日本経済

2020年7月2日

【藤井聡】小池知事は「感染抑止」でなく「経済壊滅」を導いた

From 藤井聡@京都大学大学院教授

 

小池知事は、3月23日に「ロックダウン」の可能性に言及し、その翌々日の3月25日に「緊急会見」を開催し、「重大局面」あるいは「感染爆発/オーバーシュート」だのというセンセーショナルな言葉を使いながら、「不要不急の外出自粛」を要請しました。
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=68980

この頃までは、花見客もそれなりに公園に繰り出すなど、比較的日本全国の自粛ムードは緩慢な状況だったのですが、このころから全国各地に自粛ムードが蔓延するようになっていきます。

そして、小池知事は、政府に対して緊急事態宣言の発令を要請するようになっていきます。
そして、4月3日には「緊急事態宣言が発令された場合の東京都の対応」なるものを発表し、政府の緊急事態宣言の発令を今か今かと待ちわびる様になっていきます。
https://www.youtube.com/watch?v=MLNvS-99Qas

そして安倍総理は、こうした小池知事の要請、ならびに、小池知事の「オーバーシュート」や「ロックダウン」等の言葉で煽られた国民世論に後押しされるように4月7日に、「8割自粛」を前提とした緊急事態宣言を発令するようになっていきます。

その結果日本国民は大変に激しい活動自粛を自主的、あるいは半強制的に展開していくことになっていきます。

ここで、こちらのグラフをご覧下さい。


https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1278230115499913217

これは、Googleが公表している世界各国の人々の「移動量データ」に基づいて作ったもの。すなわち、G7各国(およびその主要都市)の2月から6月までの「移動量」(具体的には、どれくらい“交通施設”をつかっていたのか)というデータの推移です。

ご覧の様に、どの国も、このコロナの感染症対策のために大幅に減少させ、それが今、徐々に回復してきている様子が分かります。

ただし、その中でも唯一、特殊な推移をたどっている国があります。
それが我が国日本(JAPAN)。

ご覧の様に、2月下旬から3月中旬にかけて、欧米諸国とその都市では、いわゆる「ロックダウン」(都市封鎖)戦略がとられ、移動量が大幅に、かつ、急速に縮小しました。

しかし、日本は2月も3月も特に移動量は縮小することもなく、1、2割程度の減少量で推移していました。むしろ、「花見」がはじまった3月下旬には移動量が微増するような状況にありました。

しかし、上記の小池知事の緊急記者会見、自粛要請から状況は一変。

一気に、移動量が減少していったのです。

そして、先に述べたように、小池知事が中央政府の「緊急事態宣言」を誘発し、それがさらに移動量を大きく抑制していくことになります。

その結果、平常時の8割程度であった移動量が、5月上旬頃には4割前後にまで縮減。

つまり、こうした流れを踏まえると、小池知事の自粛要請を重大「契機」として、移動量の縮減が「半減」する事になったのです。

そして、「移動量」というのは、要するに社会経済活動の最も重要なインデックス(指標)であることを踏まえるなら、要するに、小池知事の自粛要請こそ、今の日本経済の崩壊を導いた重大契機であったと言うことができるでしょう。

・・・もちろん、経済がどれだけ崩壊しようと、「感染爆発」「オーバーシュート」が起こって、それこそ何十万人も死んでしまうようなことがあるなら仕方が無いと言うこともできるでしょうが・・・こちらの記事に詳らかに論じた様に、知事の自粛要請は、感染抑止効果は、全く見いだせなかったのです。


https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1278289269409239040

以上まとめますと・・・

小池知事の自粛要請がなければ、経済はほとんど冷え込まなかったが、自粛を国民・政府に強く要請し、経済は「欧米並み」に激しく冷え込んだ(社会経済活動が平時の8割→4割へと半減した)。

②一方で、自粛要請に、感染抑止効果は見られない(自粛でなく、海外との往来の規制で、感染は収束した)。

小池要請から始まる一律自粛要請は、残念ながらほぼ無駄だった

④したがって今後は、「一律自粛要請」は、軽々に出すべきではない。日本はファクターXの幸運を最大限に利用すべき

・・・

新しい「専門会議」は、これまでの対策をしっかりと検証するところから、今後の対策を検討する方針だそうですが、以上に述べた分析を、しっかりと踏まえていただきたいと思います。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200623/k10012480691000.html

