From 三橋貴明
【近況】
最近、中野剛志先生の新著「真説・企業論 ビジネススクールが教えない経営学」を拝読し、http://amzn.to/2rBisSx 改めて二つ思ったことがあるのですが、
一つ目は、
ROE(株主資本利益率)という指標は、イノベーションを止めるのみならず、文明を破壊する(あるいは「退化」させる)効果があるという点です。ROEを高めるためには、要するに「利益を増やし、自己資本を減らす」を追求すればいいわけです。
特に、短期的にROEを高めることを求められた経営者は、「人件費」「技術投資」「設備投資」といったイノベーションの源泉たる投資(人件費も「人材投資」という投資です)を減らし、さらには自社株買いで自己資本を小さくするしかないわけです。
投資に回るおカネが減らされ、自社株買いが増えれば、確かにROEは高まり、株主は儲かります。とはいえ、将来のための「投資」を減らしている以上、企業のイノベーティブな活動は停滞せざるを得ません。結果、人類の文明は進化を止め、退化の方向に向かわざるを得ないでしょう。
二つ目は、
イノベーションの源泉は、結局のところ「働き続ける生産者」にあるという点です。その業界で働いたこともない人が、「画期的なイノベーション」などできるはずがないのです。
ROE重視により、貴重な技術を持つ人材を喪失してしまったとして、
「人材が必要ならば、買ってくればいい」
「技術が必要ならば、買ってくればいい」
などとやったところで、短期的には利益が増えるかも知れませんが、長期的には衰退せざるを得ない。
そう考えたとき、人材を「囲い込む」効果がある(あった)日本の終身雇用制度は、むしろイノベーションの牽引役ではなかったのかと考えるのです。
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◆週刊実話 連載「三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』」 第222回「グローバリズムと仏韓大統領選挙」
なお、週刊実話の連載は、以下で(二週遅れで)お読み頂くことが可能です。
http://wjn.jp/article/category/4/
◆有料メルマガ 週刊三橋貴明 Vol417 イノベーションの源泉
http://www.mag2.com/m/P0007991.html
生産性を向上させるという意味におけるイノベーションの源泉とは、何なのか? 落ち着いて考えてみれば、誰でもわかります。
◆メディア出演
5月24日(水) 6時から「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
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5月20日(土) チャンネル桜「日本よ、今…「闘論!倒論!討論!」 種子法廃止は日本農業を滅ぼすのか?」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1655
上記、討論番組の「予習」ということで、昨日のFront Japan 桜では、モンサント法ならぬ種子法廃止(及び農業競争力強化支援法)について取り上げました。
5月19日(金) チャンネル桜【Front Japan 桜】種子法廃止の恐怖 / 日本庭園に見るモンサント種の元[桜H29/5/19]に出演しました。
https://youtu.be/nzxDQzu6l3Y
http://www.nicovideo.jp/watch/1495181862
今回、ご一緒させて頂いたキャスターは、SAYAさん。
◆三橋経済塾
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◆チャンネルAJER
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[三橋実況中継]イノベーションの牽引役への4件のコメント
2017年5月21日 11:30 AM
1%の金持ちと99%の奴隷、1%の人間と99%の「人でなし」がグローバルスタンダードの正体では。国は石を囲って玉に磨き上げて国民へと育てる、だが囲いの外の石は差別される、差別の無い社会とは全てを平等に差別する社会のことでは。消費者世界市民にとって国とは自分に都合良く(経済合理性の「合」か)乗り換え可能なもので権利だけを主張出来るのだろう、ただし義務も義理も無いので次の世代に引き継ぐ道理も無い。
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2017年5月21日 12:38 PM
20年ぐらい前かなあ、ウチの旦那が会社から帰って来てエラそうに、「これからは『ロエ』が大事なんや」と鼻ふくらまして言うてたのんが懐かしいわ(笑)。会社の研修で、これからはグローバルスタンダードやないと太刀打ちでけへんねや、てゆうてたけど、また揺り戻してきたみたいやね。結局終身雇用制が良かったんや、なんて。
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2017年5月21日 5:07 PM
ある人が言っていたのですが、「駄目なら元に戻せばいい」と。
しかしこの言説は極めて欺瞞的な台詞であると言えるでしょう。
護送船団方式、終身雇用、ひいては家族制度などが日本社会の安定にどれほど寄与してきたか。
「豊洲に移転しようという同意」に関しても同様です。
束ねたものをバラバラにするのは勝手に起きますが、バラバラのものを束ねるのは相当な手間と根気がいるわけです。
そうした制度を破壊した人間に「何故壊したの?」と聞いても、その人はもう死んでいるか、「なんとなくだ」としか答えないでしょう。
これから私は、壊れたものを見て「あーこれも壊れちゃった(壊しちゃった)のか」と思うと思います。
更なる破壊者に対する対応策を考えたいと思います。
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2017年5月22日 11:41 AM
イノベーションの対義語はオペレーションだそうです。
(元ホンダ小林三郎、サブちゃんによると)
オペレーションとは何か。
効率、売り上げ、市場データなど、客観視でき、操作可能なものに取り組むのがオペレーションであり、これは業務を安全運転するためにどの産業でも当然な必須で基盤な行為であります。
でも、それに依存していると、世の中は今と変わらない。今分かってる世界を安全で確実に運行するのがオペレーションです。
イノベーションとは結果として今の世の中の仕組みを大なり小なり変えるものです。人の動き、社会の仕組みやルールまで。結果的にモノの動きも変わるでしょう。そういった根本的な変化は、従来のルールやデータの延長線上には無いのです。
延長線上にあるものを「改善」といいます。
ならばイノベーションの取り組みとはどのようなものか。
説明のつかない「強い想い」とnearly equalでしょう。
これは会議で、合議で、民主的投票で決まるものではありません。トップ経営者一人のカンによる支持ぐらいでやっと生き残る、現場の若者からの野蛮な賭けでしょう。
そのようなチャレンジを許容するためには、無駄なチャレンジを許容する豊かな稼ぎ頭がいります。つまり会社の95%はオペレーションを追求して必死に儲け、その余裕でイノベーションという、ぁゃしぃ取り組みをごく少数において、可能にするのです。
そのためには会社として一体感、トップの判断が必要です。
理屈や議論や民主的解決の世界からいったん出るということです。
録音できないテープレコーダーを販売するバカが大当たりするのです(ウォークマン)。
車内で火薬を爆発させる安全装置を商品化するオカシイ人が歴史に残るのです(エアバッグ)
いまのような世知辛い、4半期で儲けを確認する??理屈至上主義の会社運営ではイノベーションなど出てこないのは当たり前なのです。見栄えのいいベンチャーが失敗するのもそんなところでしょう。パイオニアと社会不適合者は紙一重かもしれません。むろん全く違いますが。
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