政治

2017年11月15日

【佐藤健志】若者が政治に求めているのは「結果」だ

From 佐藤健志

11月3日、BSフジ「プライムニュース」に出演しました。
http://www.bsfuji.tv/primenews/

他の出演者は
津田大介さん(ジャーナリスト)
三浦瑠麗さん(国際政治学者)
古市憲寿さん(社会学者)
でしたが、テーマはなんと!

『「若者×政治」相関図 “保守化傾向”の核心 “炎上”のメカニズム』

私の本のタイトルそのままじゃないですか。

『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)
http://amzn.asia/7iF51Hv(紙版)
http://amzn.asia/cOR5QgA(電子版)

プライムニュースについては、ハイライトムービーが前後編で配信されていますので(※)、興味のわいた方はそちらもご覧下さい。
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/day/d171103_0.html(前編)
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/day/d171103_1.html(後編)
(※)期間限定なのでご注意を。

ここでは番組で十分触れられなかった、若者の政治意識の特徴の詳細を論じます。

テーマに謳われた「保守化」とは、10代・20代の間で自民党への支持が高い現象を指している。
ただし現在の自民党は、急進主義的改革政党といっても過言ではありません。

よって同党への支持が高まっていることを「保守化」と呼ぶのが適切かは、少なからず疑問の余地がある。
が、この点は脇に置きましょう。

10月の総選挙をめぐるデータを見ると、昨今の若者の政治意識について
「自民党を支持する傾向が高い」
という形でまとめるのが適切かどうか、まず問われるからです。

たとえば日本経済新聞が10月22日に発表した出口調査。
10代の有権者の支持政党と、有権者全体の支持政党を比較した円グラフがあります。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22561000S7A021C1EA2000/

これによると、10代の自民支持率は39.9%。
グラフ化されていませんが、20代は40.6%とのことです。
有権者全体の自民支持率は36%ですから、たしかに4%前後高い。

しかしですな。
もっと目立っている数字があるのですよ。
立憲民主党の支持率、ないしその低さ。

有権者全体の立憲支持率は14%なのにたいし、10代の支持率は7%なのです。
20代も10%以下だったとのこと。
いいかえれば、4~7%低い。

となると若者は「自民党を支持している」というより、「立憲民主党を支持していない」と見なしたほうが正しいことに。
保守化しているのではなく、〈反リベラル化〉しているという話です。

ならば、実際に自民党に投票した者の比率はどうか。
時事通信の出口調査を見ると、比例で自民党に投票した10代有権者の比率は46.1%。
同じく立憲民主党に投票した者の比率は12.7%です。
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_election-syugiin20171022j-06-w430

NHKの出口調査でも、自民党に投票した10代有権者は47%、立憲に投票した10代有権者は13%と、ほとんど同じ結果が出ました。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2017_1024.html

しかるにNHK調査をもとに、有権者全体について、自民党に投票した者の比率を計算すると、約37%になります。
立憲民主党に投票した者の比率は、約19.4%。
反リベラル化(=立憲民主党に投票しない)傾向より、保守化(=自民党に投票する)傾向が際立っているのです。

けれども
〈支持政党をたずねたときは「反リベラル化」が目立ち、投票先をたずねたときは「保守化」が目立つ〉
のであれば、
それはつまり
〈支持政党が決まっている(=政治的関心の高い)若者はリベラルを支持しない傾向が強く、
支持政党が決まっていない(=政治的関心の薄い)若者は保守を支持する傾向が強い〉
ことを意味するのではないでしょうか?

ひとくちに自民党支持と言っても、
政治に積極的な関心を持つ若者は消極的に支持し、
政治に消極的な関心しか持たない若者は積極的に支持するというわけです。

一体、このねじれは何を意味するのか。
ここで注目されるのが、希望の党にたいする反応。

政治に積極的な関心を持っている若者は反リベラルの傾向が強いとすると、
公認候補選定にあたって「リベラル排除」を宣言した同党は、支持を集めても良さそうなもの。
ところが、そうはならない。

日経の調査によれば、希望の党を支持すると答えた10代有権者は10.7%と、有権者全体(11.8%)より低いのです!

ならば投票率はどうか。
時事の調査では、希望の党に入れた10代有権者は16.6%。
NHKでは16%。
またもや、ほとんど同じです。
ちなみにNHKによると、20代有権者の投票率は14%でした。

ところがNHK調査をもとに、有権者全体について、希望の党の投票率を計算すると16.3%!
10代有権者の投票率こそ、これをわずかに(0.3%)上回っていますが、20代になると2.3%下回る。
希望の党については、支持政党の有無と関係なく、若者はあまり支持していないのです。

となると若者の政治意識については、以下の結論が導かれる。
1)政治的関心が強い若者は反リベラル志向。
2)政治的関心が薄い若者は保守志向。
3)新党については、政治的関心の有無と無関係に懐疑的。

立憲民主党への支持の低さも、一つにはこの「新党への懐疑」で説明できるでしょう。
さあ、ここからいかなる洞察が得られるか?

