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2013年1月14日

【三橋貴明】幽霊の正体

FROM 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
●政策とはタイミング
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11445901401.html

●長期的には、我々はみんな死んでしまう
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11446576375.html

経済政策とは、すなわち「経世済民」でございます。民を救うために世を統べる政治を行うという話でございますが、「普遍的に正しい経済政策」というものはございません。そんなものがあれば、この世から「貧困」は消え失せているわけでございます。

現実には、経済のリソース(資源)が有限である以上、全ての民が自分の欲求(=需要)を満たすというユートピアは実現できないでしょう。

しかも、需要を満たすためには「生産」が必要なわけですが、どれだけ機械化が図られたとしても最終的には「誰か」が働かないわけにはいきません。

ということは、「雇用=所得」の関係が途切れることもないでしょう。

結果的に、働き場所によって、あるいは失業によって所得が少ない民が出てくるわけで、彼ら、彼女らの需要が「全て」満たされるという話にはなりません。

何しろ、需要を満たすには消費、投資としてお金を支出する必要がありますが、その原資である所得が足りないという話になってしまいますので。

何を言いたいかと言えば、経世済民のためには、可能な限り、

「国民の需要を満たす生産」

「国民が自らの需要を満たすための所得創出」

を実現するべきという話です。そして、所得とは労働からしか生まれてきません。労働とはまさに「生産」です。「生産」「需要」「所得」の関係をきちんと理解した上で、「可能な限り」経世済民を実現するという姿勢が、政治家には必要なのです。

そう考えると、GDPという指標は実によくできています。三橋の読者の方であればご理解されているでしょうが、GDPとは「生産面のGDP」「支出(=需要)面のGDP」「分配(=所得)面のGDP」の三つの面から見ることが可能な指標ですが、三つのGDPは必ず一致します。これを「GDP三面等価の原則」と呼ぶわけでございます。

何しろ、「誰かの生産」に「誰かが支出」し、支払われた金額が「誰か(生産するために働いた人)の所得」になるわけです。生産、支出(需要)、所得の三つの金額が一致するのは当然の話でございます。

上記「GDP三面等価の原則」を完璧に理解していれば、現在の日本の問題が「生産」ではなく「所得」にあることが分かるはずです。生産をどれだけ増やしても、所得不足から支出が行われず、物価が下がります。物価が下がると、生産者が獲得する所得が減り、ますます支出ができない悪循環に突入するわけです。

上記の問題が、まさしくデフレーションと呼ばれるものになりますが、竹中氏ら新古典派経済学者たちは、未だに「問題は生産だ!」と言い張っています。

「生産を増やせば問題が解決する」と、すでに二十年近くも主張し続けているのです。結果的に、生産性を高め、競争を激化させるための規制緩和、民営化、自由貿易(TPPなど)といった政策を、十年一日の如く言いはっているわけでございます。

彼らは「政権に入り込む」ことはお得意ですので、今回の安倍政権の各委員会・会議(経済財政諮問会議など)に、実際に「生産」にしか頭が向かない人たちが入り込んでいます。彼らと戦わなければなりません。現在の日本の問題は「所得不足」であり、「生産」の不足ではない事実を国民で共有し、政治を動かさなければならないのです。

上記の歪み(問題の本質が「生産」なのか「所得」なのか間違えること)は、世界中で発生しています(特にユーロ)。本問題が解決できなければ、すでに26%を突破したギリシャの失業率が改善する日は来ないでしょう。無論、ギリシャ以外のユーロ諸国にしても、ドイツを除き、ことごとく「かつてない雇用環境の悪化」に苦しめられているわけですが、問題の本質を勘違いしている以上、当たり前です。

というわけで、日本が正しい問題認識に基づき「正しい解決策」を打ち、「所得」の問題を解決することは、大袈裟でも何でもなく「人類のため」なのです。繰り返しますが、彼らと戦わなければなりません。

民主党という「悪夢の左翼政権」との戦いは、事実上、昨年の12月に終わりました。彼らが復活し、再度、政権をとりにくるような時代は、もはや訪れないでしょう。

とはいえ、別に我々の「敵」が消え去ったわけではなく、今度は民主党時代に雌伏していた「新古典派経済学者」たちと戦わなければならないのです。

かつての日本国民は、新古典派経済学者たちとの戦いに敗れ、デフレを深刻化させる政権を「熱狂的に」支持しました。

今回はあの頃のようにはいきません。何しろ、「新古典派経済学」や「グローバリズム」、あるいはTPPの正しい意味における正体が、インターネットなどを通じて拡散していっている状況なのです。

国民が新古典派の考え方、あるいは「TPPの正体」について正しく理解しさえすれば、彼らとはいえども何もできません。

武器は「情報」なのです。

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と昔の人は言いましたが、国民が正しい情報を保有してさえいれば、新古典派経済学など単なる枯れ尾花に過ぎません。

