FROM 東田剛
安倍内閣は、現時点であり得る選択肢の中でベストだと思います。しかし、だからと言って、その方針が全部支持できるわけではありません。
報道によれば、経済財政諮問会議に伊藤元重氏と高橋進氏が、産業競争力会議には竹中平蔵氏が委員として選ばれたそうですが、三人とも新自由主義者で、熱心なTPP推進論者です。
特に、竹中平蔵氏は、「失われた二十年」をもたらし、数多くの失業者と自殺者を出し、政治を破壊した構造改革の主犯格です。
なぜ、その彼らを登用したのか。それは、安倍内閣もまた、構造改革、とりわけTPPを進めるつもりだからでしょう。
郵政民営化が典型的ですが、経済財政諮問会議は、党の反対勢力を抑え、内閣主導で構造改革を進めるための装置です。
経済財政諮問会議の民間議員は、改革派官僚が下書きした構造改革の要望である「民間議員ペーパー」を連名で出します。これで中立な民間人を装い、馬鹿なマスコミを利用して、「民間の改革派」vs「自民党の抵抗勢力」という図式を演出し、構造改革を進めるのです。
予告しておきますが、そのうち、TPP早期参加を求める「民間議員ペーパー」が出されるでしょう。「発送電分離」とも書いてあるかもしれません。
注)発送電分離についての東谷暁先生の分かりやすい動画
http://www.mxtv.co.jp/nishibe/archive.php
林芳正農水大臣というのも、TPP推進の布石でしょう。この人事は、先の総裁選に立候補した林氏が、自民党の次世代のリーダーにふさわしいか否かの試金石と言われていますが、安倍内閣がTPPに否定的なら、農水大臣のポストが試金石になるはずがありません。
谷内正太郎氏の内閣官房参与就任もTPPのためでしょう。藤井聡先生も参与に就任したので安心している方がおられますが、藤井先生だって国土強靭化という大事なお仕事があるので、何でもかんでも、できるわけではありません。
伊藤氏や竹中氏をアベノミクスに転向させ、マスコミ対策として使うだけだという見方は、甘いですね。
アベノミクスなど、所詮は、金融緩和と積極財政に過ぎません。もちろん、思想的に深く考えれば、アベノミクスの本質は、新自由主義やグローバリズムと反するもののはずです。しかし、彼らが深く考えるはずがない。「日本に必要なのは、金融緩和、積極財政、構造改革、そしてTPPだ」と平気で言えるのです。
もしそれが安倍総理の経済政策の方針だとしたら、総理も深く考えておられないということでしょう。第一次安倍内閣から六年、政権を失ってから三年も時間があったというのに、結局、金融緩和と公共投資の必要性しか、理解できなかったのだとしたら、悲しいことです。
それでも、安倍内閣は、現在の日本における最善の選択肢なのです。これが、今の日本という国の限界です。
「安倍内閣がベストだと思うなら、批判しないで応援しろよ!」と思う方がおられるかもしれませんが、そういう考え方は間違っています。
安倍内閣しかないからこそ、他に選択肢がないからこそ、ここで間違ったことをされては困るのです。そして、過ちを改めてもらいたければ、批判しなければなりません。批判というのは、敵だけではなく、味方に対してもするものなのです。忠臣たればこそ、諫言しなければなりません。
まあ、日本は、二十年も構造改革などという馬鹿をやり続けた国です。そう簡単には治らないことは、覚悟しておいた方がよさそうです。
やっと積極財政と国土強靭化をやるところまで来たのですから、ここでくじけずに、これから二十年かけてでも、日本を取り戻していきましょう。
PS
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「欧米没落!日中激突!異能の官僚が描く壮大な新国家戦略の全貌」を知りたければ、
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安倍政権をむしばむ改革派官僚の正体を知りたければ、
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【東田剛】バカな失敗から立ち直るためにへの4件のコメント
2013年1月2日 5:31 AM
