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2015年5月6日

【佐藤健志】ネズミが通貨の単位になる!

From 佐藤健志

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●●憲法9条は日本の誇りなのか? 国家の危機の原因か?
月刊三橋最新号のテーマは「激論!憲法9条〜国家の危機に備えるために」

https://www.youtube.com/watch?v=4OQ4DnbgVS0&feature=youtu.be

※※フルバージョンが聞けるのは、5/10までです。

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前回(ただし先週はお休みしたので先々週)の記事「スーパーリッチが床屋に行くとき」では、デヴィッド・クローネンバーグ監督の映画『コズモポリス』(2012年)を題材として、

アイデンティティの基盤となる共同体を希求するかどうかが、「ビジネス」を「経済」に昇華させる鍵である

ことを論じました。

しかるに『コズモポリス』には、現代における経済(または経世済民)を考えるうえで、ほかにも注目すべき点があります。

簡単におさらいしておけば、同作品は若くしてウォール街のスーパーリッチとなった男エリック・パッカーが、子供時代によく通った床屋で散髪したくなり、専用のリムジンで店に向かう話。

ところが道路は大渋滞しているうえ、社会的格差の拡大に抗議する人々が暴動じみたデモを繰り広げる。
しかもパッカーは人民元(原作小説では日本円)への投資に失敗、一日のうちに全財産を失うハメに。
のみならず、彼の会社をクビになったベノという男が、パッカーの命を付け狙っているのです!

つまりはグローバル資本主義にたいする警告的な寓話なのですが、今回注目したいのは、部下の通貨アナリストであるマイケル・チンという人物と、パッカーがリムジンの中で交わす会話。
彼はふいに、こんなことを言い出すんですね。

「こういう詩を読んだことがある。ネズミっていうのが通貨の単位になるっていう詩。(中略)世界経済に衝撃を与えるだろうな」
(ドン・デリーロ『コズモポリス』、上岡伸雄訳、新潮文庫、2013年、38ページ)

パッカーとチンはこのあと、
「今日の為替の終値、ネズミは1ユーロ安」
ロシアのネズミが切り下げられるのではないかという懸念が広がっています」
「ロシアの妊娠したネズミが大量に売られている」
「アメリカがネズミ本位制を制定」
「アメリカドルはネズミに交換可能」
「世界的な健康の脅威と言うべき死んだネズミの蓄積」
などと言い続ける。
(同、39ページ)

問題の詩は、ポーランドの詩人にして劇作家のズビグニェフ・ヘルベルトが本当に発表したもの。
ドン・デリーロは『コズモポリス』の冒頭でも、直接的な引用の形でこのフレーズを掲げました。
ちなみにこちらは、「ネズミが通貨の単位となった」と過去形になっています。

さらに小説には、生きたネズミを持った男たちがレストランに乱入、壁に投げつける場面が。
格差拡大への抗議デモにおいても、ネズミのコスプレをした連中が、巨大なネズミの張りぼてを、おみこしのごとく担ぎ出す。
発泡スチロール製の張りぼてで、全長6メートルなのだとか。

・・・と、またもやシュールな展開ですが、じつはこれ、カネというものにたいする痛烈な風刺。

三橋貴明さんもブログで書いていましたが(「おカネの話(後編)」、2015年4月6日付)、カネはそれ自体として価値を持っているわけではありません。
私なりに定義するならば、カネとは
「〈特定の額面に相当する価値を持った財やサービスを入手する権利〉の存在を、象徴的に体現したモノ」
です。

ですから、
「おカネとは『モノやサービスの購入』ができて、初めて価値を持つわけです。モノやサービスが生産されなければ、おカネには全く価値がありません」(同ブログより)
という話になる。

存在しないモノ(=財)やサービスを入手することは不可能。
よって、それらを入手する権利があったところで、当の権利を行使する余地がない。
行使する余地のない権利をいくら与えられても、意味がないのは当然でしょう。

財やサービスは具体的な価値を持っているもの。
いいかえれば、経世済民に役立ちます。
経世済民に逆効果となりかねない財やサービスもありますが(たとえば麻薬)、それらの流通は通常、政府によって抑制される。

他方、権利とは抽象概念です。
そしてカネは、その抽象概念を象徴化したもの。
「象徴化された抽象概念」ですから、使い方次第で経世済民に役立つ場合もあれば、経世済民を阻害する場合もある。

ただし「(基本的には)経世済民に役立つもの」という図式を確立しておかないかぎり、カネの意義が揺らいでしまう。
ですからカネは、それ自体として価値があるかのようなイメージに仕立てあげられます。

