アメリカ

2017年2月7日

【藤井聡】日本の「内需拡大」こそ、良好な日米関係のために不可欠である。

FROM 藤井聡@内閣官房参与(京都大学大学院教授)

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様々な「過激」な発言を繰り返してきたトランプ大統領が就任して以来、良好な日米関係を築くのにどうすればいいのかについて、日本国内では様々な議論が展開されています。

トランプ大統領がTPPからの脱退を宣言した今、これからは日米の二国間FTAを進めるべきだ、という方針や、
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM30H0Q_Q7A130C1MM0000/

トランプが最大100超円規模のインフラ投資を米国内で行おうとしているのだから、それを支援すべく、日本のファンドが「融資」してはどうか――等が提案されています。
http://www.nikkei.com/article/DGKKASFS01H5E_R00C17A2MM8000/

しかし、二国間FTAを進めたところで、「日本の需要を、アメリカに差し出す」というもので無い限り、トランプ大統領が満足するとは思えません。もちろんそれは、俄に日本の国益に叶うものになるとは、到底思えません。両国が豊かになる貿易協定を探るには、これまで同様、交渉決裂の可能性も見据えつつ、TPPと同様、あるいはそれ以上にじっくりとした議論が不可欠です。

あるいは、日本から米国への「融資」(あるいは直接投資)を大量に行えば、最終的に「円安」となり、アメリカの対日貿易赤字が、現状の「7兆円」程度からさらに拡大することも懸念されます。

なぜなら、アメリカ側は「円」をもらっても、米国内投資などできないからです。日本からの対米融資で、米国内で投資するには、結局はどこかで「円からドルへの両替」が不可欠となります。そして、そういう両替は「円を売ってドルを買う」事ですから、必然的に円安を誘発するのです(もちろん、ドル準備高があるなら、それを回せばよいのですが、それは、対日貿易赤字が大量にあることが前提になっています)。

そうである以上、「アメリカに日本が融資しましょう」という方針は、結局は対日貿易赤字を「拡大」させ(あるいは、その拡大状況を固定させ)、結果的にトランプが望むものとは違ったものとなることが危惧されます。

・・・・

というような事を考えると、今、巷で議論されている、「二国間FTA」も「対米融資」も、結局は、日米双方にとって満足できる「Win Win」の帰結を俄かにもたらすとは、なかなか思えないのです。

そんなことを踏まえた上で、筆者が今、日米関係を良好にする最も効果的だと考えるものは、次のようなシンプルな方針です。

  「財政政策を基軸としたアベノミクスを成功させ、
   日本の内需を拡大し、アメリカの対日貿易赤字を縮小させる」

これなら、アメリカ側には、貿易赤字を縮小でき、米国内雇用を拡大させるというメリットがあると同時に、日本側には、デフレ脱却で経済成長ができるというメリットがあるのです!

そもそも、「アメリカの対日貿易赤字の縮小」という議論は、80年代にもあったのですが、その時にアメリカ側が徹底的に要求してきたものが、これだったのです。

ちなみに、その時の対日要求は「630兆円もの超大型の、日本国内での公共投資の拡大」でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B1%B3%E6%A7%8B%E9%80%A0%E5%8D%94%E8%AD%B0

なぜ、アメリカがこれを要求してきたのかという点については、最近では直感的に理解する方が少なくなっているのかもしれませんが―――それは次のような理由によります。

まず、日本国内の内需が拡大し、日本人がたくさん消費するようになれば、これまでアメリカに売りさばいていたモノを、アメリカ人に売る(輸出する)代わりに、日本人自身が買うようになる。結果、「アメリカへの日本からの輸入」が減ることになる。

同時に、日本人がたくさん消費するようになれば、これまでアメリカから買わなかったものを、もっとアメリカから買うようになる。そうなると、「アメリカから日本への輸出」が増えることになる。

こうして、日本の内需の拡大は、アメリカからの輸出を増やし、アメリカへの輸入を減らし、結果的に、アメリカの「対日貿易赤字」を大幅に縮小させるのです!

例えばクルマで言うなら、日本がデフレさえ脱却できれば、「アメ車の購入」は増えると同時に、「日本車をアメリカに売る代わりに日本人がより多く買うようになる」という次第です。これこそ、トランプが望んでいる帰結そのものです。
http://www.news24.jp/articles/2017/01/24/10352275.html

仮に、日本の内需が拡大し、アメリカの対日輸出がわずか「一割」(0.8兆円)だけ増え、日本からの輸入がわずか「一割」(約1.5兆円)だけ減れば、それだけで、対日貿易赤字は現状から三分の一(2.3兆円)も縮小されるのです!

つまり、日本の内需拡大は、「劇的」な対日貿易赤字の「縮小効果」を持っているのです。

こうした構造があるからこそ、アメリカは日本に630兆円もの公共投資をするようにという「圧力」をかけてきた、という次第です。

これと同じように、今、安倍内閣が進めようとしている「財政政策を軸としたアベノミクス」を粛々と進めてデフレ脱却が果たし、内需が拡大すれば、「対日貿易赤字」は自動的に縮小するのです!