「安倍内閣しかないからこそ、他に選択肢がないからこそ、ここで間違ったことをされては困るのです。」という東田さんの言葉は、まさにその通りです。安倍総理がTPP交渉に参加表明したことで、TPP反対の声が一気に封じられたような気がします。はじめから日本にはTPPに入るしか選択肢がなかったのだという人さえいます。しかし、安倍総理を批判することがタブーとなってしまっている状態は、非常にまずいと思います。安倍総理の交渉力があれば日本は大丈夫と、何の根拠もなく信じることは、とても危険だと思います。政治は信仰ではないのです。政治は事実の積み重ねです。私が一番不安に思っているのは、安倍総理がTPPに対してあまりにも警戒感が無いことです。どうやら本気でアメリカと対等にルール作りができると思っておられるようです。1990年代以降、日本の経済がおかしくなったのは、アメリカの内政干渉による法改正があったからだと思います。商法や大店法の改正や会計制度の改正がその典型でしょう。今度は民放も改正されるということですが、これもアメリカからの何らかの外圧があったのではないでしょうか?TPPに入っていない状態で、すでにアメリカの外圧で日本に不利な制度に変えさせられているのに、TPP入ってしまうとどうなるのでしょうか?農業と国民皆保険さえ守ることができれば、それで国益を守ることができたというのであれば、それは考えが甘すぎると思います。安倍総理は歴代総理の中では最も私心のない素晴らしい政治家だとは思います。しかし、私心がないだけに純粋にTPPのバラ色の未来を信じて日本を泥沼に引きずり込みやしまいかと、とても心配しています。
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2013年1月3日 12:42 PM
林農林水産大臣個人はTPPに反対を表明しておられます。念のため。ソースは「JA全中プレスリリース」の「TPP交渉参加反対に関する国会請願の紹介議員一覧」です。http://www.zenchu-ja.or.jp/release/pdf/1319543828.pdf
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2013年1月4日 11:03 AM
東田先生、いつもありがとうございます。鋭い視点からの考察は大変勉強になります。また、東田先生のお言葉には日本人としての魂が込められており、だから琴線を響かせるのだと思います。安倍さんは、中野さんや藤井先生の意見を直接お聴きになられたのですから、思いは同じはずだと思っておりました。しかし、竹中氏の起用などを知り、最近、少々不安を覚えつつありました。安倍さんが国土強靭化を採用するなら、デフレ脱却を目指すなら、TPPは蹴らなければならないはずですよね。もしそれが理解なされていないとすれば、大変なことです。藤井先生はある意味、参与に就任されたことで、TPPに関しての言動を封じ込められてしまったのではないかとの不安を拭えません(安倍さんが意図したものではなく、結果として)個人の力に如何ほどの効があるかは疑問ではありますが、安倍さんや自民党のFBで、直にお願いをしたいと思います。同時に自分の周囲にも微力ながらも訴え、TPP参加を阻止すべく努力して参ります。代議士にもメールします。他に出来そうなことがありましたら教えていただければ幸いです。
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2013年1月6日 7:54 AM
今回の人事で登用された何人かのお名前を知って心底がっかりしました。うすうすわかってはいましたが、安部晋三政権のお考えの方向が現れたわけです。金(経済)のことは、右であれ左であれ、お考えの方向(価値観)がどうであれ、国がなすべき最低限の政策はそう変らないものです。安部政権はそこはなすべきことをし始めています。OKです。TPPも金(経済)の問題ではあるものの、それ以上の国の在り様にかかわることです。目指す方向性、具体的政策の根っこにある大事なもの、価値観、国の在り様、人の在り様、思想について、安部政権が新自由主義的であることが表に出てきました。新自由主義まっぴらごめんです。人の本性が利己的経済人であることを、日本の社会にことさら強要され洗脳されたくありません。弱肉強食で自分たちが生き残ること、弱者から収奪すること、そんな文化に染められたくありません。「競争」は競争して励みになっり楽しいときだけで結構です。精神が健全であれば、人は自発的に人の役にたちたいと思うものです。なすべきことをなすのです。安部政権に影響力のある先生方、なんとかしてください。お願いします。
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