とはいえ、正体が分からない、あるいは知らない国民が多い場合、この幽霊は「世界を壊す」ほどの危険性を秘めているわけでございます。

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【三橋貴明】幽霊の正体への4件のコメント

  1. やま より

    はじめて、コメントさせていただきます。私は経済の事はよく分かりませんが、安倍さんを支持しつづける前提で、書かせて頂きたいことがあります。私は田舎に住んでます。先生は桜でガソリン価格、車の使用頻度の事に言及されてましたが、レギュラーで先週より4円上がれば、都会の人みたく、サンデードライバイーならいいでしょう、いくら給料上がる政策をするとはいえ、田舎に住む人にとっては毎日の足ですのでそうはいきません。けっこう響きます。いくら通勤手当が出てもたかが知れてます。そりゃ皆都会並みのインフラがあればいいでしょう。しかし日本は7割は山間部、人口密度で言えば都会に比べれば少ないでしょう。ガソリンは何か対策は無いでしょうか。それに10年ほど前は、ハイオクですら100円超えてなかったんです。7月の参議院選挙に自民党が勝つにはガソリン対策はやらなくてはならないでしょう。自民党は主に田舎の人が支持している訳ですし。ガソリンで不満言われたら大変ですよ。現に不満が出てますし。それから、私の様な常に自民党を支持しつづける人ですら、ガソリン価格が投機のネタにされたりすることには頭に来ますよ。

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  2. rxtype より

    彼らの言い分は、長期的には生産性の向上が必要だという言い方をします。まるでかつての古典派経済学の連中とおんなじです。まだデフレ脱却すら見えていないのに、デフレを加速する「生産性の向上」に固執する姿は哀れですらあります。ケインズ曰く「長期的には我々は死んでいる」です。日本人にはわかりづらいかもしれませんが、需要サイドを無視して、人々を文字通り殺しつづけても何とも思わない古典派経済学者(≒新自由主義)への強烈な皮肉です。

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  3. keit より

    20年以上まともな経済政策を採用する政権誕生を待ち望んでいた元金融マンです。アベノミクス成功を切望しておりますが、決して楽観しておりません。以下私の経験などからひとつだけコメント致します。「不況で資金需要がない」話は銀行等が貸し出し抑制策をとっているときに対外的にいいにくいのでこう発表するだけ、こと中小零細企業等に関しては少なくとも過去30年常時前向き後ろ向きに関わらず資金需要は旺盛、貸出が増加しないのは貸し手の都合によるものです。不動産市況が強含めば不動産担保(生ローンノンリコース関わらず)で引当不足かもしれない統計上発表されていない債権が満額回収になっていき、当座この減少分が貸し出しに回る為貸し出し増加が統計上景気回復の数年先になる為外部からはわかりにくいと思います。公共事業中心の財政出動ももちろん必要と思料しますが、日銀が資産買い入れを通じてマネタリーベースを増加させれば実際にはかなり早い時期に銀行等の貸し出し姿勢は好転し、多くの中小企業が救われることになります。駄文長々と失礼致しました。今後とも先生におかれましては明るい日本実現の為引き続きご活躍を切望いたします。

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  4. かずまき より

    多くの日本人に理解させるよい方法があります。小野文恵さん、大竹まことさんに徹底的にガッテンしてもらうことです。集中的に個人教育をするのです。それだけの価値があります。彼らは今、国民的放送番組でしっくりしない発言を浸透させてしまっています。もし彼らが「通貨」「国債」「金融、財政」の常識をガッテンしたら一般国民への影響度ははかり知れないと思います。個人が経験して体感している金銭感覚があります。経営者であれば、会社経営としての資金調達と資金運用のセンスがあります。国家経営としての金の使い方や金銭感覚は上記とは別次元の金銭感覚が不可欠です。それは少し集中して学べば、何度か自分で考えることをすれば体得できます。今の大人たちは教わりませんでしたが、本来は高校あたりの教育でしっかり時間をかけて教えるべきです。その感覚を知らずには、日本政府が巨額の借金を抱えたままさらに借金をして金をバラマクことは愚かにしか見えません。国の借金は事実上返さなくていいとか言ったら人物として信用されなくなります。個人や会社の財布感覚なら、そんなお金の使い方をしたら捨てるようなものだもったいない、と誰だって感じます。国として見るならお金は使ってもなくならないという感覚は、あっさりした教育や情報提供ではガッテンしません。尚、会計(簿記)の言葉で経済的現象を理解できれば、生きた「貸借対照表」を思い描けますので、「通貨」や「国債」とは何か、「日銀券」「日銀当座」とは何かについてアプローチしやすいと思います。

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