しかも、そもそも日本は、アメリカからの圧力とは無関係に、デフレ脱却を果たそうとしています。ですがそれができれば、自動的に、トランプ政権を利する結果を得ることが可能となるのです。

だとするなら「対米貿易交渉」を図る上で、これほど日本にとって得策な方針はありません。まさに、これぞ、Win Winの手本となるべき交渉方針。

もちろんより効果的に、両国に利する「対日貿易赤字」の縮小を図るのなら、日本がアメリカから欲しいものを買うように交渉するのが得策です。例えば、「アメリカのシェールガスやシェールオイルを購入する」取引が成立できれば、日米双方に利益があることとなるでしょう。防衛問題に関わるトレードにおいて、そういう取引を考えるという方針もあるかもしれません。

・・・・以上、いかがでしょうか?

以上を踏まえるなら、今、わが国は、

 A.「財出拡大による内需拡大を通した、良質な日米関係」と
 B.「財政規律」

のいずれが重要なのかという点が、問われているのです。

ここでもしも、「B.財政規律」を重視し続けるなら、結局は内需は拡大せず、「アメリカの対日貿易赤字」は抜本的に解消することはなくなります。

そもそも、現在の「アメリカの対日貿易赤字」の元凶は「日本のデフレ」なのです。だからこそデフレ脱却こそが、トランプの要求に対する、最もストレートな「答え」となるのです。

今こそ我が国は、日本国民の豊かな暮らしのためのみならず、良好な日米関係を築き上げるためにも、「過剰な財政規律」と決別することが求められているのです。

追伸:良好な日米関係を導く「日本の内需拡大」―――そのために求められている対策については、是非、下記をご一読ください。
https://goo.gl/xkQukg

—発行者より—

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【藤井聡】日本の「内需拡大」こそ、良好な日米関係のために不可欠である。への6件のコメント

  1. はっちゃん より

    トランプ大統領が「主流派経済学」を信望しているのかどうか。私は「ここは重要」とは思いつつも知りませんが、あまりそのようには見えません。「日本の内需を拡大させれば対日貿易赤字が解消できる」ことは「少なくとも過去のアメリカ政府がそう考えていた」ということを考えても、彼にとってはかなり説得力のある方法論ではないでしょうか?それ以外の方法で対日貿易赤字を解消するといっても無理である上に大した効果も期待できなさそうですね。一方、日本が内需を拡大することについてアメリカのリスクあるいはデメリットなどあるのでしょうか。あまりなさそうに思います。日本が内需を拡大するとデフレを脱却し、経済も活性化し、少子化も緩和し、防衛も強化することが可能になる思います。日本の防衛が強化されることはアジアの安定に寄与すると彼が判断するかどうか。仮にアメリカが日本の武装願望に蓋をしたいと考えたとしても、経済と防衛は分けて考えることも可能だからやはり日本の内需拡大はグッドですよね。トランプ大統領は日本など、アメリカ以外の国をイジメたいなどとは思っていないと思います。また、アメリカ国民の雇用を増やしたり経済を拡大させたりは、したいと思っているのだと思います。日本の内需拡大は彼の要望に答える形になるし、実際アメリカ国民にとってもプラスなことであると思えます。

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  2. コタニ より

    大賛成です。日本の借金とは大嘘です。日本の名目GDPはこの20年間、500兆円で固定されて増えていません。これは金本位制ではありないことです。日本はこの20年間、経常黒字を続けていたのですから、金本位制なら金が流入し続けたことになります。必然的に円を自由に印刷できたはずです。それを意味不明な国の借金とか言い出したのは財務相、日銀です。今でも大債権国、経常黒字国なのだから、円は自由に印刷できるはずです。ですから財源には何の問題もないので、財政出動は可能です。逆にアメリカは、金本位制なら金が流出し続けていたはずですから、ドルは印刷しにくいはずでした。それを印刷しまくったので、大借金国になっています。アメリカを助けるためにも、この政策は急がれます。というのは、アメリカも悪いところはたくさんありますが、中国は覇権国家になるにはまだ未熟なので、我々にはアメリカを助ける手しかないのではないでしょうか。

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  3. 神奈川県skatou より

    火曜朝に書き込めなかったもので、もしやと思った次第・・昔、日本人は働きすぎ、という指摘もあったように思います。日本人の人生観にはだれかのために日々務めることは喜びであり、働くな、とはずいぶんですが、もっと楽しむことも追求しろという話でしたら、双方の筋も合いそうです。エネルギー購入、素晴らしいですね。安保は依存の選択肢を増やすことでしょうから、なおさらです。

