From 三橋貴明
————————————————————–
●●マスコミが報じない不都合な真実とは
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php
————————————————————–
【今週のNewsピックアップ】
●マスコミが絶対に伝えない 「原発ゼロ」の真実
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11888085012.html
●続 マスコミが絶対に伝えない 「原発ゼロ」の真実
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11888582470.html
安全保障の強化とは、なかなか難しい話です。ここでいう「安全保障」とは、もちろん軍事面以外の安全保障も絡んでいます。特に、安全保障強化と生産性向上を共に追求しようとした場合、困難さが増します。
例えば、食料安全保障。
我が国の国民の食料安全保障を確立するためには、当然ながら自給率を高めなければなりません。自給率を高めるには、農産業に従事している「日本国民の生産者」に、日本国内で農業を営んで頂かなければならないわけです。日本の農産業が消滅すると、日本国民の食料安全保障は「ゼロ」になってしまいます。
だからと言って、政府がガチガチの規制で農業を保護しようとすると、生産性は向上しません。生産性の向上を達成するためには、やはりある程度の市場競争は不可欠なのです。
現在の日本は、穀物自給率が30%台と極めて低いため、「食料安全保障が確立されている」とは、お世辞にも言えない状況です。アメリカのブッシュ元大統領は、現役大統領時代に自国の農業関係者に対し、
「食料自給はナショナル・セキュリテイの問題だ。皆さんのおかげでそれが常に保たれている米国はなんとありがたいことか。それにひきかえ、食料自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険にさらされている国だ」
と演説していましたが、「まことに仰る通り!」としか言いようがありません。「食料自給できない国」がナショナル・セキュリテイ、すなわち国家としての安全保障を確立することなど不可能です。(もっとも、現在の日本は米の自給率だけは100%を超えていますが)
食料安全保障の強化と、生産性の向上を同時に達成したい場合、
「農業は市場原理に任せるべき」
あるいは、
「農業は国家が保護すべき」
といった単純論、極論は、共に通用しません。市場競争は確かに生産性を向上させますが、敗者を生み出すのは確かなのです。国内はともかく、グローバルに日本の農家が米豪などの農業大国と競争し、次々に廃業していくと、当たり前ですが食料自給率が下がります。
あるいは、農業を「株式会社」に全面的に任せた場合、これまた別の問題が生じます。何しろ、株式会社は利益を出さなければなりません。利益が出ない場合、企業は「農業から撤退する」という決断をする可能性があります。特に、「農業株式会社」が資本的に外資に支配されていたとなると、尚更です。
外国資本が入った農業株式会社が日本での市場支配力を強め(=寡占化し)、グローバル市場で競争しようとしたものの、勝てない。ならば、日本における「生産拠点」を全廃。などとやられた日には、日本国民の食料安全保障は危機に瀕してしまいます。
逆に、ソ連方式で「国営農業」などとやると、何しろ競争がないわけですから、生産性は向上しません。下手をすると、国内農業が外国から完璧に保護されているにも関わらず、国民が食料不足で苦しむ事態に陥りかねないのです(旧共産圏では、結構、陥っていました)。
というわけで、過去の日本国民は、安全保障強化と生産性向上を両立すべく、様々なシステムを生み出してきました。その一つに「農協」があるわけですが、食料安全保障と密接に関連がある分野にまで「株式会社化」という利益追求の理論を適用しようとする安倍政権の農政改革は、やはり乱暴だと思うのです(相当にトーンダウンはしましたが)。利益追求も良いですが、同時に「食料安全保障の強化」の議論も並行して行われなければならないはずですが、例により全く聞こえてきません。
土木、建設分野で「安全保障強化」と「生産性向上」の双方を実現するために編み出された「過去の日本人の知恵」が、指名競争入札と談合でした。ご存知の通り、我が国は政治もマスコミも国民も、寄ってたかって談合や指名競争入札を叩き、公共事業分野に「市場競争」が導入されていきます。結果的に、13万の企業が倒産・廃業し、我が国は土建小国化してしまいます。結果、土木、建設分野の安全保障は間違いなく弱体化してしまいました。
電力サービスにおける「地域独占」や「包括原価方式」も、ほぼ同じです。
「国民に電気を安定的に、安価に、ユニバーサルに(分け隔てなく)届ける」
という目標を達成するために、過去の日本人が編み出した「知恵」が、今、電力自由化の名の下で壊されようとしています。
安全保障強化と、生産性向上を、どのように同時に達成するのか。難しい課題です。
両者がほぼトレードオフの関係にある以上、政治家や官僚は知恵を絞らなければなりません。それが面倒くさい人たちが、かつて談合や指名競争入札を叩き、今、農政改革や電力自由化を叫んでいます。彼ら、市場主義や自由化で「全てが巧く行く」かのごとき主張を展開している人たちは、国民を欺瞞で欺く嘘つきである上に、不真面目だと思うのです。
PS
『マスコミが絶対に伝えない 「原発ゼロ」の真実』はこちらで。
http://amzn.to/1po2F1H
PPS
マスコミが報じない不都合な真実とは
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php
【三橋貴明】「原発ゼロ」の真実への1件のコメント
2014年7月7日 7:55 AM
食糧安全保障と生産性の議論、三橋先生のお考えが正しいと思います。日本の先人達が残した「談合制度」は問題も含みますが復活するべきです。又、諸処の街がシャッター商店街となっている現状を思うに、新自由主義者達が画策した大店法廃止は災いの根源です。いわゆる大店法を復活するべきです。
コメントに返信する
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です
コメントを残す
メールアドレスが公開されることはありません。
* が付いている欄は必須項目です