アメリカ

2017年2月10日

【上島嘉郎】ドゴールの箴言

From 上島嘉郎@ジャーナリスト(『正論』元編集長)

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【オススメ】

「国の借金が1000兆円を超えた」「一人当たり817万円」
「次世代にツケを払わせるのか」「このままだと日本は破綻する」

きっとあなたはこんなニュースを見たことがあるはずです。
一人の日本国民として、あなたは罪悪感と不安感を
植え付けられてきました。そうしているうちに、
痛みに耐える消費税増税が推し進められ、国民は
豊かにはならず、不景気のムードが漂い続けています。

本当に増税は必要だったのか? そもそも「国の借金」とは何なのか?

その正体とは、、、
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag.php

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日本時間で2月11日未明に日米首脳会談が開かれます。
トランプ大統領は会談だけでなく夕食会やゴルフなどで
安倍首相を“厚遇”するようですが、さて会談の中身は
どうなりますか。

トランプ氏の大統領選挙戦中の日本批判は、ひとことで
言えば事実誤認とプロパガンダが入り混じった粗雑なもの
でした。たとえば日米安保に関わる発言は以下のとおり。

「日本を含むアジア太平洋地域に米軍が駐留することに
利益があるとは思わない。米国はかつてと立場が違う。
以前は非常に強力で豊かだったが、いまは貧しい国に
なってしまった」

「日本や韓国に駐留する米軍の経費については、
日韓がそれぞれ全額負担すべきだ。もし払わない
なら米軍は撤退すべきだ」

「日本は北朝鮮による核の脅威から自力で
身を守るために核武装をすべきだ」

トランプ氏の根っこはビジネスマンだといわれます。
評伝などによれば、氏のビジネス哲学は「多くの
選択肢を持つ」ことで、ならば選択肢の幅を日本が
広げて様々に仕掛けていくという手があります。

これまでの日本は、いかに米国に寄り添うかという
受け身の議論ばかりをしてきました。これからは、
自らの望むところに米国を誘導していく、という
戦略的な姿勢を持ちたいものです。

トランプ氏の「日米安保ただ乗り」という日本批判は、
米国自身の世界戦略のなかでいかに日米安保が重要かつ
有益であるかがわかっていないか、わかってはいるが
米側の負担をさらに減らしたいということでしょう。

しかし駐留経費を日本がどれ程負担しているかなどの
「事実」を示し、ビジネスの視点から再考を促せば
「意外にリーズナブル」と認めさせるのはそう難しい
ことではないはずです。米ソの冷戦時代も、レーガンの
スターウォーズ計画の実現性を“裏打ち”したのは
日本の経済力でした。近年のアフガニスタンや
イラクの戦いでも日本は米国を支援してきました。

それでも費用対効果が薄いから米軍は日本から
撤退するというのであれば、日本は自前で国防の
充実を図ることに舵を切ればよい。一国の「独立」
を考えるならば、むしろ好機でしょう。

日本は自主防衛を進めるとして、それにどれだけの
おカネがかかるか。防衛大学校の武田康裕、
武藤功両教授らの試算によれば、自主防衛のコストは
「22兆2661億円〜23兆7661億円」です(『コストを
試算! 日米同盟解体』(平成24年、毎日新聞社刊)。

数字の詳細は措きますが、自主防衛のコストに
約24兆円必要だとして、それを独立国家として
当然の費用と日本国民が考えるのならば、新たな
経済需要、技術力の要請が生まれるともいえるわけです。

現状では日本の自主防衛など米国が認めるはがずない、
という意見が大勢でしょうが、戦後そういう交渉を
したことがないのですから、挑んでみる意味はあります。

第二次大戦時、英首相のチャーチルは、東洋艦隊が
日本の海軍航空隊に壊滅させれられたとき、こう嘆息しました。

曰く、日本人は不思議である。交渉ということを
知らないらしい。交渉の最初はどんな国でも少しは
掛け値を言うものだが、日本人は反論せずに微笑を
もってそれをのんでくれる。そこで少しずつ要求を
エスカレートさせると、また微笑をもってのんで
くれるが、それを続けると、あるとき突然顔を上げ、
その顔は別人のごとくになっている。刺し違えて
死んでよいとばかりに攻撃してくる。

国家というものが親善と戦争の間を「交渉」によって
行きつ戻りつするのは、政治家にとってはゲームの
楽しみなのに、日本人には両極端しかないのか、と。

列強の長い紛争の歴史からすれば、ある条件をつけ、
複数の選択肢をもって交渉するのは当然で、70年
以上ずっと「アメリカに寄り添って疑いなし」
としたら、彼らからすれば日本の一途はむしろ
不審に思えるでしょう。戦後の日本外交は、
何か主張しても国際社会に通用しない、受け
入れられないという敗北主義に陥ったままです。

