政治

2017年10月18日

【佐藤健志】天高く総崩れの秋

From 佐藤健志

さる6月22日、新宿でトークライブをやりました。
題して「勝手にしやがれ! 天下国家~歴史に筋を通す」。

Sayaさんが司会を務めて下さったうえ、後半は藤井聡さんまで(ほろ酔い加減で)ゲストに登場。
おかげで盛り上がり、大成功でした。

というわけで、11月24日(金)に第二回をやります!
今回のテーマはこれ。
勝手にしやがれ! 天下国家VOL.2
天高く総崩れの秋~希望も足りない! 絶望も足りない!」。

会場は赤坂CHANCEシアター(東京都港区赤坂2-6-22 デュオ・スカーラ2 B1F)。
18:00オープンで、19:00スタート。
チケットはワンドリンク付きで3500円となります。

司会は前回に続いてsayaさん。
みなさん、ぜひおいで下さい!

参加のお申し込みや問い合わせは、主催団体「カルティベイトの会」までどうぞ。
http://peatix.com/group/52292
または
cultivate1group@gmail.com
となります。

さて。
「天高く総崩れの秋」というタイトルを考えたのは、衆議院が解散される前のこと。
とはいえ、その後の展開を見ると、予想以上にそのものずばりでした。

なにせ今度の総選挙は、経緯が本当にメチャクチャ。
民進党のゴタゴタに乗じた安倍総理が、
「いま選挙をやれば(まだしも)勝てる!」という〈政局ファースト〉のノリで解散を表明したとたん、
小池都知事がそれ以上の〈政局ファースト〉ぶりを発揮して「希望の党」を旗揚げ!

策士策におぼれる、自民大敗か?!
・・・と思ったら、民進党のリベラル派をめぐる排除騒ぎで、希望の党ブームもあっけなく消滅!

くだんの排除騒ぎについては、「これでリベラルは壊滅だ、ザマ見れ♪」と喜ぶ向きもあるようですが、どうしてどうして。
苦戦が伝えられる希望の党とは対照的に、枝野幸男さんが立ち上げたリベラル系新党「立憲民主党」は躍進が予想されています。
公示前議席(15)を二倍以上、ことによっては三倍に増やすと見られているんですからね。
世の中、壊滅ほどの躍進はなし!
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171013-00000095-asahi-pol.view-000

だいたいリベラル排除を宣言するや、飛ぶ鳥を落とす勢いだった希望の党ブームが吹っ飛んだのですから、
ふつうに考えれば〈国民は思いのほか、リベラル勢力を求めていた〉ことになるでしょう。

片や与党(つまり自民+公明)については、過半数の233議席どころか、300議席超えをうかがう勢いという結果が出ていますが、
これについては政権幹部が次のようにコメント。

ありえない議席数だ。今は風は全く吹いていない。ここからどういう流れになっていくか全く見えず、楽観はできない。

自民党幹部も「こんなに勝てるとは思わない。議席は必ず減らす」と述べたそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171012-00000005-mai-pol

野党幹部が〈ありえない! 与党がこんなに勝つものか、向こうの議席を必ず減らしてやる!〉と言っているのではありませんよ。
政権や与党の幹部みずから、〈ありえない! われわれがこんなに勝つものか、こちらの議席は必ず減る!〉旨を言っているのです。

それはまあ、ほんの少し前までは、
〈自民党は200議席を切る大負けとなるかも知れない。その場合、安倍内閣は即退陣だ〉とか
〈そこまで行かなくとも単独過半数を失えば、総理の責任論が出るだろう〉
といった予想がなされていました。
https://www.dailyshincho.jp/article/2017/10120555/?all=1&page=1

いきなり「大勝できるよ、良かったね!」と言われても、にわかには信じがたいところでしょう。

自民党の二階俊博幹事長にいたっては、塩谷立(しおのや・りゅう)選対委員長と連名で
〈圧勝報道が出たからと言って安心するな! 一票も取りこぼすことのない万全の態勢を!〉
と戒める「緊急通達」を候補者の事務所に送ったとか。
いわく。

勝利はもはや確実のような報道がなされているが、現状は一瞬たりとも楽観を許さない極めて厳しいもの(だ)。
報道とは逆に、情勢の悪化を招いている候補が各地で見られる。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171013-00026782-nksports-soci

自民大勝の予想は、倒閣を狙った虚偽報道だ、ってか?!

なんと、これにすら根拠がないわけではない。
NHKが10月7日~9日に行った世論調査によると、安倍内閣の支持率は37%と、9月に比べて7ポイント低下したのです。
逆に不支持率は、7ポイント上がって43%となりました。
http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/

要約すればこういうこと。
都議選で大惨敗したばかりの与党が、わずか二ヶ月後に衆議院解散を断行。
大敗が危惧されたものの、つづいて大勝の見込みが伝えられ、にもかかわらず内閣支持率は低下!

