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2015年1月22日

【三橋貴明】安全保障から目を背け続けたツケ

From 三橋貴明@ブログ http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/

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●月刊三橋最新号のテーマは「フランス経済」。

「ユーロという罠」に落ちた大国の選択とは?
フランスに今が分かれば、日本が見える!

https://www.youtube.com/watch?v=eQUSqYvie2s

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三橋経済塾第四期「経済時事」、開講しました。
http://www.mitsuhashi-keizaijuku.jp/

日曜日は三橋経済塾第四期「経済時事」第一回講義でございました。「経済時事」なので、基本的には時事ネタを絡めます。
昨日はスイス、日本、ギリシャを主に取り上げました。次回のテーマは、一週間ほど前に決まります。
インターネット受講の方は、「塾生コンテンツ」に一週間ほどでアップされますので、しばらくお待ちくださいませ。
第一回はケーススタディでしたが、二回目以降はゲスト講師にお話しいただきます。第二回のゲスト講師は「評論家」の中野剛志先生です。
http://www.mitsuhashi-keizaijuku.jp/

さて、イスラム国が日本人二名を人質に、2億ドルの身代金を要求しています。

『「イスラム国」か、日本人2人の殺害予告映像
http://www.yomiuri.co.jp/world/20150120-OYT1T50090.html

イスラム過激派組織「イスラム国」が公開したとみられるビデオ映像が20日、インターネット上に流れ、人質にとった日本人らしき男性2人について、日本政府に計2億ドル(約236億円)の身代金を要求し、72時間以内に支払わなければ2人を殺害すると警告した。
2人は、昨年8月にシリアでイスラム国に拘束された湯川遥菜はるなさん(42)(千葉市花見川区)と、ジャーナリストの後藤健二さん(47)(仙台市出身)の可能性が高い。映像に出てくる男は日本政府を批判しており、イスラム国だとすれば日本を初めて明確に標的にしたことになる。(中略)
男は「日本の首相よ。お前はイスラム国に対する十字軍に進んで参加した。日本政府はイスラム国に対する戦いに2億ドルを支払うという愚かな決断をした。この2人を救うために2億ドル(の身代金)を支払う賢い選択を政府にさせるよう、日本国民が政府に圧力をかける猶予は72時間だ。さもなければ、このナイフがお前たちの悪夢となるだろう」などと警告している。(中略)
冒頭には、テロ対策支援を表明する安倍首相の映像も流れた。中東歴訪中の安倍首相がイスラム国対応で避難民支援などに2億ドルの資金援助を表明したことを受けた報復とみられる。
安倍首相は20日、訪問先のイスラエルで記者会見し、「人命を盾にとって脅迫することは許し難いテロ行為で強い憤りを覚える。2人に危害を加えないよう、直ちに解放するよう、強く要求する」と非難した。
その上で、「今後も国際社会と連携し、地域の平和と安定のために一層貢献していく。この方針は揺るぎない方針であり、変えることはない」と断言。中山外務副大臣をヨルダンに急きょ派遣して情報収集を進めるほかパレスチナ自治政府のアッバス議長とも協議して人質解放に全力を尽くす考えを示した。』

安倍総理がイスラエルを訪問し、イスラム国に絡み「避難民支援」「インフラ整備」に2億ドルの資金援助を表明した直後に、声明命の発表。タイミングを見計らっていたようです。

2億ドルを支払った場合、イスラム国は「日本の資金」で銃器を増やし、より多くの人々を殺すことになるでしょう。逆に、日本が支払いを拒否した場合、イスラム国はこれまでの「実績」から考えると、人質を殺害する可能性が高いわけです。

これが、現実の世界です。
日本側は、支援2億ドルについて、あくまで、
「避難民支援と、インフラ整備等、人道的な目的の支出」
と、説明し、「理解」を求めるでしょうが、そんなことはイスラム国側は百も承知でしょう。

イスラム国は、センセーショナルなアピールを繰り返し、世界的に「人材」や「資金」を集めるという手段を採っています。すなわち「理」が通じる相手ではありません。

今回の事件を受け、わたくしは北朝鮮の拉致問題を思い起こしてしまいました。結局のところ、北朝鮮やイスラム国といった「理」が通じない国から邦人を救うには、「軍事力」が必要なのです。とはいえ、日本は憲法で軍事力を行使できません。

軍事力を行使できない以上、「想定外の非常事態」が起きたとき、同じ国民を助けることが困難です。これが、戦前の日本ならば、どうだったでしょうか。

同じタイミングで、ウクライナで再び戦闘が激化しています。

『ウクライナ東部 市民に犠牲広がる
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150121/k10014841131000.html

