アーカイブス

2013年2月1日

【柴山桂太】株高による危機

————————————————————

●「いいね!」をくれた方には、三橋貴明の音声ファイルを
無料プレゼント。世界を読むための3つの原則とは。

三橋貴明の「新」日本経済新聞 公式Facebookページ
⇒ http://www.facebook.com/mitsuhashipress/app_109770245765922

————————————————————

FROM 柴山桂太@滋賀大学准教授

アメリカ経済は順調に回復中、と報道されています。住宅価格も底入れしたと言われていますし、株もダウ平均が1万4000ドルに近づくなど、リーマンショック前の水準に戻りました。長期金利もじわじわ上昇しています。つまり国債のような安全資産から株などのリスク資産にお金が動き始めているのです。

リーマンショックから5年がたち、アメリカ経済は深刻な不況局面から抜け出したという楽観論が拡がっています。しかし本当に、そう考えてよいのでしょうか。

アメリカ経済の先行きに私が懸念を持つのは、日本の経験を思い出すからです。

日本が本格的にデフレに突入したのは九八年。日本の住宅バブルの崩壊が九一年だとすると、ちょうど七年後です。

つまりバブル崩壊の影響はすぐに現れるのではなく、じわじわと効いてくるというのが日本の教訓です。

しかも日本の場合、九五、六年は景気も回復傾向にあり、株価も戻り始めていました。バブル崩壊から4、5年後のことです。

このとき、橋本内閣は財政再建路線をかかげて、消費税増税も断行しました。いわば「小さな政府」路線をとったわけです。

これが裏目に出て、その後の景気減速を招いたのはよく知られています。日本は九八年から本格的なデフレに突入し、いまに至るまで抜け出せていません。

この時の景気減速は、消費税増税ではなく、アジア通貨危機の影響だという人もいます。97年のアジア通貨危機は、日本の金融システムに大きな打撃を与えました。その影響も間違いなく大きいと言えるでしょう。世界経済の大ショックと財政引き締めが、日本の場合、最悪のタイミングで重なってしまったわけです。

さて、この経験から今のアメリカを見ると、何が言えるでしょうか。

2008年のバブル崩壊から4、5年後というと、2012年から2013年、つまり今です。景気も株も戻りつつあり、悲観論が後退しています。議会では、「財政の崖」や「債務上限問題」などで、政府支出を減らすよう野党から要求されています。景気が回復したんだから、いまのうちに政府支出を削って赤字拡大をくい止めろ、という政治圧力が高まっているのです。

しかも、欧州債務危機やBRICs諸国の景気低迷など、次のショックがいつくるか予断を許しません。今のアメリカの株高は、こうした地域の低迷も大きな要因でしょう。相対的にマシに見える地域にお金が集まっているだけで、バブル崩壊の傷が本当に癒えたわけではないのです。

それを勘違いして、アメリカが財政引き締めをやり、しかも次の大きなショックが起きるとどうなるか・・・。日本の二の舞ですね。日本の場合は一国だけが苦しみましたが、アメリカとなるとそうはいきません。

いずれにせよ、この1、2年が、今後の世界経済の動向を決める重要な分岐点になるでしょう。

確認されるべきは、バブル崩壊の影響はかなり長期に及ぶ、ということです。それを無視して緊縮財政をとれば、アメリカだけでなく世界全体が「失われた10年」に突入してしまう。大げさでも何でもなく、われわれはその瀬戸際に立っているのです。

PS
このメルマガの公式Facebookページができました。

http://www.facebook.com/mitsuhashipress

「ようこそ」のページから「いいね!」してくれた人には
三橋貴明さんの特別音声ファイルを無料でプレゼントしています。

メルマガに書ききれない号外記事をアップしていく予定。
「いいね!」を押して、メンバーになりましょう。

PPS

こんな本を書いています。amazonで星4.5個の評価がついています。

http://amzn.to/V42zOt

世界は「静かなる大恐慌」に突入しています。
日本は、どう生き残るべきか。
それについて述べた本です。

関連記事

アーカイブス

【小浜逸郎】コロナに関する素朴な疑問

アーカイブス

【竹村公太郎】水の分かち合いの奇跡

アーカイブス

【藤井聡】内閣支持率の急落は、「反緊縮」を求める国民の声でもある。

アーカイブス

【適菜収】ポンコツ解散

アーカイブス

【藤井聡】グレートリセットなるものの正体

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です

名前

メールアドレス

ウェブサイト

コメント

メルマガ会員登録はこちら

最新記事

  1. 日本経済

    【三橋貴明】必要なのは「定義された用語とデータ」

  2. 日本経済

    【三橋貴明】経済を解き明かす資金循環統計

  3. 日本経済

    【三宅隆介】お彼岸に思う_自国語が未来を形づくる力

  4. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】高市早苗氏、総裁選、出馬へ――「積極財政」か...

  5. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】【偽善医療】 私達の暮らしにかかせない「医療...

  6. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】<石破が「ジリ貧」なら進次郎は「ドカ貧」総理...

  7. 日本経済

    【三橋貴明】前代未聞の政治イベント

  8. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】石破は今、自身の延命のために「解散」や「総総...

  9. アメリカ

    政治

    日本経済

    【藤井聡】経済、安保、政治における現下の日本あらゆる問...

  10. 日本経済

    【三宅隆介】介護の市場化が招いた危機_デイサービス倒産...

MORE

タグクラウド