日本経済

2017年8月7日

【三橋貴明】「デフレは貨幣現象」で五年間を無駄にした日本

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
「日本の未来を考える勉強会」消費増税の凍結を提言
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12298537095.html
政府による有効需要創出のため、PB目標破棄を!
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12298834372.html

デフレーションとは、モノやサービスへの
消費、投資としての支出=需要が、
供給能力に対し、不足する経済現象です。

なぜ、需要が不足するのかといえば、バブルが崩壊し、
国民が銀行預金や借金返済を増やし(増えました・・・)、
政府が緊縮財政で追い打ちをかけ、消費や投資を
さらに減らした結果なのでございます。

デフレとは、総需要の不足である。

この基本認識さえ維持していれば、
デフレ期の政策を間違えることはありません。

ところが、現実には浜田宏一教授らが安倍総理に
「デフレは貨幣現象」という出鱈目を吹き込み、
日本は五年間を無駄にすることになりました。

2013年2月国会において、総理はそのまま
「デフレは貨幣現象」という言葉を使い、
金融政策で変えられると明言してしまいます。

デフレは金融政策で変えられるなれば、
財政は拡大だろうが緊縮だろうが、
どちらでも構わないという話になります。

結果、2013年6月に、骨太の方針2013において
「プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標」
が閣議決定され、我が国は消費税増税、
介護報酬・診療報酬・公共投資削減という
緊縮財政の道を歩み始めました。

総需要が不足するデフレの国において、
橋本政権同様に総需要を減らす政策を
安倍政権は強行したのです。

当たり前の話として、2016年以降、
我が国は再デフレ化してしまいます。

反対側で、日本銀行は320兆円を超す日本円
(主に日銀当座預金)を発行しましたが、
2016年のインフレ率はマイナスの海に沈みました。

日本銀行が市中銀行から国債を買い取り、
日銀当座預金の残高を増やしたところで、
モノやサービスが購入されているわけではありません。

モノやサービスが購入されなければ、
消費・投資という需要は拡大しないため、
インフレ率が上昇するはずがないのです。

そんな当たり前のことを政治家が理解せず、
「デフレは貨幣現象」という出鱈目に騙され、
元々は「デフレ脱却のためには財政出動が必要」
と主張していた政治家が、次々にひっくり返っていきました。

財務省が、「デフレは貨幣現象」といういわゆるリフレ派理論を、
緊縮財政推進のために利用したのは疑いありません。

ようやく、自民党の国会議員の中から、
「デフレは総需要の不足」という事実に基づき、
消費税「凍結」もしくは「減税」、さらには財政出動による
需要創出を求める声が出てきました。

とはいえ、まだまだ少数派です。

また、先日の内閣改造後の記者会見で、麻生財務大臣は、
「個人や企業がお金を使わないならば、政府の財政支出により有効需要をつくる」
と、発言しました。

今更感が半端ないですが、
いずれにせよPB黒字化目標を維持している限り、
「どこかの予算を増やしたら、他の予算を削るか、もしくは増税」
という話になってしまうため、
有効需要創出のための財政支出など不可能です。

有効需要創出とは、あくまで政府が
「追加的に消費や投資を増やす」形の
支出拡大でなければならないのです。

PB目標の破棄を「閣議決定」しない限り、
政府は適切な需要創出策が打てず、
我が国のデフレは延々と継続することになるでしょう。

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【三橋貴明】「デフレは貨幣現象」で五年間を無駄にした日本への5件のコメント

  1. 拓三 より

    糞経済学者ども!

    カネとは信頼関係!信頼関係は歴史が作り上げる産物!
    本来、定数は国家国民の安定的価値観!そのあとに紙幣!
    紙幣を定数にしたいのならば、国民国家の信頼を強固にすること!
    都市部一極集中、地方格差、格差社会、インフラ格差、そしてグローバル経済、全て国家国民が築き挙げた信頼関係の破壊!つまり定数の破壊!本末転倒!

    国民国家の信頼関係を軽視し、紙幣と言う紙切れに定数を求めた事によりカネ=信頼が壊れ、カネ=博打に変化した世界経済。挙げ句の果てには仮想通貨の登場…..ほとんど博打!

