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2025年2月6日
【藤井聡】トランプとの早期会談を拒否した石破がようやく日米首脳会談を決定.石破でも会談しないよりした方がマシだが…石破ならトランプ外交による国益毀損は免れ得ない

石破首相が来週金曜日の2月7日に,訪米の上,トランプ米大統領と会談することとなりました.
安倍昭恵夫人とトランプ大統領が面談されたことが契機となり,石破・トランプ対談が機会が大統領就任前の1月中旬の段階で模索されたことがありました.
下記NHKの報道の通り,「トランプ側から打診」があったのですが,見送りとなりました.
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241219/k10014672661000.html
せっかくのトランプからの申し出だったのですが石破氏側から,もう少し準備してから会いたい,という理由,すなわち要するに「時期尚早」という理由でその機会は見送りとなりました.
なんとも恐るべき話ですが,その理由については,日本テレビの元政治部次長の青山和弘氏が,当方と同じTV番組(正義のミカタ)に出演した折り,「安倍さんと同じことをするのは避けたかったからではないか」と発言されていたように,さして明確な理由があったとは言えないようです.
そもそも,トランプ大統領に「媚びる」という理由とは別次元で,日米首脳会談は一日も早く実現することが必要でした.
なぜなら,トランプ大統領の「対日政策」についてはもちろんの事,「対中政策」や「対朝政策」「対露政策」は,日本の国益に大きく左右します.
しかしそれにも関わらず,トランプ大統領は,1月20日の政権樹立以降,凄まじい速度で様々な政策方針が決定し続けています.
したがって,日米の首脳会談が遅れれば遅れる程,そんな日本の国益に大きく関わる諸政策が,「日本の事情」を十分に反映しないまま,アメリカの極東についての,あるいは,日本についての不正確かつ不十分な認識に基づいて決定されてしまうリスクが高まります.
だから,アメリカに媚びるとか媚びないとかという話とは別次元で,いち早く日米会談を行い,日本の事情,極東の状況をより正確,かつより豊富にトランプ政権側に伝え,日本の国益に関わるアメリカの諸政策が,日本の国益に僅かなりとも貢献する方向に,あるいは,日本の国益を毀損しない方向に,僅かなりとも修正することを試みることが,日本のリーダーたる総理として極めて重要な振る舞いとなるのです.
それにも関わらず石破茂は,早期のトランプとの会談を「蹴った」わけです.
全くもって理解しがたい話ですが,それが石破茂という政治家の実態なのです.
…とはいいながら,ようやくこの度,2月7日に対談することが決定したわけです.ついては当方としては…
ひとまず,より遅くなることと比較してまずは望ましいものと考えます.
で,この対談について,トランプは次のように発言しています.
『■記者の質問「2月7日に日本の首相と会談し、何を話すつもりか」
彼は来週、来る。私は(何を話すのか)分からない。彼が会談を求めてきた。私は日本に大きな敬意を抱いている。日本が好きだ。安倍晋三首相(当時)はとても親しい友人だった。彼に起こったことはとても悲しいことで、最も悲しい出来事のひとつだったが、彼らは私と話すためにやって来るので、楽しみにしている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0108S0R00C25A2000000/』
アメリカにとって日本は極めて重要な国です.
これからの米国外交の中心となる「対中強硬路線外交」を考える上で,日本はその中国との闘いにおける「最前線基地」となる「同盟国」だからです.同時に,「米朝戦争」においても,日本は韓国に次いで重要な「同盟国」でもあるからです.
さらに,アメリカが改善したい「貿易赤字」を縮小する上で,日本は中国についで重要な貿易赤字国でもあります.
以上を踏まえたとき,日本はアメリカとの外交で,最低限でも,次の諸点をトランプに説明しておく必要があります.
(1)アメリカは北朝鮮の核を「是認」する可能性がある.しかし,拉致問題を抱える日本としては,日本と北朝鮮は「准戦争状況」にある以上,日本としてはそうした方針は容認できない,ということを理解して貰う必要がある.
アメリカが北朝鮮の核を是認すれば,北朝鮮への経済制裁が解除され,北朝鮮の核の脅威が,日本,韓国にとっててさらに拡大することになる.そうなると,韓国も日本も核武装をすることが必要不可欠となる.そうなると,日米安保条約の形も抜本的に改変することが必要となる.日本はもちろんそれでも構わないが,そこまで理解した上で,アメリカは北朝鮮の核武装を是認するか否かを問いただす必要がある.
(2)日本に対する関税を引き上げる可能性があるが,そうするまでもなく,日本が内需拡大策を展開すれば(それと同時に消費税減税を行えば),アメリカの貿易赤字は縮小することになる.そうすれば,関税引き上げに伴う,米国経済における不利益(コストプッシュインフレの加速)を回避することができる.
(3)アメリカは在日米軍の負担を軽減する方針を宣言しているが,それにあたっては,ただ単に「日本側からの思いやり予算」を増額するだけでなく,「自衛隊を増強し,米軍の負担そのものを軽減する」ことが,米国負担を継続的かつ効率的,効果的に負担する方針であるということを理解して貰うことが必要である.
…こうした方針をしっかりと伝えておけば,アメリカは悪戯に「北朝鮮の核を是認する」だの「思いやり予算を増やせ」だの「対日関税を引き上げるぞ」だのという,日本の国益を深刻に毀損する方針を決定,加速してしまうリスクがいずれも回避出来るようになるのです.
…もちろん,石破は上の(1)~(3)をしっかりと宣言することは絶望的にあり得ないとは思いますが,それでもなお,最低でも「拉致問題を日本が重視していること」「関税引き上げを望んでいないこと」「自衛隊の増強を望んでいること」を説明する程度なら,石破でも口にすることはあり得ると思われますし,そうした発言があるだけでも,何もしないよりはマシだとは思われますので,一応,石破であってもトランプ氏とできるだけ早く会談することには意味があるのです.
もちろん日本の総理大臣が,独立自尊の気概をもって(1)(2)(3)をトランプに主張することが何よりも望ましいことには変わりはありませんが…それを望むなら,まっとうな保守政権への(党内でも党外でも)政権交代を完遂しておくことが不可欠でしょう.
…ということで,石破には一日もはやく退陣して貰うことが日本復活の必要条件であることは,こうした対米関係を考えるだけでも,明らかだということがクッキリと見えてきますですね.
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「フジの日枝」を超える「戦後日本の怪人」たるナベツネこと「渡邉恒雄」氏の逝去に際し,日本の戦後とは何だったのかを考える.
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関西発展のために絶対に必要なこと ~ソフト政策を言うと賢く見え,インフラを主張すると馬鹿に見られるけど,インフラが一番大事,という話~
https://foomii.com/00178/20250203145256134554
「今の日本がダメなのは財務省のせいじゃなく,そんな財務省の暴走を放置する国民の無責任のせいだ」っていう話しと「なぜ馬鹿がいるのか」という話.
https://foomii.com/00178/20250202102232134501
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