政治

日本経済

2021年3月5日

【藤井聡】菅長男接待問題は「菅政権の腐敗」を示している。これこそ、現在の日本における最大の問題である。

From 藤井聡@京都大学大学院教授

以前、表現者クライテリオンメルマガで

『安倍政権「腐敗」仮説:今、日本がウソで自滅しかかっているのは、安倍政権が「腐敗」しているからではないか?』
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20200224/

という記事にて論じましたが、現在の政府は、激しく「腐敗」(コラプション)してしまっていると考えざるを得ません。

「腐敗」とは、「精神が堕落して、弊害が生じる状態になること」(広辞苑)なのですが、要するに政府が政府であるために絶対に必要な「国民のために働く」という当たり前の精神が失われ、そのせいで国益が激しく毀損していくのが、「政府の腐敗」という現象です。

上記記事では、政治的腐敗についての学術研究に基づいて、当時の安倍政権は典型的な「腐敗」政権であるという旨を、学術的視点から解説したのですが、今の菅政権においては、さらにその腐敗の度合いが激化しています。もはやもう、「仮説」なぞというヌルイ言葉は著しく不十分なほどに、誰の目にも明らかな程に政府の腐敗が進行しているのが、今の菅政権です。

その象徴が今回の、「菅長男接待問題」

この話についてはこの記事で詳しく論じましたが……

『「ワクチン接種」は予定通りには絶対進まない ~菅長男接待に象徴される菅“腐敗”政権がまともに機能する事などあり得ない本質的理由~』
https://foomii.com/00178/2021022716431977161

この問題は単なる官僚の法律違反の問題ではないのです。小役人達の法律違反ごとき、そんなものは年がら年中生じている問題であって、それごとき、大騒ぎする必要など何もありません。

それよりも問題なのは、この問題が示しているのは、菅政権そのものが腐敗しているという事実であり、その中心に存在する菅という政治家そのものが激しく腐敗しているという真実なのです。

何と言ってもこの事例は、今の官僚達が、国民の利益の事等そっちのけで、上司である菅総理に尻尾を振りまくっていることを明らかに示しているからです。

そもそも今の小役人達は、法律違反をして事後的に罰せられることを極端に恐れているため、関連業者の接待を絶対に受けないのです。にも関わらず、彼等が心底嫌がっている違法接待という法律違反をする方がまだマシだ、と彼等に思わせるくらいに、彼等は菅息子の接待を断ることはヤバイと認識していたことを、今回の違法接待は意味しているのです。

つまり、それはいわゆる「暴力団」の親分と子分の関係と同じ。親分は子分に「あいつを脅してこい」だの「あいつを消せ」だのとヤバイ犯罪をすることを命令します。子分はできれば、そんなヤバイことはやりたくないけれど、それを断ればもっとヤバイ事になる…という考えて、仕方なく子分や、ヤバイ橋を渡ることになるわけです。

つまり、菅総理というのは、部下に国民のために自由に働かせるのではなく、「兎に角俺が気に入るように動け。動かないとどうなるか、分からないぞ」という凄まじい圧力、というか脅しをかけているという――内部経験のある人間ならば皆常識の様に知っていた――実態が、今回の事件により明らかになったのです。

実際、菅総理は、「俺は気に入らない部下を左遷するんだ」(左遷=高い官職から低い官職におとす)という事を、国会で明言してすらいます。
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1366518629143994374

総理大臣が部下の官僚の人事について「左遷」という言葉を使うのは前代未聞なのですが、これは正に、部下に脅しをかけ続けていることを、自分自身も常識の様に理解していることを意味しています。

いずれにせよ、こうした状況は、官邸を中心とした政府組織についての、菅義偉という人物による「私物化」が進行していることを示唆しているのです。

まさにそれは、政府において「国民のために働く」という当たり前の精神が失われ、そのせいで国益が激しく毀損していくという「腐敗」が激しく進行していることを意味しています。

ただし、こうやって菅政権が腐敗していくのは、表現者クライテリオンの特集号『菅義偉論』
https://the-criterion.jp/backnumber/94_202101/
にて詳しく論じた様に、菅義偉という一人の政治家がそもそも腐敗している存在であることの必然的な帰結と言うことができます。

