政治

2017年7月21日

【三橋貴明】Democratic rebellion in Japan 後編

From 三橋貴明@ブログ

中野剛志先生が柴山桂太先生との対談本
「グローバリズム その先の悲劇に備えよ 」に関連し、
インタビューに答えていらっしゃいます。

「グローバリズム その先の悲劇に備えよ」中野剛志氏
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/209748

チャンネル桜「Front Japan 桜」に出演しました。

【Front Japan 桜】
Democratic rebellion~日本における民衆の反乱
/ 2017年後半を見る / 7.15「台湾正名」請願署名活動 in 浅草[桜H29/7/19] https://youtu.be/AoP2yZGThr0
http://www.nicovideo.jp/watch/1500443634

グローバリズムのトリニティは、緊縮財政、自由貿易、
そして規制緩和の政策パッケージになります。

総理の言う「岩盤規制」云々は、もちろん規制緩和政策の一環です。

そもそも規制とは、安全保障の強化、消費者保護、
環境保護、業界の維持・発展、サービス品質の確保、
文化伝統の維持等、様々な理由から
政府が法律として定めた参入障壁になります。

「参入障壁」である以上、規制の中には
「一部の国民」あるいはグローバリストが
緩和もしくは撤廃を望むケースもあるわけです。

すなわち、規制という参入障壁を引き下げることで新規参入を果たし、
自らのビジネス、利益と化そうと欲するグローバリストにとって、
規制は「ビジネスの邪魔」なのです。

ちなみに、わたくしは「規制緩和イコール悪」などと極論を
言いたいわけではありません。
日本国民の豊かさと安全、つまりは経世済民のために、
規制緩和しなければならない分野もあるでしょう。

問題視しているのは、規制の中には、

「緩和したところで、特定のグローバリストの利益最大化につながるのみで、
経世済民には貢献しない」

ケースがあるという現実です。

とはいえ、国民の豊かさや安全に繋がらない規制緩和が、
果たして国民の支持を得ることができるでしょうか。

国民に情報が共有されている限り、不可能です。

自己利益の最大化を追求するグローバリストにとって、
民主主義は敵なのです。
(そういう意味で、民主主義が存在しない中国は、
グローバリストにとって天国です)

というわけで、グローバリストは「民主主義が成立している先進国」において、
様々な手練手管を用い、民主主義をパススルーして
「自己利益最大化」のための政策(基本は規制緩和)を実現しようとします。

アメリカでは、グローバル企業がロビイストと「カネ」を使い、
政治家を動かし、自社に都合がいい法改正を実現しようとします。
いわゆる、コーポラティズムですね。

そして、日本では規制改革推進会議、未来投資会議など、
国会の審査を経ていない首相の諮問機関に入り込んだ
民間人(民間議員ではありません)が勝手に政策を決め、
安倍総理が閣議決定し、国会に下されます。

日本ではすでに、民主主義が成立していません。

上記、民主主義を無視した安倍政権の規制緩和手法の一つが、
まさに国家戦略特区だったのです。

『加計学園  認定2カ月前、山本担当相「四国に新設」
https://mainichi.jp/articles/20170720/k00/00m/040/162000c
獣医師会に 山本氏側「四国で決めたとは言っていない」

安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」が
愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画を巡り、
国家戦略特区を担当する山本幸三地方創生担当相が、
学園が学部開設の事業者に選ばれる2カ月前の昨年11月17日、
日本獣医師会役員らに対し、「四国に新設することになった」と伝えていたことが
獣医師会側の内部文書で分かった。

山本氏は学園を名指しし費用負担についても言及していたとされる。
学園を前提に手続きが進められていたことになるが、
山本氏側は「四国で決めたとは言っていない」と反論している。 (後略)』

別に、国家戦略特区諮問会議(議長は安倍総理)で
認定する前の時点で、山本大臣が「四国に新設」と言ったところで、
法的には問題ありません。国家戦略特区とは、「そういう制度」なのです。

チャンネル桜の番組で、浅野さんがいみじくも言っていましたが、
国家戦略特区とは「依怙贔屓」の制度でございます。

総理と政治的な関係が強ければ、
自らに都合がいいように特区において規制緩和を実現できます。

ちなみに、わたくしは「四国に獣医学部を新設することは良いことだ」云々の
議論をする気はありません。
文部科学省や獣医学会の
「キトクケンエキガー」とやらにも興味はありません。

そもそも、国家戦略特区とは「依怙贔屓の制度」であるという
事実を書いているだけです。何しろ、

「内閣総理大臣主導で、国の成長戦略を実現するため、
大胆な規制改革等を実行するための突破口として、
国家戦略特区を創設する(国家戦略特別区域基本方針)」

のが、国家戦略特区なのです。

というわけで、わたくしは総理が「主導」して
加計学園の獣医師会新設を決定したとしても、
山本大臣が認定二か月前に「四国に新設することになった」と
発言していたとしても、何の疑念も抱きません。
しつこいですが、国家戦略特区とは「そういう制度」なのでございます。