ウクライナ東部では、軍事戦略上重要とされるドネツクの空港周辺で政府軍と親ロシア派の激しい戦闘が続き、20日には砲撃によって住民30人以上が死傷するなど、市民の間にも犠牲が広がっています。
ウクライナ東部では、今月に入って政府軍と親ロシア派の戦闘が再び激しくなり、軍事戦略上重要とされるドネツクの空港を巡る攻防が続いています
戦闘は空港の周辺にまで及び、親ロシア派によりますと、中心都市ドネツクでは住宅や商店、病院なども砲撃の被害を受け、20日には住民5人が死亡し26人がけがをしたということです。
一方、ウクライナ政府側によりますと、19日にも戦闘によって親ロシア派が掌握する地区を含むドネツク州全体で住民と軍人合わせて6人が死亡し、55人がけがをして病院に運ばれたとしています。(後略)』

グローバリゼーションは、確固たる覇権国の下で各国が「ルール」を守り、イスラム国やウクライナのような事態が「起きない」という、平時を前提にしたシステムです。アメリカの覇権力が衰え始めたのに合わせ、今回のグローバリゼーションは崩壊過程に入ったように思えてならないのです。
と言いますか、そもそも日本国は北朝鮮に国民を拉致され、残された家族が塗炭の苦しみを味わい続けてきました。本当は、日本国はすでに「非常時」だったにも関わらず、正面から向き合うことなく、「今は平時である」と自分たちを納得させてきたに過ぎないのかも知れません。

いずれにせよ、日本国民は今、「安全保障」「国家の役割」を問い直さなければならないと思います。非常時に「国民を外国から救うことができない国家」は、本当に国家と呼ぶに値するのでしょうか。
この手の「安全保障」から目を背けつづけた70年のツケを、今、日本国民が払っているように思えてならないのです。ならば、どうするべきなのか。を、国民一人一人が真剣に考えなければなりません。

本エントリーで「安全保障」について改めて考えて下さり、
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【三橋貴明】安全保障から目を背け続けたツケへの4件のコメント

  1. ななし より

    結局、力こそが主権なんですよね。力を示さないと「話の通じない連中」から損害を被る訳です。相手をビビらせる事が大事なんですね。ISIS脅迫騒動を見て、改めてそう思いました。

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  2. Utti より

    私の見方ですが(かの馬渕元大使も同様だと思いますが)・イスラム国も9.11も(たぶんパリのテロも)誰が得をするかと言えば、「世界を混乱に陥れて新しい世界秩序を作りたい人達(定期的に武器で儲けたい人達含む)」・昨今の原油安も、アンチグローバリストであるプーチンつぶし・今回の日本人身代金の件は、プーチンと仲良しの日本政府への脅し最悪の場合、戦争など世界秩序破壊→「1%支配による1%のための世界完成」という流れだろう。では、どうすればいいのか。多くの人が知って、ざわつく事も有効だと思う。

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  3. robin より

    テロに譲歩すれば新たなテロを生むだけ。人命は地球よりも重いと言った人もいたが、普通に地球が無ければ人は生きられないだろう。しかし中には本気で信じてる人もいれば水戸黄門の印籠の如く普遍的人権を掲げる人もいる。同じく自由・平等を掲げれば無条件でひれ伏すのが単純な価値観しか持ってない人達だろうか(これいくら?というモノサシしか持ってない人とか)。自由とか平等は歴史文化を背景に同国内の権力によって保障されるものだろう。日本人と中国人は人として平等かもしれないが、国民としては不平等だし、礼も誠意も通じない相手には永遠に譲歩し続けるしかない(そもそも国と思ってないが)。日本の「おもてなし」文化はもともと謙譲の心を持つ日本人同士に通じるものだと思うが、無条件にもてなせば自国の文化を毀損してしまう。

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  4. 売国ずばっ!奴(暇人:羽野克之) より

     脱輪してたら御了承願います。考えると昨今の農業改革(根本は民営化思考の崇拝では?)って、現在の金融株式制度のままの中では外資系に喰われれば、自国の食料自給率(元から低いのでしょうけど)を尚更下げるだけではないのでしょうか?。とにかく民営化を進めらてきた世代の思考のままの上の政策としか思えません。 ましてデフレ状況は政府が需要を造らなければ脱し得ないと言う意識を全く持たない人達によって、意味を取り違えた成長、特区や規制破壊(構造改革的なモノ)で更に安全保障は軍事、食料的以外にも気づかないまま壊されるのでは?これじゃ何もかも奴隷国家的になっている気がしてと思いました。 そんなことを言えるわけもない自分の生活も日本離れしているのに失礼しました。

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