    もう一度、『カネ』とは? を世界が見つめ直さなければ歴史が繰り返す事になるでしょう。

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  2. たけちゃん より

    三橋先生
    いろいろ教えて頂きありがとうございました。もう日本の再興は無く失われた30年に突入したと思います。
    もう希望を失いました。ひっそりと草葉の陰に身を置きたいと思います。

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  3. あいあい より

    いや、寧ろ東京オリンピック後の大不況にこそ希望があるんじゃないだろうか。
    その時には自民も民進もなくなっているに違いない。
    政情不安によって中道は右派左派共に消え去っているだろう。
    そう、これからは極右と極左の時代になるんじゃないだろうか。
    その頃にはそれまでの政権によって大量の移民も入っていることだろう。
    1930年代のドイツをそのまま繰り返す形になるんだろうよ。

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  4. ざるそば より

    私はインフレやデフレは貨幣現象であると考えています。その理由を述べるために、「貨幣現象」という言葉の定義を説明します。

    三橋さんの2015年9月28日のブログによれば、岩田規久男氏が「貨幣=マネタリーベース」と定義したとのことですが(1)、岩田氏は2013年3月21日の日銀副総裁就任時の記者会見で、デフレの原因について尋ねられた際に、貨幣的現象という言葉の意味について「マネーストックの増加率と物価上昇率の間には短期的には相関がみられないが、長期的には非常に強い相関があるということ。」という趣旨の説明をしています(2)。また、この記者会見以外のところでも、デフレ脱却のためにマネーストックを増加させることの重要性を指摘しています(3)(4)(5)。マネーストックの増加率と物価上昇率の相関関係は実際のデータからも確認できるので、「インフレデフレは貨幣現象」という考え方は正しいと思います。

    増税はマネーストックを減少させる要因であり、政府支出の拡大はマネーストックの増加要因なので、デフレは貨幣現象と考えるのであれば、デフレの時の増税に反対したり、金融政策に加えて財政政策も併用したほうがより効果的と考えるのは自然なことといえます。

    今回の記事を読んで、言葉の意味を理解しないまま議論することが、「様々な」混乱を引き起こす場合があることを改めて実感しました。

    =============================

    出典

    (1)
    続 空論の経済学|三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」2015年9月28日

    >本日、配信された「三橋貴明の「新」日本経済新聞」でも書きましたが、わたくしは過去に一度だけ、
    「デフレは貨幣現象の『貨幣』の定義」
     を直接的に聞いたことがあります。

     すなわち、現日本銀行副総裁の岩田規久男教授が、わたくしに貨幣の定義は「マネタリーベースです」と、断言したのです。

    (2)
    記者会見 2013年 : 日本銀行 Bank of Japan
    (総裁・副総裁就任記者会見(3月21日)要旨 を参照してください。)

    >つまり、インフレやデフレは貨幣的現象だという場合に、足許でのマネーストックと物価上昇率との関係があると言っているのではないのです。これは、市場が非常に長期の予想をして、貨幣供給の経路はどうなるだろうと予想して、そして、将来は貨幣供給がどこかで増えてくることを予想し、「ということは将来インフレになるのだから、例えば今のうちに買っておいた方が良い」という行動が出てくるのです。そのようにして、足許の物価下落が止まっていくということです。ですから、長期的にみると、貨幣供給の増加率と物価の上昇率は、非常に相関関係が高いのです。しかし、短期的にみると、例えば、今、マネーストックは全然増えていませんが、物価はだんだん下げ止まってくるということです。貨幣供給と物価の関係とは非常に長期の関係であって、短期的に、足許で貨幣と物価との関係があると言っているのではないのです。

    (3)
    岩田規久男著「デフレの経済学」(東洋経済新報社、2001年)の69~70ページでは、貨幣=マネーストックと定義し、84ページでは、「貨幣的現象」という言葉について、「インフレもデフレも、貨幣供給量の長期変化によって起きる貨幣的現象である」と説明し、107ページでマネーストックの増加率と物価上昇率の間には1年程度の短期では安定的な関係が見られないことを示し、109ページで5~10年程度の長期では、マネーストックの増加率が大きくなると、物価上昇率も大きくなるということをデータで示しています。

    (4)
    【講演】岩田副総裁「『量的・質的金融緩和』の目的とその達成のメカニズム」(中央大学経済研究所) : 日本銀行 Bank of Japan

    >市場参加者の予想インフレ率が上昇するのは、日本銀行が2%の物価安定目標の達成を強く約束し、その目的達成のために民間に供給するお金(このお金は現金と金融機関が日銀に預けている当座預金の合計で、「マネタリーベース」と呼ばれます)の量を大幅に増やし続ければ、将来、銀行の貸出等が増え始め、その結果、世の中に多くの貨幣(貨幣とは現金と預金の合計です)が出回るようになる、と市場参加者が予想するようになるためです。将来、貨幣が増えれば、その貨幣の一部が物やサービスの購入に向けられるため、インフレ率は上昇するだろう、と予想されるわけです。

    (引用終わり)

    ⇒市場参加者がマネーストックの増加を予想するようになると、予想インフレ率が上昇することを指摘している。

    (5)
    「高橋財政」に学び大胆なリフレ政策を–昭和恐慌以上の危機に陥らないために | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

    >リフレ政策の中心は貨幣ストックを大幅に増加させることである。

    =============================

    2017年8月10日 12:18 AMにコメントしたのですが、「あなたのコメントは承認待ちです。」と表示されたままになっていました。URLが含まれていたことがその理由ではないかと考え、URLを削除して同じコメントを投稿しました。

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