日本経済

2020年5月30日

【平松禎史】「霧につつまれたハリネズミのつぶやき」第六十八話:『「なくても良かった探し」がはじまる。』

From 平松禎史@アニメーター/演出家

 

5月に入ってからの官民の景気動向調査はどれも調査開始以来最低最悪のレベルに落下しました。

TDB 景気動向調査(全国)―2020年4月調査―
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/202005_jp.pdf
《2020年4月の景気DIは前月比 6.7ポイント減の 25.8となり 7カ月連続で悪化、 前月に続いて過去最大の下落幅を更新した。》
《業界別:全10業界が悪化、14業種で景気DIが過去最低に》
《規模別:全規模が 7カ月連続で下落、「中小企業」は過去最大の下落幅》
《地域別:2カ月連続で全 10地域 47都道府県が悪化、地域経済の活動停滞》

 
 
真っ逆さまですね。
帝国データバンクの調査開始以来はじめての下落ぶりです。

内閣府の景気動向調査、3月の調査結果は先行指数(改定値)が-7.2ptとなりました。
https://www.nippon-num.com/economy/ci.html

同景気ウォッチャー調査も3ヶ月連続下落し、調査開始以来最低最悪に落下。
https://www.nippon-num.com/economy/watcher.html

GDPの約4割を占め、景気の先行指数にもなる鉱工業指数は、2018年11月より生産・出荷が下落傾向になり、在庫は増加傾向になった。生産・出荷の下落と在庫増加状況はすでに1年4ヶ月つづいています。国民が貧困化し、消費ができなくなっている。
https://www.nippon-num.com/economy/iip.html

内閣府の調査では雇用関連も大幅に下落しておりますので、これまで継続していた人手不足による人件費負担がコロナ禍による業績悪化でさらに増し、企業はコストカットのため人件費抑制、人減らしをはじめる可能性が高い。
ただでさえ、人を雇えずに倒産・廃業が増えていた状況に、コロナ禍による「企業淘汰」が重なる恐れが濃厚にあります。

TDBの計量経済モデルによる推定は、今月も前月同様3ヶ月後には横ばいに「持ち直す」ラインになっていますが、そうなるとは思えません。今月と同じ下落幅なら来月10pt台まで悪化するのですからボクの推測なんて甘々ってことです。
景気DIの判断は「非常に悪い」がゼロですから、マイナスになることはありません。「良い/悪い」の中間値「50」を下回れば「悪い」のです。安倍政権で「良い」領域に上がったのは外需が調子良かった頃の3ヶ月程度しかありません。18年からの世界経済の低迷後は悪化がつづき、10%消費増税ですでに虫の息まで悪化させられ、ウイルス禍でとどめを刺された。
4月中盤から新規感染確認者が減りはじめました。しかし、「自粛強制」による消費の減少はつづいている。政府の財政支援は消費増税による悪化を埋めることすらできないため焼け石に雫です。
TDB調査による「新型コロナ関連倒産」は、5月21日現在の累積で174件。増加率は下がったものの、5月のコロナ倒産は100件を超えそうな勢いです。
https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html
 

倒産件数に入らない休廃業・解散も増えている。
TDBの推計では、今年の休廃業解散は25000件を見込んでいるそう。
東京新聞が掲載しているグラフを見ればわかりますが、倒産と休廃業解散の増加は19年も増えており2年連続になる。外需で好調だった17年から減った2年間が帳消しになる可能性大です。つまり、景気の悪化、耐えられない企業が倒れていく状況は「新型コロナのせい」ではなく、「安倍政権のせい」。原因に着目すれば「緊縮財政のせい」だということがわかります。

全国対象になっていた緊急事態宣言は解除され、大阪など西日本の宣言は解除されました。
関東や北海道も来週には解除が検討されます。 (5月22日執筆時点)
感染拡大が抑えられ医療環境の改善が見られたため、ということですが、財政支援をしたくないから解除していくのでしょう。二次補正案が検討されるようになりましたが、政府は財務省の求めに応じて小規模に留めたいのだろう。10万円給付を決断したのは、公明党が選挙協力しないことをほのめかしたおかげであって、総理は国民を守ることより、政権安定のほうが重要なのです。
 
国民は追加支援を求めることをあきらめ、自粛強制に慣れていく。
検察庁法改正の騒動と黒川氏の賭け麻雀発覚&辞職で財政支援のことが吹っ飛びそうだ。
 
財政支援が不足すれば、耐えられない企業がどんどん潰れていく。
ある自民党幹部は、「コロナに耐えられない企業は潰れても構わない」と言ったそうだ。
収束が見えはじめた途端「増税、または新税創設」が決まっていく可能性も高い。
政府が作ったコロナ対策会議に選ばれた経済学者の多くは「財政破綻論者」の緊縮派であり、増税推進、または容認派ばかりだ。