とはいえ、多くの国民は「納得がいかない」と感じたのでしょう。
あるいは「感じる」のでしょう。

だからこそ、山本大臣も「四国で決めたとは言っていない」と、
否定せざるを得ないだと思います。

デフレで貧困化が続き、ルサンチマンを貯めこんだ日本国民にとって、
特定の誰かが「依怙贔屓」されている現状は、許しがたい話なのです。

グローバリストは、国家戦略特区のような規制緩和を推進する際に、
国民のルサンチマンを活用します。
だからこそ、今回も「獣医学会という既得権益が~」といった、
陳腐な「同じ国民への攻撃」がなされているのでしょう。

とはいえ、国家戦略特区は「依怙贔屓の制度」なのです。
ルサンチマンを抱えた国民は、獣医学会のような特定の団体にも
怒りを向けるかもしれませんが、同時に「依怙贔屓」を推進した政権にも
憎悪を振り向けるのです。

ルサンチマンを活用して構造改革を推進した安倍政権が、
国民のルサンチマンにより窮地に追い込まれる。

実に、皮肉な話です。

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【三橋貴明】Democratic rebellion in Japan 後編への4件のコメント

  1. komiyet より

    今の日本は国に理念も哲学もないから、私が生きているうちに滅びると思っています。今は半殺し状態だから、愚民によって自滅していくと思っています。

    金魚は金と手間をかけないと鮒に戻っていく。

    それと同じように、国土強靭化、つまり金と手間をかけないと、元に戻って行く、つまり発展途上国化する。

    日本の歴史がいくら素晴らしくても、敗戦後に育った愚民によって我が国は滅亡するのです。

    国が哲学を持たなければ、国の為に、人の為に生きるという国民はいなくなり、自分の感情を満たすためだけに生きる身勝手で利己的な愚民ばかりになります。

    国が哲学を持たないとどうなるのか この目で見てやる!

    中国や北朝鮮は哲学を持っているので、これからも繁栄していくでしょう。

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  2. robin より

    国家戦略なら軍事と経済を兼ね備えた戦時と平時、非日常と日常のバランスを想定した戦略になると思うが、これはグローバルビジネス特区の方が相応しいのでは。グローバリストにとって最大の規制は国家なのだから国家戦略の攻略の対象は国家であり頂けない。「国の成長戦略」の内容が外需や観光というのも笑えない、日本人による国内への投資をPB黒字化で減らし消費増税で内需を縮小させる。財務省は日本のための省庁か。いかに単純労働者という資源を安く使って株主への配当金を膨らますことしか考えていないのでは、法人税減税の補完のための消費税増税だろうか。人を育てるつもりがあるなら高く買う、雇うべきでは。成長という不確実は経済学では想定しないのだろうが。

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  3. ぬこ より

    消費増税になったとしても、0%課税取引で、増税処か、むしろ還付される大企業の輸出企業
    そして、消費増税と対になるのが法人税減税(株主配当財源確保)
    その大企業、株主は3割超が外国人(ほとんど英米)

    ソドムとゴモラも真っ青の笑うに笑えぬ現実

    PODAMとゴイム(支配層は工作員、愚民は家畜)

    まさに地獄!!

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  4. あまき より

    加計問題のいったい何が悪いのか答えてみろと怒っている運動家先生がおられたが、急落した内閣支持率は工作の可能性があるとする書き込み含めなかなか感情的で面白かった。ついこの間まで各々が心ゆくまで満足されていたであろう高支持率も工作だったということらしい。

    巨躯の運動家社長も不思議だった。現政権による移民急増にも尖閣対応にも慰安婦合意にも堂々異を唱えてきた同じ口で、国家戦略特区の加計のどこがいけないと開き直る神経が見ていてほんとうにわからなかった。合法なら移民急増も尖閣対応も慰安婦合意も問題はないことになる。

    支持率急落という大陥没に慄き、すわ加計が原因かと急ぎ自民に代わり穴埋めを買って出ているとしたら、加計はきっかけに過ぎないのだから焼け石に水だろう。左すら気がついて、長年三橋さんが訴えて来られた国家戦略特区の売国的本質を報じ始めている。その亡国メディア連中にますます遅れを取って自ら空間を狭めるような真似は、志を誇るこの方たちにふさわしくない。

    基準値の範囲内だから「問題はない」とする政権が垂れ流して来た廃液によって国の根太が侵され、社会の床があちこちで抜けてきたと国民が騒ぎ始めた。それを、お前らがメディアに煽られてみんなで騒ぐから抜けちまったんだと言う。もっと大局に立てと。家ごと吹き飛ばそうとする勢力がいるのだぞと。床が抜けるくらい何だと。次のあるじを窺う党内対立陣営は増税に緊縮に親中だぞと。宥めて脅して擁護して、防衛予算緊縮のまま米軍駐留前提のまま、加憲改正を是が非でもだと。

    憚りながら、ここで口真似をお許しいただきたい。小さい声で言う。くたばりやがれ。

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