詳しくは、『菅義偉論』をご参照いただければと思いますが、菅という一政治家は、政治家が当然携えているべき「国民を豊かにする」という精神をとりたてて持ち合わせておらず、ただただ自身の政治権力の維持・拡大を考えていると批評可能な人物。

しかも、彼自身は、田舎の秋田から東京に出てきた時から、日本の伝統的な仕組みそのものに対するルサンチマン(=弱者の恨み)を抱え、それらを「破壊」する事に快感を覚える傾向を持ち合わせており、したがって、その「破壊」のために政治権力の維持・拡大を企図しているという恐るべき倒錯を抱えた人物であることも、上記『菅義偉論』から示唆されています。

その意味においても、菅氏は激しく腐敗している政治家であると解釈することもできるのです。

だから、そういう人物が総理大臣の地位に就けば、その強大な権限を国民の為ではなく、ただただ自分自身の政治権力の維持・拡大に活用するのはもちろんのこと、彼の倒錯した精神故に、平然と、というよりむしろ喜々として伝統ないしは国体を破壊するための行政を展開し続けることは不可避と予期されるのです。

そして事実、今回の菅長男接待問題は、以上に述べた『菅義偉論』の正当性を雄弁に例証しているわけです。

・・・

これは日本国家にとって極めて深刻な問題です。

なぜならそもそも「政府が腐敗」すれば、まともな政治が展開される事等、万に一つも無いからです。

それはまるで、アフリカや東南アジア、南米の小さな後進国の政府のようなもの。アメリカでよく言われる「バナナ共和国」という比喩がまさにそういう事を示しているのですが、そうした国々では、政治家や官僚は、私利私欲のためだけに自らの政治権力を使い、国家はどんどん疲弊し、民はどんどん貧しくなっていくわけですが、それに似たような状況が日本で進行しているわけです。

そう考えれば、コロナ対策が出鱈目だらけなのも、延々とデフレが続いているのも、尖閣や北方領土の外交が滅茶苦茶なのも全て合点がいきます。そうした滅茶苦茶な政治は全て、政府の「腐敗」という唯一の原因の必然的な帰結なのです。だから、この政府の腐敗問題を、我々国民は看過してはならないのです。

この腐敗問題を国会で追及していると「国会でいつまで下らない議論してるんだ!コロナ対策とかの議論をやれ!」なぞという声がでてきますが、実はそれは単に腐敗を助長するだけの愚かな意見に過ぎないのです。

この腐敗問題を徹底的に改善しない限り、国会の審議などには応じられない、という国会運営も、当然成り立ち得るのです。

つまり日本人はもっと、政府の腐敗、政治家の腐敗問題に敏感になるべきなのです。日本人達が政治の腐敗に愚鈍である限りにおいて、日本に未来など絶対に訪れ得ないのです。

追伸:政治における「腐敗」の問題の重要性をしっかりと理解するためにも是非、ご一読ください。
『「ワクチン接種」は予定通りには絶対進まない ~菅長男接待に象徴される菅“腐敗”政権がまともに機能する事などあり得ない本質的理由~』
https://foomii.com/00178/2021022716431977161

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【藤井聡】菅長男接待問題は「菅政権の腐敗」を示している。これこそ、現在の日本における最大の問題である。への9件のコメント

  1. この世は既にあの世 より

    先生、日本国民自体が腐敗して人を舐めてますよ。

    取引先に行っても以前は一応コーヒーやお茶などを出してくれるのが慣例となっていたのですが、最近では自分だけ飲んで偉そうにしている馬鹿が増えました。何もコーヒーの件だけじゃありません。

    要するに馬鹿は人を人と思わず、客を客とは思っていませんね。馬鹿に限って上には媚へつらうんですよ。

    そういう舐めた輩には「お宅ら舐めとるでしょう」という言葉を添えて倍返しして損害を与える様にしております。

    馬鹿と付き合ってもいいことありませんから縁切りですね。

    心遣いも常識も無い国民が増えましたね。ところが馬鹿は子供みたいな言い訳だけはするんですよ。言い訳した途端にこちらが「そこまで文句言うならば、じゃあ警察でも行きましょうか?」と言うとビビッて逃げますよ。

