政治
日本経済
2021年2月4日
【藤井聡】緊急事態宣言「延長」に対する批判が全く起きない今の日本の空気は、まさに「異常」である。

From 藤井聡@京都大学大学院教授
菅首相は緊急事態宣言の延期を政治決定してしまいました。
当方は、この延期判断はその判断内容もさることながら、その決定に至る判断プロセスも極めて不当なものであったと感じています。
ついては、本件について次の様なツイートを出し遺憾の意を表明しています。
「政府補償不在の今、これで倒産/自殺の拡大は必至です.政府医療界の対応病床増強努力、学者の宣言感染抑止効果の吟味、法曹界のLRA議論があったのならいざ知らず、それらが全て不在のままの単なる思考停止判断。誠に遺憾と言う他有りません.」
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1356353349159817217
「時短によって倒産/自殺が確実に増える事も、宣言の半月も前から実は感染者数が減少に転じていた事もガン無視し、マスコミ世論からの圧力に単に屈しただけの判断。繰り返しますが本当に遺憾としか言いようがありません。」
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1356515814048849922
(※ なお、上記で言及している法曹界のLRAとは「より制限的でない他の選びうる手段の基準(Less Restrictive Alternative)」で、当該目的(この場合なら感染抑止)を達成するためにより制限的でない他の選びうる手段があるのにそれをやれば憲法違反だという規準です。https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1356354912204902400)
ただしこうした認識は何も当方だけのものではなく、実に多くの方々にも共有されていることは、上記ツイートに対して寄せられた多数のコメントからもご認識いただけると思います。
さらには当方の友人の数理系の行動科学者(心理学者)からも、今回の宣言延期についての大きな疑義の念を表明するメッセージを頂きました。あくまでも私信メッセージでしたので匿名の形で紹介さし上げますが、当方はこのメッセージについて逐一深く賛同するものでしたので、ご本人の了解を得た上で、下記に抜粋の上ご紹介さし上げます。
「緊急事態宣言延長になりそうですが、本当に何故こんなことになったのかよくわかりません。
特措法もそもそも主権(基本的人権)の制限を最小限にするということを以前からうたっているのに無制限の外出自粛はこれに反していると思いますし、
延長を支持する科学的エビデンスもないのに反対意見はどこにも新聞やテレビのマスコミにはあらわれていません。
また、厚労省も以前は、自粛などの措置は感染症の初期に用いるべきであり 蔓延したらそのようなことをしない旨を新型インフルエンザ専門家会議の議論でずっとしていたのに、なぜコロナになって自粛を強調したのかよくわかりません。
罰則までつけようとしているのに、人権にうるさい学術会議も黙っており、学者の人権のみ主張しているのかと思ってしまいます。
なんか事情がわかったら教えてくださればと思います。
僕自身は、現状が、各組織が自分たちの利益のみ考えたいわゆるナッシュ均衡になっていて国民にとってのパレート最適になっていないように思います。」
この科学者の指摘はいずれも正鵠を射たものでしたので、当方からは、次の様に返信いたしました。
「全くおっしゃる通りです。
なんとかそのナッシュ均衡解を転換させようと言論展開しましたが、結局失敗・・・典型的な社会的ジレンマ状況、ですね。
本当に馬鹿馬鹿しい。
言論人、学者連中もそのナッシュ均衡解に加担しているんですから、日本もいよいよ、終わりだなと思いますね。」
短いやりとりですが、一般の方には少々分かりづらい所もあるかと思いますので、今回はこのメッセージを解説することを通して、今回の緊急事態延期判断が如何に不条理なものか、そして、それを看過するどころか煽り続けたメディアや学者が如何におぞましき不道徳に加担したのかを改めて描写してみたいと思います。
まず第一に「コロナ特措法では、主権(基本的人権)の制限を最小限にする事が謳われている」という点。
この点は、当方のツイートのLRA規準を満たすのがコロナ対策の基本だ、という話と同じ。
つまり、「自粛要請」というのはそもそも、憲法が保障する個人の自由を制限するものですから、必要最小限にしなきゃいかん、という話であって、そもそも、その趣旨は特措法の制定の時に散々指摘されていた話なのです。
https://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20200503549277.html
でも、メディア上でも言論人でも学者でも、それを口にする人がほとんどおらず、兎に角コロナがやばい「カモ」しれないから、個人の自由なんて知ったこっちゃ無いんだよ、という話がまかり通っています。
僕はサヨクの民主主義者なんて大嫌いですが、昨今の下品なコロナ脳議論を見ていると、ついついサヨクの民主主義者の方が全然ましだなぁ、と思ってしまいます。この科学者も全く同じ事を指摘されているわけです。
第二に、「延長を支持する科学的エビデンスもないのに反対意見はどこにも新聞やテレビのマスコミにはあらわれていません」という話ですが、憲法上大事だってテレビ、マスコミがしょっちゅういっている「自由」を制限するのが政府の自粛要請なわけで、そんな貴重なものを制限するなら、よっぽど根拠がしっかりしてなきゃいかん筈なのに、その根拠が全然いい加減なのです。
僕だってもちろん、自粛が感染抑止に効いている可能性は一応あるとは思いますが、ほとんど効いていない可能性が相当程度に存在しており、かつ、実際データをみてたら、ほとんど影響無いんじゃ無いか、あったって、めっちゃ小さいんじゃないか、っていう話の方がまっとうな常識的な判断です。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/3180367852064136
(さらに、こういうデータもあります:
https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1357154738735747072)