・・・ワケワカです。
そしてこれが「総崩れ」でなくて何でしょう。

要するに今や、わが国の政治は論理がまるで通用しない状態になっているのですよ。
政局、つまりは風の吹き具合がすべて。

裏を返せば、すべての変化が炎上となるうえ、風がどちらに吹くかによって、どんな炎上でも起こりうる。
まさに「炎上日本」ではありませんか。
♪ニッポン見たけりゃ、今見ておきゃれ、いずれニッポン燃え落ちる!

『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)
http://amzn.asia/7iF51Hv(紙版)
http://amzn.asia/cOR5QgA(電子版)

戯れ歌はさておき、問われるべきは、これが経世済民の達成にいかなる影響を与えるか。

政局と経世済民は、必ずしも別物ではありません。
経世済民を達成するには、政治的なリーダーシップが不可欠。
他方、リーダーシップを発揮するには、しっかりした権力基盤が必要です。
政局を無視して、そのような権力基盤が構築できるはずはない。

すなわち、政局の掌握は経世済民の必要条件。
政局を有利にすることなくして経世済民の達成はない、ということです。

けれどもこれは、政局の掌握が経世済民の十分条件であることを意味しません。
政局を有利にすることさえできれば、経世済民は達成できる、ということにはならないのです。

そして今回の総選挙をめぐる一連の政局が、およそ経世済民の達成に結びつくものでないことは、
〈積極財政によるデフレ脱却〉を謳う政党が存在しないことを見ても明らかでしょう。

北朝鮮の脅威に関しては、さすがに取り沙汰されていますが、これにしたところで敵基地攻撃能力の検討や、核武装の可能性といった話は出てきません。
緊縮財政へのこだわりを思えば、全国規模のシェルター整備も論外と思われます。
景気刺激の効果もあれば、自然災害対策にもなる、一石三鳥の政策なんですけどね。

だ・か・ら、
『右の売国、左の亡国』と言うのですよ!
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https://www.amazon.co.jp/dp/B06WLQ9JPX(電子版)

経世済民が捨て置かれたまま、政局がいたずらに変転する現状については、三橋貴明さんも10月11日のブログで、
「だから『希望なき選択の選挙』と言うのですよ!(何となく、どなたかの真似をしてみた)」
とバッサリ。

平松禎史さんなど、9月20日のブログで「増税解散・絶望選挙」と言い切りました。

事態がこのまま安定することは、まずありえない。
最終的に落ち着くまでには、紆余曲折が多々あるだろう。
そしてそのたびに、炎と血の洗礼が待っているに違いない。

フランス革命の行く末について、エドマンド・バークは初期の段階でこう見通しましたが、わが国にも同じことが言えるのではないでしょうか。
さあ、希望なき選挙の顛末やいかに?

『新訳 フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)
http://amzn.to/1jLBOcj (紙版)
http://amzn.to/19bYio8 (電子版)
6刷達成! ありがとうございます。

なお次週、10/25はお休みします。
11/1にまたお会いしましょう。
ではでは♪

<佐藤健志からのお知らせ>
1)10月16日発売の『表現者』75号(MXエンターテインメント)に、評論「日本よ、汝は何処にも行けぬ」が掲載されました。

日本はどこに行くのか? という議論が多々見られる。
だが、それらは「日本はどこかには行けるはずだ」という暗黙の前提のうえに成り立っている。
この前提は正しいのか?
本当はどこにも行けないのではないか?

敗戦をめぐる手塚治虫さんの一連の漫画作品を題材に、上記のテーマを考えます。ぜひご覧下さい。

2)戦後脱却をめぐる試みも、「日本はどこかには行けるはずだ」ということを前提にしています。それが間違っていたらどうなるのか? 詳細はこちらを。

『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳間書店)
http://www.amazon.co.jp//dp/4198640637/(紙版)
http://qq4q.biz/uaui(電子版)

3)右も左も、なぜ経世済民を捨て置くのか? そこにひそむ理念的な矛盾と逆説を論じます。

『愛国のパラドックス 「右か左か」の時代は終わった』(アスペクト)
http://amzn.to/1A9Ezve(紙版)
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4)経世済民の道を邁進するはずだった戦後日本が、ワケワカな政局の堂々めぐりに陥っていった過程の記録です。

『僕たちは戦後史を知らない 日本の「敗戦」は4回繰り返された』(祥伝社)
http://amzn.to/1lXtYQM

5)「バカげた理念を、行き当たりばったりの実践でどうにか埋め合わせようとする過程について、いちいち追いかけて何になろう」(エドマンド・バーク)
事態が総崩れの様相を呈しているときこそ、基本に立ち返りましょう。

『本格保守宣言』(新潮新書)
http://amzn.to/1n0R2vR

6)「独立の偉業さえ達成できれば、負債など物の数には入らない。そもそも、国は負債を持つべきなのだ」(176ページ)
どうもわが国では、「プライマリーバランス黒字化の偉業さえ達成できれば、亡国など物の数には入らない」ということになっているようです。

『コモン・センス完全版 アメリカを生んだ「過激な聖書」』(PHP研究所)
http://amzn.to/1AF8Bxz(電子版)

7)そして、ブログとツイッターはこちらをどうぞ。
ブログ http://kenjisato1966.com
ツイッター http://twitter.com/kenjisato1966

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