経済がいまいち良くならないという現象がみられるようになってしまいます。
厄介なのは、金融経済の膨張が実体経済に波及しにくい環境下においても、「金融バブルの崩壊」は実体経済に即座にネガティブな影響を及ぼすという現実です。リーマンショックは、基本的には金融バブルの崩壊に過ぎなかったのですが、その後の世界の実体経済がいかなる状況になったかは、ご存じの通り。
というわけで、ボルカー・ルールの適用という金融規制の強化は「間に合わなかった」可能性が高いわけです。しかも、来年の7月にさらに金融バブルが膨らんでいると、ボルカー・ルール適用自体がバブル崩壊の引き金になりかねません。
また、中央銀行の量的緩和が金融バブルを膨張させていると「確定」してしまうと、今度はバブル崩壊を恐れた金融当局が、金融引き締めに向かえなくなってしまうのではないかと恐れています。すなわち、量的緩和政策自体が「大きすぎて、潰せない政策」になりかねないのです。そうなると、その後の世界経済は「人類未踏の領域」に突入することになってしまいます。
というわけで、実体経済と金融経済のバランスを回復するためにも、2014年以降の世界の主要国は、
「財政均衡主義から脱却し、財政政策により実体経済を回復させつつ、金融バブルをソフトランディングさせ、さらに金融規制を強化する」
といった、難しい政策が求められることになると考えているわけでございます。
PS
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【三橋貴明】人類未踏の領域へへの2件のコメント
2013年12月9日 2:23 AM
そして、大量に流出する「チャイナ・マネー」の行方と、その影響も気になります・・・。米中は世界の2大大国などといいながら、世界を不安定にしているのもこの2国。
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2013年12月9日 6:07 AM
このまま悪い方向にいけば、金融緩和は、バブルをおこすから、規制強化しないといけない→実体経済に悪影響→それでも、金融緩和はダメ!とかなりそうですね…昔の金本位制みたいに逆戻り。
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