+ + +

ここまでは、データーによって抽出された現実に基づいて描写しました。
ここからは推測が主になります。残念ながら、これまでの経路で考えれば悪い推測しか立てられません。

+ + +

国民はウイルス禍の時代を生き抜くため、または終息後の生き方を考え生活様式を変えはじめている。
要請が解かれても、「本当の自粛」がつづくでしょう。

中野剛志さんは、「没落について」と題した数年前の講演で、マキャベリ、F.リスト、オルテガ、サッチャーなど歴史的偉人のことばを引用しました。要約すればこうです。

人類の状況は、発展していくか没落していくかのどちらかしかない。

つまり、安定的な状態がつづくことなどないのです。発展につながる政策を模索できれば発展するが、どこかで間違ってしまえば没落へ転じる。没落を自覚しない限り、没落へとどんどん落ちてしまうのだ。
諸外国の政府は状況悪化を自覚し、財政拡大で没落を防ぐ努力をしています。
しかし安倍政権は、悪化が政策ミスだったことを認めていない。
「没落、この道しかない」といった具合ですから、このままでは改善しないでしょう。

今後はどんな時代になるのだろう?
 
ボクが推測するのはこれだ。

「なくても良かった探し」の時代
 
これまで必要だと思っていたもの
これまで必要だと思っていたお店
これまで必要だと思っていた作業
これまで必要だと思っていた役職
これまで必要だと思っていた企業
これまで必要だと思っていた業界
これまで必要だと思っていたお金
これまで必要だと思っていた人
 
それを、「なくても良かった」と選別して、捨てていく時代だ。
 
そうしなくては、生き残れない時代が来る。

政府は、「なくても良かった」ものを捨てていく改革案を立てていくだろう。国民が同じ気分に陥っていれば「 なくても良かった探し」が全国的におこなわれる。
 
それが意味するのは
 
いなくても良い人を探し出して殺す、ということだ。

それはとっても爽快な社会なのだろう…。

 
とんでもない! と思う人は政治思想を転換させましょう。
基本的な政策を転換させましょう。
没落を防ぎ発展へ転じる模索をしよう。

政府が国債発行することで国民の手に10万円給付がやってきた(足らない上に手続きが煩雑で貰ってない人が多いようだが)。
国債発行は、税金を使ったり民間の貯蓄を切り崩しておこなうのではなく、政府が新たに貨幣発行して国民に投資するものだということが明らかになったのです。

ならば、躊躇なく堂々と、国債発行を増額し、国民を助けるべし。
政府にはその力があるのです。
国民は政府に、「人を助けろ!」 と言いつづけましょう。それが自分や家族や街の人々を助けることになるのです。
間違いだった緊縮財政を改めさせ、長期的な財政拡大路線へ転換させましょう。

「なくても良かった探し」に陥ってはいけない。

○コマーシャル
ボクのブログです。
https://ameblo.jp/tadashi-hiramatz/

TVアニメ『呪術廻戦』にキャラクターデザインなどで参加しています。
2020年10月放送開始。

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  1. たかゆき より

    世の中に

    死ぬほど楽は なかりけり

    浮世の馬鹿は 生きて働く

    あるいは、、

    死ぬは楽 生きて地獄のサマを見る

    人間の幸福とは
    この世に生まれぬこと なのだ♪

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  2. 赤城 より

    >「なくても良かった」と選別して、捨てていく時代だ

    日本人皆が無くても良かったものとして選別される時代が
    目前に迫っていますね。

    生まれなくてよかったのにという社会が日本でもうできてしまったのではないか。

    「没落、この道しかない」

    大多数が没落衰退していることすら気づけない家畜の国が作り上げられてしまった。
    屠殺場に連れられるまで自分たちの状況が分からない国民。
    エリートが屠殺側に回ってしまったつもりの国なんでしょうね。
    このまま肉にしてしまうのも本当にたやすいことになってしまっている。
    殺されるまで自分たちは勝ち続けていると信じていられるんだから。

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  3. 大和魂 より

    とにかく世の中を考えるためには、真実の歴史から学ぶ事が必須の条件です。特に大東亜戦争の経緯と真相から表と裏を学ぶと存亡の要になる経済までも理解できます。しかし役人の方々でも、それなりの時間を用して理解しますから、庶民なら更に時間が必要となり悩ましい思いですが仕方ありません。なので、このところの男女共働きには、ある意味、否定的な考えなのです。おまけに世の中も結局は時間との勝負であり、厳しい現実に直面している状況です。

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