そこから先行譲歩や摩擦回避を専一にするような
外交政策が導き出されるとしたら、
そのほうが国家としていびつに過ぎます。

対米関係の工夫としては、日本の自主防衛努力は
大前提として日米同盟の強化につながる、
米国から相応の武器輸入は続ける、米国の軍需・
航空産業の雇用については配慮する等々の効果と
条件を示すことです。

そのうえで少しずつ日本の防衛装備の国産化を進める。
技術と資金はあるのですから、政治が決断し、
対米交渉を粘り強く続ければ、米国にとって
然程悪くない取り引きだと思わせることは
可能だと思います。それが政治であり外交のはずで、
この主体性の回復は、日本人の「胆力」次第でしょう。

1980年代、対米貿易で大幅黒字を計上していた
日本に米国が圧力かけてきました。それを受け、
米国が要求する内需拡大や市場開放、金融自由
化を進めようという報告書「国際協調のための
経済構造調整研究会の報告書」(昭和61年)が
出されました。研究会の座長をつとめた前川春雄
日銀総裁の名をとって「前川リポート」と呼ばれます。

以下は日下公人氏からうかがった話。新刊にも書かれています。

〈かつて前川氏に「リポートのご自慢とするところは
何ですか」と訊いたことがある。答えは「最初にみなを
集めて『英語にならない日本語を使うな』と言った。
だから出来上がったリポートは外国人が『よくわかる』
と言ってくれた」。要するに「国際的に通じるのが
前川リポートである」というのが彼の一番の自慢だった。
米国に寄り添うアイデアを出すことが自慢話になる時代だった。〉
(『新しい日本人が日本と世界を変える』PHP研究所)

そして日下氏は〈こんな時代は終わりを告げている〉と。
同感です。

かつてドゴールは、「同盟国とは、助けに来ることが
あり得ても、決して運命をともにしない国である」と語りました。

「主権国家」の意味を、日本人は改めて認識すべきです。

〈上島嘉郎からのお知らせ〉
●慰安婦問題、徴用工問題、日韓併合、竹島…日本人としてこれだけは知っておきたい
『韓国には言うべきことをキッチリ言おう!』(ワニブックスPLUS新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/484706092X

●大東亜戦争は無謀な戦争だったのか。定説や既成概念とは異なる発想、視点から再考する
『優位戦思考に学ぶ―大東亜戦争「失敗の本質」』(PHP研究所)
http://www.amazon.co.jp/dp/4569827268

●日本文化チャンネル桜【Front Japan 桜】に出演しました(2月1日)
https://www.youtube.com/watch?v=6cTym5aDlJg

—発行者より—

【オススメ】

『三橋さんは過激な発言をする人だと思っていましたが…』
By 服部

“私は今年退職をして、世間から離れて行く様に感じていました。
そんな時、月刊三橋をインターネットで見つけ、三橋先生の
ご意見を聞くようになり、世の流れに戻る感じがしました。

月刊三橋を聞き始めて3か月になります。
最初は過激な発言をする人だなあと思って聞いていましたが、
今回の国債破綻しない24の理由を聞いて、
今まで何回も聞いていた内容が、私のように頭の悪い者でも
やっと理解出来るようになりました。有り難うございます。

これからの日本の為にも益々頑張って頂きたいと思います。”

服部さんが、国の借金問題について
理解できた秘密とは・・・▼▼
http://www.keieikagakupub.com/sp/38DEBT/index_mag.php

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【上島嘉郎】ドゴールの箴言への5件のコメント

  1. ジャパニーズドラゴン より

    明治憲法に戻る必要はない。現行憲法の良いところは残し、現在必要なところを追加すればよい。それが現実的だと思います。

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  3. ぬこ より

    >新たな経済需要、技術力の要請が生まれるまさにここですこれはチャンスですトランプ閣下におかれましては、もっと日本を苛め抜いて追い込みをかけて、未だ眠っている国民を強制的に覚醒させて欲しいもんです

    返信

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  4. 日本晴れ より

    上島さんのご指摘に全く共感します。それが主権国家だと思います。その主体性の意識がなきゃ日本はどこまで行っても属国のままです、

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  5. たかゆき より

    ぼくの 独言さて 「主権国家」、、泥水のような 現行憲法のもとではこの国が主権国家となるのは 無理現行憲法を 掻き回せば 掻き回すほどにその 濁りを増すだけかと。。。では どうするか?現行憲法を破棄して 明治憲法に戻し改定すべきところは 改定するのが筋現行憲法にしがみついているかぎり主権の確保など百年河清を俟つやうなもの建国記念日が 寒々しい 今日この頃でござる ♪

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