そんな状況で、一応念のためコロナ怖いカモだからって、憲法上大事だっていわれ続けた自由を制限するなんて、今までの議論と全く乖離してる、アホ丸出しな議論です。
つまりこの科学者も、当方と全く同じ感想を述べておられるのです。
第三に、「厚労省も以前は、自粛などの措置は感染症の初期に用いるべきであり 蔓延したらそのようなことをしない旨を新型インフルエンザ専門家会議の議論でずっとしていたのに、なぜコロナになって自粛を強調したのかよくわかりません。」という話ですが、これについても、ホントに一般の人は知らない…のはしょうが無いとしても、テレビもそのテレビに出てる「専門家」達にしても、全然この話をしないのは、本当に、知的誠実性を全く持たないおぞましい輩なんだなぁと思う他有りません。
第四に、「罰則までつけようとしているのに、人権にうるさい学術会議も黙っており、学者の人権のみ主張しているのかと思ってしまいます。」というのは、特に補足する必要もないくらい、分かり易いお話しですよねw
第五に、「僕自身は、現状が、各組織が自分たちの利益のみ考えたいわゆるナッシュ均衡になっていて国民にとってのパレート最適になっていないように思います。」というお話しは、少々説明が必要でしょう。
このナッシュ均衡っていう概念は、ゲーム理論の特殊な概念なんですが、兎に角、
・西浦氏や岡田氏に典型的に見られる専門家達は、世間からバッシングされないため、という理由のみならず、世間からチヤホヤされたい、という「利己的」な理由でもって、コロナはヤバイ、って話を言い続ける。(安全だ、なんていったら、バッシングされるので、絶対言わない)
・テレビやラジオのアナウンサーや司会者は、世間からバッシングされず、かつ、視聴率を取りたい、という「利己的」な理由でもって、コロナはヤバイ、って話を言い続ける。
・コロナ自粛で影響を直接受ける国民は一部で、直接影響を受けない国民が大多数だという状況の中で、国民の大多数は、コロナにかかりたくないというだけの「利己的」な理由でもって、コロナはヤバイから自粛がいいんだ、って話を信じ続ける。
・政治家は、国民から批難されず、任期を一定獲得し続けたいというだけの「利己的」な理由でもって、コロナはヤバイぞ、だから俺は、コロナと戦うために、国民に自粛せよ、って話を言い続ける。
・・・というように、皆が「自分の事だけ考えている」と仮定すれば、とにかく、コロナがどれだけヤバイかどうかなんておいといて、「コロナがヤバイって言い続ける」という事になってしまうのです。
これが、ゲーム理論で言うナッシュ均衡、という概念。
そのせいで、緊急事態が延期され、店がいっぱい潰れて人がいっぱい自殺するのですが(これが、当該科学者が言及するパレート最適になっていない、というご指摘です)…利己的なクズどもは、そんな事どうてもいい、と考えるわけだ、という話。
それが、この当方の友人の科学者が言っている話です。
ちなみに、当方が言及した「社会的ジレンマ」っていう話は、皆が利己的に振る舞えば、皆が損するぞ、っていう社会状況を言います。
実を言いますと、当方が学位をとってから膨大な時間を使って研究してきたテーマが、この社会的ジレンマなのですが、そういう当方の専門の視点から言うと、この緊急事態宣言延期は、典型的な社会的ジレンマ問題なのです……。
当方、こういうアホな状況にならないために、毎日研究と実践を繰り返しているのですが、はっきり言うと、感染症学者やマスコミや政治家などのエリート共の中にクズばかりがいれば、ゲーム理論が予測するように絶対にこうなってしまうのです…ホントに、自らの無力を恥じるほか有りませんが…情けないことしきりです…。
ただし、そういう風に忸怩たる思いを抱いている科学者は当方一人ではないのです。
ツイッターやネットの様な空間で何をどう言われようがこの際もうどうでもいいのですが、こういう二十年来の友人、しかも、普段滅多に合わない方からのこういう誠実なメッセージを一通頂くだけで、これからもしっかり頑張ろう、と思う次第です。
是非、誠実な皆さんも、この下らない世の中でめげずに、日々誠実に頑張って精進して生きて行かれんことを、心から祈念、そして、応援いたします。
また引き続き、よろしくお願いします。
追伸;
ホント、今回の緊急事態宣言の延期を巡る学者と政治家とメディアのクズっぷりには、心底辟易しています。そんな辟易感を下記記事に書きました。是非、ご一読いただきたいと思います。
「世論に併せて緊急事態宣言を取り敢えず延長する政府と、それを何とも思わない世論の冷たさが、多くの人を自殺に追いやっている。」
https://foomii.com/00178/2021013013015676069
(あるいは、こちら、https://mypage.mag2.com/ui/view/magazine/162657456?share=1)
【藤井聡】緊急事態宣言「延長」に対する批判が全く起きない今の日本の空気は、まさに「異常」である。への4件のコメント
2021年2月4日 5:47 PM
いつもありがとうございます。結局、いつものことながら藤井先生界隈のみが希望です。最近、世間でも少しづつ、コロナ全体主義の矛盾も語られ始めているような気もします。(週刊誌の記事、等)
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2021年2月5日 1:04 AM
23年もデフレを維持し国家自殺へと邁進する狂気の国家ですから
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2021年2月5日 1:09 AM
完全に狂ってるな。京大はこんなの放っておいてええんかい(笑)。
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2021年2月5日 2:31 PM
パレート最適は 不可能
もしも可能なら
地球上から核兵器は
とっくの昔に
消滅している はず、、
というわけで
あとは 覚悟を決めるだけ。。
ちなみに小生
得体の知れない 何たらワクチンとやらを
接種して
ファーストペンギンになるつもりなど
これっぽっちも ございません
なさりたい方は お先に
どうぞ♪
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