貨幣鋳造に際し、金や銀などの貴金属が使われるのはもとより、紙幣に用いられる肖像も、いわゆる偉人のものばかり。
売国奴や連続殺人犯の肖像をあしらった紙幣が発行されたらどうなるか、ちょっと想像してみて下さい。

しかし「カネ=経世済民に役立つもの」の図式は、今や少なからず揺らいでいます。
とくに金融資本主義が巨大化し、グローバル資本主義にまでいたった現在は、下手をすると「カネ=経世済民の敵」という話にもなりかねない。

『コズモポリス』における「ネズミ本位制」のエピソードは、この点を鋭く突いたもの。
今の時代、カネが経世済民を多分に阻害しているとすれば、カネのイメージを悪くするほうが、世のため人のためなのです。
パラドックスにはパラドックスで立ち向かえ! という話。

けれども最大のパラドックスは、経世済民に反する形でカネを使ってばかりいるエリック・パッカーが、この話を面白がること。
なぜかはお分かりですね?

自己目的化したマネーゲームにひたっているパッカーにとって、カネにそれ自体としての価値がないことは自明なのです。
彼にしてみれば、カネなどコンピュータ画面に出てくる数字でしかない。
単位が円だろうがドルだろうが、はたまたネズミだろうが知ったことじゃない。
むしろ「ネズミ本位制」になったほうが、カネの「化けの皮」が剥(は)がれて愉快だと思ったのではないでしょうか?

ではでは♪

PS
憲法9条はなぜ、「国家の危機」の原因なのか?

「憲法9条があるから、日本は平和なんだ」と考え方って、
よく考えると、根本的におかしいと思いません?
https://www.youtube.com/watch?v=4OQ4DnbgVS0&feature=youtu.be

PPS
↑この解説のフルバージョンが聞けるのは、5/10までです。
まだの人は急いでください。

<佐藤健志からのお知らせ>
1)パラドックスと言えばこの一冊。
三橋貴明さんも「読んで『これだ!』と思った」と絶賛!
『コズモポリス』の「ネズミ本位制」ではありませんが、「毒をもって毒を制する、愛国者のためのワクチン」という趣旨のコメントもいただいています。

「愛国のパラドックス 『右か左か』の時代は終わった」(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
http://amzn.to/1CbFYXj(電子版)

2)演劇はつねに国の縮図。
わが国を代表する劇団である四季の歴史は、そのまま戦後日本の本質を浮き彫りにしている。
日本人による優れたストレートプレイ(普通の芝居)の上演をめざしていた四季が、もっぱら海外の大型ミュージカルで知られるようになったのはなぜなのか?
グローバリズムや新自由主義への警告は、舞台からも発せられている!

KADOKAWAのメルマガ「踊る天下国家」最新号、好評配信中です。
「劇団四季に見る戦後史〜繁栄とアイデンティティのジレンマ」。
1時間20分を超える音声ファイルつきです。
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar774964

バックナンバーもどうぞ。
どれも音声ファイルがついています。
「経済と皮下脂肪のつながり〜やせすぎも太りすぎも『デフレ』だった!」
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar765958
「<お花畑>と全体主義〜自民党大会から見えてくるもの」。
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar754163
「さらば、愛の行為よ〜日本で男女関係は成り立つか」
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar736635
「アベノミクスの成否はゴジラに聞け!」
http://ch.nicovideo.jp/k-chokuron/blomaga/ar691866

3)「表現者」60号(2015年5月号、MXエンターテインメント)に、「保守派の世界観はリアルか」が掲載されました。

4)戦後日本人が直面した「経世済民」をめぐるジレンマについては、この本もどうぞ。
http://amzn.to/1lXtYQM

5)「金銭の扱いに強いのは良いことである。ただし、しっかりした秩序が基盤になければ話にならない。秩序なくして繁栄はなく、繁栄があってこそ金融も効果を発揮する」(306ページ)
225年前の警告は、現在も生き続けています。
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)

6)そして、ブログとツイッターはこちらです。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

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  1. 森谷 栄二郎 より

    問題提起した記事には「賛成」「どちらでもない」「反対」を投票するアンケートを附属させて、その結果を公表して欲しい。

  2. robin より

    良い事をすると相手は感謝・負い目(恩返し・劣等感)を感じる。負い目は負債、債務は義務や道徳、債権は権利で権力が背景に必要。法と権力(暴力)で治める国もあれば法と道徳(幻想)で治める国もありますね、後者は特殊な国。不信は最大のコスト。

  3. たかゆき より

    カネはババ♪カネはババと思える方は マトモ思えない方は バカ とぼくは 認識しております。

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