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2013年8月26日

【三橋貴明】政商たちの真実

FROM 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】

●再生可能エネルギー固定価格買取制度の「闇」
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11596703871.html

●政商たちの真実
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11597408571.html

●続 政商たちの真実
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11598060068.html

間もなくミャンマー取材を受けて書き上げた「ミャンマー 驚きの素顔 【現地取材】 アジア最後のフロンティア」が発売になるのですが、本書の中で「ミャンマーの所得格差」を取り上げた章があります。とにかく、ミャンマーの格差は途轍もなく、中国や南米とジニ係数で争えるほどに国民の所得に開きが出ています。もっとも、ミャンマー政府は碌に統計を取っていないので、ミャンマーの正確なジニ係数は誰にもわからないのですが。

ヤンゴンの街を自動車で通ると、ボロマンションが密集する貧困地帯と、道路一つ挟んだところに「大豪邸」が建っているのを見かけます。それはもう、日本では絶対にありえない規模の大豪邸で、豪奢な庭園に巨大なプールがあり、

「こ、ここは、ビバリーヒルズか・・・?」

と思いたくなるほどです。もっとも、ビバリーヒルズは「地域」として富豪やハリウッドスターの豪邸が集まっているわけで、道路の向こう側に貧困地帯があったりはしないでしょうが。

ちなみに、かのアウン・サン・スーチー氏が幽閉されていた邸宅も、かなりの大豪邸です。もっとも、スーチー氏の邸宅はお父さんのアウンサン将軍(ビルマ建国の英雄)から受け継いだものなのですが。

ミャンマーの「極端な所得格差」をもたらしたものは、何でしょうか。実は、「政商」の存在です。政商とは、政治家と結びついたビジネスマンのことで、法律等で各種の「既得権益」を保有し、独占的、寡占的に「巨額の所得」を稼ぐ人々を意味しています。

ポイントは、「政治と結びつき、既得権益を確保する」という部分になります。例えば、ミャンマーでは「輸入」が認可制です。一般国民が勝手に外国から製品を輸入することはできず、政府(というか、軍官僚)の許可が必要だったのです。

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●三橋貴明の無料音声を公開中。
「アメリカ格差社会〜グローバル資本主義の悪夢」。

http://www.keieikagakupub.com/sp/38NEWS_SAMPLE/index_usa_mag_sl.php

ボロボロに搾取されるアメリカ国民たちの哀れで悲しい現実。
日本人が今、やるべきこととは・・・・

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軍官僚に取り入り(当然「賄賂」を使います)、ミャンマーへの製品輸入の権利を獲得した一部の政商が、独占的に輸入業を営むことで、巨万の富を築き上げたという話です。何しろ、政府の認可が無ければ輸入業を営めませんので、政商は軍官僚と「巧くやる」ことで、いわゆる過剰利潤を獲得し放題になります。もちろん、認可を出した軍官僚の方も、大いに個人の所得を増やします。

何を言いたいのかと言えば、ビジネスで過剰利潤を上げるには、「独占的構造」を築くのが最も手っ取り早いという話です。特に、「必需品」の市場において独占的構造を作れれば、言うことはありません。

例えば、医薬品はミャンマー国民が生きる上で、必須の製品です。この種の必需品の輸入まで、ミャンマーは認可制でした(今は変わってきていますが)。ミャンマー国民は、

「この医薬品を使わなければ、死ぬ」

と言う形で「選択肢がない」状況で、特定の(政府から認可を受けた)政商から購入するしかないわけで、二重の意味で選択肢を奪われてしまいます。それはもう、政商側は笑いが止まらないでしょう。

この「消費者(国民)側に選択肢がない」状況を打破するものこそが、本来は「市場競争」のはずなのです。ミャンマー政府が輸入認可制を停止し、ミャンマー国民であれば誰でも製品を輸入できるようにすれば、「市場競争」の働きで政商が過剰利潤を得ることは不可能になります。

