From 浅野久美@チャンネル桜キャスター
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新自由主義がもたらす恐ろしい悪夢ほか、縦横無尽にメッタ斬り。
本とは関係のないオフレコ話も、、、
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『顔のない独裁者』拝読いたしました。
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『コレキヨの恋文』から始まった、『ポップなテイストで楽しんで、読み終わると勉強になっている』シリーズの三橋・さかき本もそれぞれ大ヒットでしたが、今回はこれまでのライトさが消え、さかき先生の筆がキンキンに冴え渡った、縦横に厚みのある本格的エンタテインメントになっています。スリルとスペクタクル満載で、意表をつく展開には終始ドキドキさせられました。
しかし、とはいえ、はっきり言って、この『顔のない独裁者』は、決して後味は良くない小説です。そしてさらには、その後味の悪さこそが、この作品が今、世に出された意義として最も価値あるもの・・・であることは間違いないでしょう。
イヤな夢から醒めた朝、天井を見ながら現実との境界を浮遊するような、心許ないもやもやと疲労・・この小説の読了感としてはあの感じに近いでしょうか。
この作品は、サスペンスのジャンル以外にも、『ユートピア小説』に対する『ディストピア』小説という分類にもなるそうですね。
そもそもユートピアという概念にしても、『どこにもない国』という意味のギリシャ語由来です。矛盾のない理想の島という想像上のあり得ない究極世界がユートピアなわけで、そういう意味では、対するディストピアの世界の方を『どこにでもあり得る国』という解釈をさせてもらえば、この小説は決して荒唐無稽なデフォルメなどではなく、ましてディテールに具体性があるところが一層高度な擬似体験をさせてもらうことに繋がっているわけですね。
舞台は近未来の日本・・・・
すでに『日本国』という枠が消え、『大エイジア連邦』なるものに組み込まれて統治されているという、愛国目線でみれば気が狂いそうな屈辱的な他民族からの全体主義支配。貨幣も日本円からヘンテコな名前のアジア共通通貨にかわり、国名は無味な呼称の『第三地域』というただの記号となってしまう。
冒頭からそんな絶望的な背景で、読者としては、『例えフィクションでも許さないぞ!』(笑)という暗澹たる気分に落とされますが、その異常な事態から、主人公の進やみらいたちのレジスタンスにより、自由な国ニッポンが、とうとう日本人の手に取り戻されます。
秩序とともに自由を取り返す事がどれほど困難か楽に想像出来る読者は、当然、めでたく奪還『からの〜』となれば、そこに至るまでに踏んだであろう紆余曲折の回想と、奪還してから再び強い日本になっていく快進撃がサクサクと進んでいくものと思うのですが、決してそうはならず、さらなる悲惨な『返し』が待っている・・・というのがこの作品の無慈悲で恐ろしいところなのですね。
国民の狂喜乱舞とともに国家の輝かしいリーダーとなったGK、(本名駒ヶ根覚人・・・私はどうしても『ゴールキーパー』と読んでしまいます)
そして、心底歓迎され期待されたこの内閣総理大臣の言動や行動、思考のベクトルは徐々にズレ始め、物語が進むにつれ次第に胡散臭くなっていくわけです。ここにまさに今現在、薄々国民が感じている得体の知れない不安がチラチラと重なっていくのですね。
さらには、現存するあれこれを連想させるネーミングの組織や人物も、連想とはいえぐいぐいとリアルさを増してくるのです(このあたりはコレキヨや向日葵と同様ですが)。安直なグローバル化の行き着く先には、想像を超える荒廃があった。抵抗できない『自由』という美名のモンスターが、みるみるうちに巨大な『不自由』を生んでしまうというどんでん返しです。(ネタバレし過ぎかな)
思えば、かつて(と言っても数年前)
まさに『大エイジア連邦』路線の要素が満載だった民主党時代には、少なくとも保守と呼ばれる人々や日本を憂う人たちの敵はほぼ明確なものでした。そして『売国』という相手はとてもわかりやすかった。何しろ『日本は日本人のものだけではない』と言い放つボーダレスのリーダーが現実に存在していたのですからね。
あの時代は擬似体験などではありません。日本としての誇りや国柄など無視した『第三市民』路線にあった恐怖は私たちの共通の実体験なのです。国境は決して緩めるためにあるわけではなく、必死で守るためにあるという発想さえない、最低の政治でした。
そのトンネルから抜け出て、昨年末、『ああやっとこれで・・』と思ったところに、その後、予測出来なかったような微妙な『返し』がどうも始まっているらしい?・・つまり、つい最近我々が現実世界で体験してしまったばかり・・というレアなタイミングなので、そこから始まる恐ろしい展開も、少なからず身に憶えのあるリアルさにゾクッと寒くなるような世界なのですね。
温度のない、ただの地域になり下がってしまった無味乾燥なニホン・・・モノクロに近いイメージの近未来小説の中で、本来なら進たちの逢瀬や恋心が読み手には唯一の救いの温もりとなるべきはずなのですが、個人的には寧ろ、要所でGKにまとわりつく百合の花の芳香に、『生』へのインスピレーションを感じた・・・というか、つまり、『生身』・・という部分に何故か救いを得たような気がしました。
後半の怒濤のような展開は冷酷かつエキサイティングではありますが、(ネタバレは出来ないので曖昧ですみません)その中にも、書き手であるさかき先生から感じる母性のようなものに、個人的には強い共感を覚えました。やはりどんな生体にも現象にも、病理もあれば生理もあるもので、政治もあくまでも人間が行っているものなのだ・・・という単純なことに改めて思い至りました。
さて、救いはないのか。。。という問いに、今さら窮している場合ではないのでしょうけれど、この、苦痛さえ感じる暗い擬似体験を、ただの擬似として終わらせるために、私たちが日本人として何を芯に据えて生きるか、ということを今こそ深く考えたいと思います。そして、どんなに世の中が変容しても、日本人の内的世界としての『生』には、常に誇り高い国柄から成る強さが伴うと信じたい。顔のない独裁者に堂々と対抗できるのは、神国日本人にしかわからない、形はないけれど必ず存在しているはずの、心の中の日本力しかないのかな・・と思いました。
『顔のない独裁者』・・・心が重くなる一冊です。そして、国の存在とは何かをより強く追求したくなります。さらに、その答えを共通の想いとして他者と改めて確認したくなります。。
ぜひ、多くの方にご一読いただきたいと思います。
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