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  4. 通りすがり より

    驚きました。デフレはアメリカの経済にも打撃を与えているのですね。ところで、デフレ悪玉論を唱えたり、消費増税悪玉論を唱える人が少ないのは本当に不思議です。これが全体主義かと言いたくなります。例えば藤井先生のよく知る(?)維新の会ですが、あの人達もデフレのことを言いませんよね。まだまだ、デフレの深刻さを受け取る「素地」が無いんだなあと思う次第です。個人的には「庶民の怒り」はデフレに向かって然るべきだと思うのですが、そうはなりません。ヒトラーも「大衆は小さな嘘より、大きな嘘の犠牲になりやすい」と言っていましたし、そうなんだろうなあと思います。

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  5. 學天則 より

    己の立ち位置であるからの嫉妬のポジトーク。それが、まあ多数派の親米ポチ社畜どもの破壊の行動原理でしょう。平成バブル崩壊と後のデフレ化を嫉妬で喜び、才能ある専門職やクリエイターを妬み非正規雇用化や低待遇化し、新産業の芽をつみ嫉妬で構造改革といい、インフラ投資をさせず社会基盤を破壊する。今また嫉妬でトランプに破壊を求める。嫉妬で足を引っ張る事しかできない社畜連中、それがわが国の癌でしょう。どちらに転ぼうともこいつらの嫉妬の先に建設的な明日がある訳がない。感情的動物には理性によるコントロール=マネジメントが無いですからな。平成バブル崩壊の親の事業の経済苦で家族と別れ離れざるをえず、更に非正規雇用化で苦しめられ、それでも地道に這い上がって、この四半世紀なんとか生き残って来た私からすればそれだけ嫉妬して、邪魔しても自分らのポジが良くならない事にブチ切れて今度は気に入らないので遂に究極のお盆返しで国家や法秩序を破壊するみたいな事をやりだした昨今の怒り狂う、多数派の阿保のルサンチマンぶりは許せない限りですが阿保は死ぬまで治る見込みは無いでしょうから、建設的ではないので仏心で一応、蜘蛛の糸をたらしてみるのですが、糸の上で暴れて自ら切ろうとするのですから、やはりカンタダの話は実際凄いなと思うばかりですね。古くから残るストーリーにはそれなりの真理があるのでしょう。昨今は親子心中など暗いニュースがよくありますがそこで思うのですが、なぜ子供まで一緒に死なせるのかと思うとやりきれませけど、実際、これを我が国に当てはめるとここ四半世紀は国家的無理心中というのが実情ではないでしょうか?頑張っている少数派の建設的な人が気に入らない嫉妬に狂った多数派が世に嫌気がさして、ひたすらルサンチマンでケチをつけて嫌がらせをして無理心中を図っている。そんな絶望的な構図があるのではないでしょうかね?明らかにゾンビ物の世界ですよ、こりゃ。まあ更に四半世紀たっても死ぬまで同じでしょうな。歴史に学べば馬鹿は秩序で止められないから馬鹿なんです。馬鹿を止める方法は自然災害とか戦争での死亡しかないですからね。だから亡国が数多存在するのですな。国破れて山河有り、それでも人は生きねばならないからこういう現実を保守的に見て、賢明な方々は総員退艦準備をしていざと言う時には生き残りをされるように切に願います。どうしようもねえ\(^o^)/

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  6. 拓三 より

    仰る通りです。伊勢志摩サミットで晋ちゃんが6カ国に対し財政拡大を歌った事とトランプちゃんが日本に対し為替操作国と言った意味は『全く同じ』であります。つまりトランプちゃんの言った意味は、『これから米国は財政を拡大し内需拡大を図る。しかし一国ではMFが過剰に反応するので他国との連携が必要だ。EU、英国は問題が山積なので今それどころではない。残るは日本。日本は伊勢志摩サミットで財政拡大を歌っていた。日米に相違はない。日米同時に財政拡大を演ろうではないか。抜け駆けしたらシバク!』であります。ここで問題なのが日銀とFRBの金融に関しての立場です。日銀はまだ金融政策に余裕があるのに対しFRBは出口戦略(利上げ)に向かう立場。日米同時に財政拡大してもMFが米国に集中する。本来なら米国がFRBを説得すればいいのだが難しい、ならば日本に金融政策を辞めさせ日米同じ条件で財政拡大をすればMFが米国だけに集中せず日米に力が分散する。と言うのがトランプちゃんの考えでしょう。私は、ありだと思います。金融政策はMFの対抗策にもなりますが、逆に過度なMB増加はMFを過剰反応を起こすマイナス面も持っています。今世界的に過度な金融政策によりカネ余り状態です。これを正常に戻す方法はインフレしかありません。バブルを弾けさすのが手っ取り早いのですが、その役目は支那に任せ、日米の大国が同時にインフレを起こせばMFの反応も抑えられ同時にカネ余り現象も解決出来るのではないか、また運良く日本はデフレ!インフレに対しての幅がある。まあ、緻密な計算があるとは思いますが、トランプちゃんに乗るのは私は有りだと思う今日この頃です。

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