ところが、アメリカや日本の新自由主義者、構造改革主義者たちは、まさに上記の「市場競争」をお題目に、ビジネスの独占的構造を築き上げようとしてくるため、厄介なのです。例えば、

「水道事業を民営化し、市場競争を導入しよう」

「発送電分離を行い、発電分野に市場競争を導入しよう」

などのレトリックが典型になります。

水道や電気などの公共財とは、国民の選択肢がほとんどないが故に「公共」財なのです。例えば、水道事業の民営化が行われ、「水道株式会社」が料金の値上げをしてきたとき、国民側に「他の水道会社から水を購入する」という選択肢はありません。何しろ、水道を供給するインフラを別個に整備するには、とんでもない投資が必要になります。

あるいは、発送電分離後に発電会社のM&Aが進み、次第に「独占」が構成されてしまうと、やはり国民は「選択肢」がない形で、高い電気料金を支払わされることになります。

そもそも、公共財の分野には「市場競争」は向いていないのです。何しろ、国民側に財、サービスに対する選択肢がほとんどありません。

しかも、政府が民間の公共財供給会社の料金を規制しようとすると、会社側は「利益」を上げるために、インフラ整備のコストを削ってくるでしょう。そうなると、提供されるサービスの品質が落ち、インフラの老朽化が放置され、国民は不便を被ることになります。ところが、国民側に「別の会社」からサービスを購入する選択肢はないのです。

などと書くと、「彼ら」は、

「ならば、料金を簡単に値上げできないような形で、さらにインフラ投資を十分に行わせる形で民営化しよう」

などと、意味不明なことを言い出します。まずは「Aという民営化、規制緩和をしよう」と持ちかけ、「いや、Bという問題が発生するからダメだ」と反論すると、「ならば、Bという問題が発生しない形で、Aを実施しよう」と言ってくるわけです。例えば、「TPPに参加しよう」⇒「TPPは○○という問題が発生するからダメだ」⇒「ならば○○が起きないように交渉し、TPPに参加しよう」といった感じです。彼らに対し、

「いやいや。そもそもなぜAという民営化、規制緩和を実施し、TPPに参加しなければならないんだ? 一体全体、国民に何のメリットがあるんだ?」

という、根本的な反論をしていかなければならないわけです。その際の反論用の「アイテム」は複数あり、例えば「経世済民」であり、「安全保障」であり、「経済成長」であり、「政府はNPO(非営利団体)」になります。

というわけで、今後の三橋は押し寄せる「構造改革」の波に対抗するために、「経世済民」「安全保障」「経済成長」「政府はNPO」等で反論する本を立て続けに出していくことになります。

PS
三橋貴明の無料音声を公開中。テーマは「アメリカ格差社会」です。
http://www.keieikagakupub.com/sp/38NEWS_SAMPLE/index_usa_mag_sl.php

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【三橋貴明】政商たちの真実への5件のコメント

  1. 末元 古雪 より

     素人娘が考えてたんですけどぉ、FITって原発事故半年後に成立した速さも速い?と思うのですけど、(その半年前に放射能に対する抗薬か何かの薬事法が成立していたのは本当かどうかは知らないけど本当なら似たような法改正だったのでしょうか。しかもこんなグッドタイミングは計ったんだとしたら由々しき現代ですね)お金が自動的に落ちるシステムを構築(SBMも初期には知らない内に何かの課金が増やされていると言うのがありましたけど余りにも似すぎています)されてるってことは、ある意味中国の一党独裁と近い状態に進んでいるとも言えそうな気がするのですけどぉ。しかも気づかない内に起こっちゃっている。 やっぱり完全にインフレに戻さないと、限られた中の醜いパイの奪い合いバトルロワイヤルでパイを投げる存在さえ無くなってしまうのかもしれませんね。「君ぃ、何考えてんのかね。どこの宇宙いや、どこの星から来たのかね?」 えーとねぇ。ウソップランドプラネットでぇーすっ。うふっ。(んなパクり冗談で済めばいいんですけどね)

