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2025年9月22日

【三宅隆介】外国人住民登録制度の盲点

From 三宅隆介@川崎市議会議員

 

去る令和7年9月19日、川崎市議会において、私は「外国人住民登録」の課題について質疑を行いました。かつては「外国人登録制度」(外国人登録法)が存在していましたが、2012年に廃止され、現在は住民基本台帳制度に統合されています。この結果、中長期在留者や特別永住者などの外国人についても、日本人と同様に市区町村で住民登録を行い、行政サービスや社会保障制度を受けられる仕組みとなりました。

しかし、実際に住民登録の窓口業務を担う市区町村において、厳正な本人確認が果たして可能なのか、ここに大きな課題があると私は考えています。

まず、川崎市における外国人世帯の転入届出件数とチェック体制について確認したところ、市側の答弁によれば、「令和4年度11,778件、5年度12,060件、6年度13,967件」と年々増加しています。一方、チェック体制は十分とは言えず、特に偽造在留カードの識別研修やマニュアルが整備されていないことが答弁で明らかになりました。在留カードにはICチップが埋め込まれており、偽造防止策が講じられていますが、本市ではICチップの読み取り装置は導入されておらず、窓口では目視による確認が中心とのことです。疑わしい場合はパスポートなどを追加で確認し、必要に応じて出入国在留管理庁に問い合わせを行っていますが、やはり根本的な限界があります。私は、不法滞在者の誤登録を防ぐ仕組みや現行制度の課題認識を質しましたが、市の答弁は「国の制度にも限界があり、偽造技術の高度化への対応には国の対策も必要」とのことでした。

そして私は、虚偽住所登録を防ぐための体制についても質しました。ところが、川崎市には(おそらく多くの市区町村も同様)、不正や偽造を判断する統一マニュアルはなく、出入国在留管理庁や警察との照会フローも国からは定められていません。実際に不在が疑われる場合、郵送物の返戻をきっかけに調査が行われることはありますが、全庁的な管理体制は整っていない状況です。問題は、「返戻郵便」をもとに居住実態確認が行われるまでの間、あるいは国外転出や在留資格の取消情報が住基台帳に反映されるまでには遅延が生じ、その間に「残存登録リスク」が発生する点にあります。

「残存登録リスク」がもたらす脅威は以下のとおりです。

  • 社会保障・福祉給付の不正受給

死亡者が「まだ生きている」と登録上は扱われるため、「国民健康保険資格の悪用による医療費の不正利用」「児童手当・生活保護などの給付金を不正に受け取り続ける」「年金の不正受給(遺族や同居人が死亡を届け出ずに受給)」といったケースが生じます。

 

  • 金融・契約の悪用

住民票が生きていると、「携帯電話や銀行口座の開設」「クレジットカードの契約」「賃貸契約が本人名義で行える」等々、これらが犯罪グループやスパイ活動に悪用される危険があります。

 

  • 在留資格の不正延命

外国人の場合、死亡や転出が反映されないと「在留資格ありの登録者」として残ります。例えば「不法滞在者が死亡者の登録情報を利用して生活」「複数人でカードを貸し借りして潜伏」といった形で、不法在留をカモフラージュすることが可能です。

 

  • 身分の“なりすまし”

残存登録の個人を装って、「選挙人名簿に載っている場合は不正投票の温床」「公共サービス(住民向け助成・公営住宅申請等)を不正利用」などがあり得ます。

 

さすがに本市当局は「望ましいことではない」と答弁しましたが、これが現実であり看過できない課題です。

さらに問題なのは、居住実態のない外国人住民に発行してしまった「証明書等」を回収もしくは無効化する術がありません。出入国在留管理庁の情報と即時連携していないために不可能なのです。

これらが今回の質疑で明らかになったわけですが、本来は、出入国在留管理庁のデータとリアルタイムで突合できる全国統一システムの構築、IC読取機器の標準配備、マニュアル整備などが不可欠です。もっとも、全国統一システムの構築など、国の体制整備には時間と費用を要します。ゆえに、国の対応を待っているだけでは不十分で、当面は自治体独自でできること、例えば「真偽判断マニュアルの整備・運用の厳格化」「虚偽住所の実態確認を迅速化」「返戻郵便の管理・情報共有体制の強化」を早急に検討・実施すべきです。

住民登録制度は、社会保障、教育、税務をはじめ、あらゆる行政サービスの基盤です。その信頼性が揺らげば、市民生活全体に深刻な影響を及ぼしかねません。

私は、この問題を川崎市だけの問題とは捉えず、全国的な制度課題として、今後も粘り強く質してまいります。

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