私が判断するところ、若者の政治意識に見られる真の特徴は、「保守化」でもなければ「反リベラル化」でもなく、
ずばり「経世済民志向」なのです。

現在の若者(30歳以下)は、低迷・衰退をはじめたあとの日本しか知らない。
消費税導入は28年前、
バブル崩壊は27年前、
55年体制の終焉は24年前、
デフレ不況の始まりは20年前ですからね。

そして「右の売国、左の亡国」的状況や、「炎上政治」ばかり見せられてきた。
言っちゃ何ですが、このままでは日本は本当に「世界の中心で消滅する」ことにもなりかねません。

『右の売国、左の亡国 2020年、日本は世界の中心で消滅する』
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しかも若者は今後の人生が長い。
「もっと国をちゃんと治めてくれ!」と思うのが自然ではありませんか。
つまりは「経世済民について、しっかり結果を出せ!」ということです。

先に挙げた三つの特徴も、これできっちり説明できる。
結果重視ですから、海のものとも山のものともつかぬ新党には懐疑的。
非現実的な観念論にとらわれるリベラルもダメ。

安全保障については、あいかわらず憲法九条にこだわり、
経済政策についても、成長戦略に十分な関心を払わないまま、分配の平等と弱者救済を説いてばかりというのが、リベラルの実情ですからね。

だが自民党は、はたして結果を出しているか?!

政治に関心のない若者なら、
「選挙に勝ちつづけて、長期政権を維持しているからには、結果も出せているんじゃないか? 僕たちの就職も良くなっているんだし」
と思うかも知れない。
だが政治に関心を持てば持つほど、
「対米従属、グローバリズム、緊縮財政志向の三点セットに終始しており、お世辞にも経世済民を達成しているとは言えない」
ことが見えてしまう。

「政治に積極的な関心を持つ若者は自民党を消極支持、政治に消極的な関心しかない若者は自民党を積極支持」
という結果が出るのは、まったく当然の話なのであります。

だとしても、経世済民について結果を出せる政治勢力がないまま、国がいつまで持つかは別問題。
エドマンド・バークがフランス革命について述べたコメントではないものの、
「事態は日を追って収拾がつかなくなっている」
恐れだってあるのですよ・・・

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
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ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)11月24日、赤坂CHANCEシアター(東京都港区赤坂2-6-22 デュオ・スカーラ2B1F)でトークライブをやります。
題して・・・
「勝手にしやがれ! 天下国家VOL.2
 天高く総崩れの秋~希望も足りない! 絶望も足りない!」

18:00オープン、19:00スタート。
司会はSayaさんで、チケットはワンドリンク付3500円です。
参加のお申し込みや問い合わせは、主催団体「カルティベイトの会」までどうぞ。
http://peatix.com/group/52292
または
cultivate1group@gmail.com

2)日本文化チャンネル桜の番組「FRONT JAPAN 桜」で、佐波優子さんと一緒にキャスターを務めます。
11月17日(金)20:00~21:00
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1651

3)戦後脱却も、ただやればいいというものではありません。経世済民について結果を出せないような戦後脱却は、ずばり亡国への道。

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/(紙版)
http://qq4q.biz/uaui(電子版)

4)経世済民をいったんは達成できた戦後日本が、「富国弱兵」へのこだわりから衰退・没落していった過程の記録です。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
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5)「富国弱兵路線の経世済民(=戦後日本の基本的な方向性)は、本質的に長続きしえない」という真実から目を背けようとした結果、保守もリベラルもすっかり自己矛盾に陥ってしまいました。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
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6)「バカげた理念を、行き当たりばったりの実践でどうにか埋め合わせようとする過程について、いちいち追いかけて何になろう」(エドマンド・バーク)
政治の目的は経世済民の達成です。事態が総崩れの様相を呈しているときこそ、この基本に立ち返りましょう。

『本格保守宣言』(新潮新書)
http://amzn.to/1n0R2vR

7)「独立の偉業さえ達成できれば、負債など物の数には入らない。そもそも、国は負債を持つべきなのだ」(176ページ)
「独立」を「経世済民」に置きかえても同じです。だ・か・ら、プライマリーバランス黒字化目標を破棄せよと言うのですよ!

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
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8)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
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