日本経済

2018年12月5日

【藤井聡】「リーマンショック級」の経済下落 ~2019年には消費増税の延期・凍結が「当前」の状況となる~

From 藤井聡(京都大学大学院教授)

 

新聞やテレビでは相変わらず、
消費増税は「確定」路線であるかのように
報道されていますが、
これまで何度も繰り返したように、
延期・凍結は当然ながらあり得る話。

そして、様々な「延期・凍結」シナリオの中でも、
最も自然なものは「リーマンショック級」の経済危機に対応するために、
延期・凍結を決断する、というもの。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20181029/

では一体何が「リーマンショック級」
なのでしょうか。

様々な解釈があり得ますが、
例えば、大和総研は、
来年予想されるいろいろな「景気低迷圧力」を合計すると、
リーマンショック級になる
というレポートを発表しています。
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/outlook/20181121_020458.pdf

いわば、「合わせ技一本!」
リーマンショック級だという話。

その中身を具体的に申し上げると、以下のようになります。

(リスクの項目)         (GDPの見込み下落率)
トランプ政権の迷走           0.6%
中国経済の想定以上の減速        0.9%
Brexitの悪影響による欧州経済の悪化   0.7%
中東の混乱等を背景とする原油高     0.4%
残業規制の強化             1.0%

これを全て合計すると、「-3.6%」

そして、リーマンショックのGDP成長率の下落は
「-3.7%」だったので、
来年はまさに「合わせ技一本」で、
リーマンショックに匹敵する経済被害が生ずる、という次第。

ただし、これに加えて、
「東京五輪の終焉」は確実に訪れ、
これが不況圧力をかけることも間違いありません。

しかも、2014年の「8%増税インパクト」が
未だに「残存」してもいます。

これらを考えると、
来年はリーマンショック以上の経済被害
生ずる可能性も考えられます。

もちろん、これらの内、
起こらないものもあるかも・・・しれません。

しかし、
仮にそれらのいくつかが起こらなかったとしても、
それでも合計すればリーマンショックに匹敵する
被害が生ずる可能性は、
十二分以上にあることは間違いありません。

そもそも、
トランプからの対日貿易圧力のあおりを受けて、
対米貿易が下落することはほぼ確実です。

米中貿易戦争には当面決着付きそうもありません。

ブレグジットの成否にかかわらず、
英国を中心に欧州経済が混乱を来すこともまた、
ほぼ避けられそうにありません。

さらに、アメリカがイランへの圧力を高めることとなり、
ホルムズ海峡周辺が混乱する可能性も、
極めて高い状況です。

これらの世界状況を踏まえれば、
大和総研の想定は、いずれもきわめて現実的
ものと言わざるを得ないのです。

しかも、それらのリスクが、
増税「まで」の間に起こらずとも、
秋の増税「後」に起こるだけでも、大問題です。

増税「前後」にこれらが起こる可能性を含めるなら、
「合わせ技一本」でリーマンショック級の
経済被害が生ずる可能性は、
現実的に極めて高い水準だと言わざるを得ないのです。

こう考えれば、来年2019年秋の消費増税は、
増税のタイミングとしては「最悪」だと
言わざるを得ない状況にあるわけです。

そして、そのリスクは、
増税延期・凍結の判断の前提条件とされる、
かねてより指摘されている
「リーマンショック級」
に達するものとなる可能性がきわめて高いのです。

政府・国会が、その眼を開き、
こうした状況をしっかりと認識した上で、
合理的で理性的な判断を下されんことを、
心から祈念いたしたいと思います。

追伸:
増税延期は確定したものではありません。
是非、別冊クライテリオンの
『消費増税を凍結せよ』
https://the-criterion.jp/backnumber/s01_201812/

並びに、拙著、
『消費増税10%が日本経済を破壊する』
http://ur0.biz/MCc2

をお読み頂きたいと思います。

追伸2:
「大阪万博」が決定しましたが、
これだけで大阪・関西の復活もデフレ脱却もあり得ません。
では一体、大阪、そして日本には今何が必要なのか・・・
この問題を考えるためにも是非、
12月8日(土)の大阪でのシンポジウム
『大阪で考える保守思想――日本の再生は大阪から始まる』
https://the-criterion.jp/osaka_symposium_2018/
ご参加ください。

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【藤井聡】「リーマンショック級」の経済下落 ~2019年には消費増税の延期・凍結が「当前」の状況となる~への4件のコメント

  1. たかゆき より

    参った?

    開始10秒で 
    腕挫10%固め もとい 十字固め

    もっとも 腕が折れるまで 参ったをしなかった

    剛の者も いらしたようですけど、、

    きっと 日本も 腕が折れるまで  参ったなんて

    言いません よね、、

    そんな ヤワちゃんじゃあ ないですから ♪

    返信

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  2. たかゆき より

    GAFA

    この世は カール・ハインリヒ・マルクスが
    予言した とおりに

    超巨大企業が 地球を席巻する時代と
    なりつつ ありますね。。。

    さすがに マルクスは 天災 もとい 天才 だ、、

    小生の 認める 三大人災

    それは キリスト マルクス そして
    アインシュタインの 

    JEWS かな ♪

    返信

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  3. 拓三 より

    それはそうと藤井はん。
    日本経済の背骨にあたる国土強靭化(公共事業)、骨抜きにされましたな。

    公共事業は日本国内だけでカネを回せる利点があったけど外資や移民などでその効果が駄々漏れになってもうた。財出までも外国資本に献上する売国奴政治。もっと言うなら災害対策、つまり日本人の命までも外資に献上。経済学なら円高圧力の緩和になるんかなw

    己のない奴隷思考は日本において永久に不滅ですな。

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