政治

2018年5月8日

【三橋貴明】続 生命の源を守る

From 三橋貴明@ブログ

本日(5/7)はチャンネル桜
「Front Japan 桜」に出演します。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1651

さて、昨日の
「民主主義と権威主義」
ではありませんが、
戦後の日本人が教え込まれてきた
「民主主義や経済自由主義は普遍的な善」
は、必ずしも正しくはありません。

フクヤマの「歴史の終わり」における、

「民主主義と自由経済が最終的に
勝利し社会の平和と自由と安定を
無期限に続く」

とは、あくまでアメリカが
「G1」として圧倒的なパワーを持ち、
グローバリズムを積極的に推進できる
時期だったからこそ、成り立った
ように見えただけなのです。

特に、経済自由主義つまりは
グローバリズムですが、
普遍的な善のはずがありません。

むろん、世界に日本以外の国が
存在しないなら別ですが、
「日本国の安全保障」を
維持しようとするならば、
「経済自由主義で~す」
などと、無分別に外国からの
輸入に頼ってはならないのです。

特に重要なのが、
兵器、食料、エネルギーです。

そして、食料の中でも
「生命の源」たる「タネ」
については、外国からの輸入を
締め出しても、国産で、
かつ多種多様優良なタネの
生産を維持する必要があります。

そのための法律が、
かつての日本に存在しました。

『地方議会「種子法復活を」
食の基盤、揺らぐ懸念
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018050202000071.html

日本の食卓に欠かせないコメと麦、
大豆の種子の安定供給を
都道府県に義務付けていた
「主要農作物種子法」が三月末で
廃止されたことに、
懸念の声が高まっている。

地方議会では国に対応を求める
意見書が次々と可決され、
消費者の関心を映画で高めよう
とする市民運動も拡大。

こうした動きを受けて、野党は
同法の復活法案を今国会に提出した。

種子法は戦後の人口増加による
食糧難を防ぐため、
一九五二年に制定。

国の財政支援を受けて、
都道府県の農業試験場などが
コメなどの種子を開発・管理し、
農家に安定供給する目的で、
結果的に民間の種子開発を規制。

種子法に守られて現在、
コメでは三百種以上の
国産種子が流通している。

政府は昨年二月に
「種子の品質は安定し、
法の役目を終えた」
「民間参入の妨げになる」
として、種子法の
廃止法案を国会に提出。

学校法人「森友学園」問題などで
国会が紛糾する陰で
あまり注目されず、
与党などの賛成で成立した。

この決定に地方は敏感に反応した。

種子法の廃止で、種子の
価格高騰や少量生産品種の
淘汰(とうた)、研究者や
研究成果の情報が巨大な
外資系企業に移ることなどが
懸念されるからだ。(後略)』

現在、日本には300種以上の
「優良なコメの種」が
流通していますが、これは
国民の税金で支えている
(支えていた)ためです。

民間の「自由」に任せた場合、
タネの多様性は確実に失われます。

理由は、多種多様なタネを
生産し続けることは、
コストがかかりすぎ、
利益にならないためです。

タネは生命の源です。

生命の源が一部の品種に
「集約」していくことは、
かなり怖い話です。

何しろ、何らかの
遺伝子クライシスが発生した際に
「代替のタネがない」状況に
陥りかねません。

そうなると、日本国民は
下手をすると全滅です。

タネについても、

「可能な限り多種多様な供給を確保し、
リスクを分散する」

という、安全保障の肝を
守る必要があります。

だからこそ、日本国は
税金でタネを支えていた。

その根拠法が種子法だったのです。

記事の後半で山田正彦元農相が、

「かつて国産100%だった
野菜の種子は、法規定が
なかったため現在では九割以上が
外国産に置き換わり、
しかも多くが米国のモンサントや
デュポンといった世界的
メジャー企業に独占されている」

と、種子法に含まれなかった
野菜のタネの「自由化の結末」
について解説しています。

もちろん、すぐにというわけでは
ありませんが、種子法廃止により
日本の食糧安全保障は
長期的に壊れていくことになります。

ちなみに、中国ではすでに
雄性不稔のF1個目が、
イネ全面積の六割に達しています。

雄性不稔とは、花粉が作られないため
受粉ができず、毎年
「必ずタネを買わざるを得ない」
という品種になります。

アメリカも、すでに
雄性不稔F1が四割です。

それに対し、日本は1%弱と、
まだまだ「普通のイネ」が主流です。

雄性不稔F1をどこの企業が
生産しているのかといえば、
もちろんモンサント、バイエル、
シンジェンタ、ダウ・デュポン
といったアグロバイオ
メジャー企業です。

種子法を復活させない限り、
我々は主食のコメについてまで、
雄性不稔F1(しかも遺伝子組み換え)
のタネを、毎年外国企業から
購入せざるを得ないという
事態に追い込まれるでしょう。

国会も正常化するとのことですし、
野党が提出した種子法復活法案を
早急に審議し、可決してほしい
と願っています。

日本国民の生命の源を守る。

これ以上、日本の国会議員に
ふさわしい仕事はないはずです。

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