    私は馬鹿で卑怯でビビリで腹黒い輩なんか同胞なんて思ってないですもんね。そんな輩に遠慮や下手に出る必要なんかありません。

    政治家に対しても同じですね。馬鹿な政治家は失業してもらうに限りますね。菅を総理大臣とは思ってませんし、自分より歳上だとも思っていません。ああ、コイツはただの馬鹿だな、としか思ってません。

    先ずは身の回りの調子に乗った馬鹿を相手にしないことから始めてます。まあ貧困者とか困っている人は極力話を聞いてあげたりしてますが、中小企業の会社役員だの社長だのボンボンだの、常識無い偉そうな輩には顔を真っ赤にさせるほど恥をかかせるのが私の趣味でございます。

    相手が文句だの賠償だのちらつかせて来たら「警察行く?」などと言えば何も言い返しては来ません。世の中には仕事もろくに出来ないのに腹黒く狡い輩の多いこと多いこと。

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      1. ホワホ より

        指弾してる自分自身が腐敗の象徴みたいですね
        そこまでおっしゃってるからには
        自身は日々自省しているのでしょう
        鏡なんか見ても無駄というのがよく解ります

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        1. ひぃ より

          ホワホ さま 他の方への返信を入れてしまいました。大変失礼致しました。

          削除も出来ないようなので捨て置いてください。

          失礼致しました。

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      1. ひぃ より

        嫌な思いをされたのですね。最近(というか10年前くらいから?)日本人の質が変わってきたなあと私も思います。

        でも、それってもしかしたら日本人ではなく在日朝鮮人なのかも?とも思います。

        でっかいポリコレ違反になるのであまり言えないのですが(^^;)私は職場で実害を受けているので言うのです。

        もちろん、朝鮮人の方の中にも立派な方はいます。でも、一般には、やはり日本人と朝鮮人は違うと感じることが多いです。

        ネトウヨの皆さんみたいに朝鮮人を人とも思わない扱いをするのには賛成できませんが、警戒する気持ちが私のなかにあります。

        この世様も、何か許しがたい常識違反を感じたら「こいつ日本人じゃないのか?」と疑ってみてください。

        本当に日本人じゃないこと、結構ありすから。

        戦後直後の在日一世からもう四世くらいまでが息づいている今の日本です。日本が変わったのも彼らの子孫が繁栄し、社会に影響を及ぼすようになったのも一因ではないかと考えております。

        長々と失礼致しました。

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  3. 何で安倍晋三の8年間に貴殿それ言わなかったの? より

    教授!
    内閣官房参与の時に何故それ声を大にして言わなかったの?
    政治の腐敗を貴殿が言う資格あると本気で思ってますか?
    安倍●せ!と普通の神経ならそう思いますがね!!!!!!!!!!!!!

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  4. 大和魂 より

    恐らくは上でコメントしている奴は安倍、菅政権の擁護者であり日本史を否定し、己の存在をも認識出来ない俯瞰した思考に乏しい愚か者。

    しかし藤井先生のご指摘はご尤もで、小泉純一郎政権以降から国内の社会状況は火を見るよりも明らかなように、間違い無く前安倍政権よりも比較にならない程で、人事からしても加藤官房長官を筆頭に茂木大臣やら河野大臣やら西村大臣やら梶山大臣やら二階幹事長と野田副幹事長の布陣は誰が観ても胡散臭い顔ぶれですよね。

    しかも肝心のコロナ関連を正当化する根拠が皆無なのに、それを傲慢にも正当化する菅政権の関係者たちの行動は、実際には天下と国民に向けての冒涜である背信行為は外道の極みですよ。

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  5. 麦粒 より

    総合的な分野に立ち入るのなら、その、頭の悪そうな文章を何とかしてからにしてほしいのだが・・・。

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  6. ひぃ より

    藤井先生の文章はそのままがいいです。親しみやすく平易な表現で本質が説明されているからです。世の中にはいかにも凄そうな文章のふりをして中身はすっからかんか間違いだらけの文章も多いです。そういうものに比べたら(比べるまでもないですが)藤井先生の文章は善意に溢れています。おかげで私のような者も今日本に起こっている問題を認識することができるわけです。感謝しかありません!

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