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  2. 名無しの権兵衛 より

    『TPPと日本経済―日本人が損をするカラクリ 関岡英之_岩本沙弓 対談』の動画を見ましたが、日本の消費税は知識あるアメリカ人からは輸出補助金と見られているようです。というのも日本の輸出企業は製品を輸出時に消費税分の輸出戻し税(還付金)を貰えるからだそうです。そして、消費税の税収10兆円の内、およそ4兆円を輸出戻し税に使われているとの事です。だから経団連はこれ目当てに『これからは海外だ!』と言ってると。でもこれは国内で消費された物やサービスに掛かった消費税が輸出企業にだけ還付されるので、かなり不公平な制度ではないでしょうか。彼ら輸出企業は還付金目当てで消費税増税を推進するべきではなく、為替が円安になった事だけで満足するべきです。国内企業の全てが輸出企業というわけでは無いのだから。

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  3. 名前はまだ無い より

    私は現在の世界の混乱の大きな要因は三橋さんのおっしゃる通りグローバルな越後屋の跳梁跋扈にあると思います。(ただ日本の場合はこれに戦後体制が重なっているために問題の所在が複雑になっている。)経済学が歪んでいくのはこうした政商たちの雇った番頭たちが次々に手を変え品を変え(「構造改革」「時代はグローバル」、「脱藩官僚」、「リフレーション」「財政再建」「成長戦略」などなど)世論誘導を図ってくるということにあるのだと思います。反撃を加えるには『(ある程度)正しい政策のあり方が国民に浸透する』『投票率が上昇する』この二点が揃わなければ無理でしょう。お金を持っている人たちが強いのは当然ですから。ひとつだけ私はちょっと疑問に感じるのは「政府はNPO(非営利団体)」という言葉は反論の道具として有効なのか?というところです。もちろん三橋さんがおっしゃっている意味はよくわかるのですが「役所はサービス機関」などと言ってしまう人もいるように「国家」と「企業」が対等な単なるひとつの法人に過ぎないように感じるためにかえって逆効果なのではないかと思います。あくまで企業は国家という地盤の安定の上に成り立つものであるという点が含まれた言葉の方がプロパガンダとして有効ではなかろうかと思います。

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  4. シカゴ狂山の一角 より

     米(糧)本位だった鎖国時代でも悪代官、悪商人ってのは存在していたんでしょうから、根絶やしにできることはないのでしょうけど、金本位以降、本位が生活の糧(実態的。身体的)ではなく仮想(頭、脳)的なものに変わってしまったのも関係あるんでしょうか。などと無駄な思考の抵抗はやめろっ。お前は既に包囲されているっ。太陽光焼き討ちの刑に処す。「え。そんな。偽装左翼全体主義ならぬ今度は偽装右翼全体主義かよぉーっ」光線矢のごとし、グサッグサグサグサグサグサグサグサグサッグサグサ‥絶え間なく‥グサーッ躍り狂った筆者に蘇る断末魔の記憶。 何かで読んだんですが、ブッシュJr.時代の戦争被災地において“水の支給”ではなくて、国内の同じ民族の富裕層?を教育(マネタリズムを植え付ける)するかの如く、被災者に必要な水を売りつける、ことが行われていたことには驚きました。あの戦争は民主化の戦争と装いながら、ネオシカゴボーイズによる新自由マネタリズムの普及革命、ショックドクトリンだったのか。そんな世界もまんざら嘘でもない思考停止。

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  5. 名無しの権兵衛 より

    件名と異なる話題で申し訳ないですが、消費税増税問題の件についてです。デフレ脱却を目指している安倍政権のはずですが、スタグフレーション圧力になる消費税増税を各マスコミメディア、国際公約、IMF等を使って遮二無二増税推進キャンペーンをしてくる財務官僚は異様としか思えないです。この目的は財務官僚の利得権益(軽減税率、輸出企業)以外にあり得ないのではないでしょうか?このように独断専行的に政治を行う財務官僚を見ていると、過去の大東亜戦争の火付け役とも言える『関東軍』を彷彿させます。非常に危険極まりない事態ですね。

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