追申1:
コロナ問題について多面的に考えたい方は是非、この一冊をご一読ください。
表現者クライテリオン「コロナが導く大転換」
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B088N67NYY/

追申2:
以上に述べたような検証が一考になされないのは、「自粛=正義」となっているから・・です。なぜそうなったのか・・・是非下記、ご一読ください。
自粛に潜む「偽善」心理メカニズム~感染症対策の適正化に向けて改めて検証してみました~
https://foomii.com/00178/2020062612000067917

追申3:
言うまでも無く、日本人の凄まじい「自粛」現象にあたって小池知事のメディアを活用した自粛要請は重大な影響を及ぼしましたが、専門家の情報発信も又、極めて枢要な影響を及ぼしています。是非下記、ご一読ください。
「空気を支配」した人間が「日本を支配」する。そしてコロナに関する「空気」の最大の勝者は「西浦教授」その人であった。
https://foomii.com/00178/2020062021125367717

関連記事

【藤井聡】小池知事は「感染抑止」でなく「経済壊滅」を導いたへの6件のコメント

  1. 大和魂 より

    藤井先生のお気持ちも十分に承知しておりますが、別に小池都知事を擁護するつもりもございません。しかし安倍政権と小池都知事の政治行政活動の取り組みを大局的に考えれば、やはり東京五輪の延期は日本の死活問題なのです。それでその穴埋めの為の消費税増税議論も出てくると思います。それにこれからコロナの第二第三波が予想されます。さらには香港問題でも米国や英国の動きを踏まえ様々に戦略もきちんと予測しておく必要がありますし、様々な国際機関の動向にも十分に備える必要もあります。それで考えると藤井先生には、寝ぼけた愛国者ごっこを展開するバカ医者連中のような愚かで恥ずべき行動だけはしてほしくない訳です。とにかくとても厳しい状況ですが打開案はありますので根気よく対処する方が賢明だと思います。

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  2. たけちゃん より

    はあ?
    藤井さん、貴方も言及された様に2月に安倍晋三がインバウンドと五輪開催目当ての中国人来日要請しなければウイルス蔓延はなかった
    ご自身で発言してたでしょうが。
    卑しくも一国の首相が一知事の意向に従ったとでも?
    正気ですか?

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  3. noname より

    自粛しても補償はしない、自粛しないけどコロナが出た会社は営業停止。こういう無責任な態度でどれだけの会社が大変な思いをしてるのかこのアホ知事は分かってるのかと問いたい。これでも現職が当選するようなら東京は終わりだ。

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  4. 拓三 より

    まだ、コロナ…

    最近、反自粛は新自由主義だと言う意見があるけど、それは違うよ…

    その考えは政府と国民を別けて考えてるの!
    この発想はベーシックインカムにも繋がるの!
    需要と供給も分ける発想にもなるの!
    信用創造もこわれるの!
    そして根本的発想が「強弱」の論理なの!

    政府と国民は親と子の関係とするならば親は子を何故守る? 子は何故、親を守るの?
    弱いから?(強いから?)
    義務だから?

    己が生きていくにあたり必要(大切)だから守るんでしょ!

    何が言いたいか…つまり親と子を分けるのではなく両方の目線が己に必要であって…例えば新自由主義的なものは子の目線であって、共産主義的なものは親の目線であって…それを中和するのが、今のところ民主主義であって…本来、己々に2つの目線があればいいんやけど…

    つまり…政府の補償と国民の活動はどちらも必要でしょ!

    うむ~ アカン 言いたい事の半分も言えん…難しい.,

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      1. 拓三 より

        「共産主義的なものは親の目線」違う…

        「社会主義的なもの」の方が近いかな…

        でも子(新自由主義)も育てば親(社会主義)になる…今の世界。誰が親に…

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  5. 麦粒 より

    表現者クライテリオン
    【藤井聡】今、「自粛派」になってしまっているのは、コロナに壊される「社交」を持たない人々なのだと思います。

    この記事は、藤井聡という人物が、如何に単純で狭量かということがよく分かるものですね。

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