欧州

2018年7月31日

【三橋貴明】蘇る国境

From 三橋貴明@ブログ

世界で「国境」が蘇りつつあります。

「もはや国境や国籍に
こだわる時代は過ぎ去りました。」

といった認識が、
「もはや古い」「古臭い」
時代に入りつつあるのです。

『民主反対なら「政府閉鎖辞さず」
=移民政策で強硬姿勢-米大統領
https://www.jiji.com/jc/article?k=2018073000091&g=use

トランプ米大統領は29日、
ツイッターに

「民主党が国境強化に賛成しないのなら、
政府閉鎖もいとわない」

と投稿し、不法移民対策として
公約するメキシコ国境への
壁建設などを進めるよう訴えた。

11月の中間選挙を前に、
移民政策での強硬姿勢を改めて
支持層にアピールした。(後略)』

トランプ大統領は、別に
「移民排斥」を訴えている
わけではなく、例えば
永住権付与の対象を
くじで選ぶ制度や、
国境の不法入国者を
一旦釈放してしまう
現行制度の廃止を
訴えているのです。

つまりは「節度ある移民政策」
の追求ですね。

トランプ大統領は、

「われわれは立派な人々に
(移民として)来てもらう必要がある」

と、ツイートしており、
要するにこれまでの
無作為な移民受入から、
「アメリカ側が選択する」
制度に変えたいという話です。

メキシコ国境に壁が
建設されるかどうかはともかく、
アメリカが制度的に「国境を高める」
方向に動いているのは間違いありません。

『欧州への移民・難民に新ルート
国境管理厳格化でボスニアに迂回・滞留
収容施設めぐりEUと対立も
https://www.sankei.com/world/news/180728/wor1807280028-n1.html

バルカン半島の
ボスニア・ヘルツェゴビナが
欧州諸国に向かう難民・移民の
新たなルートとなり、
その流入が深刻な
問題となっている。

欧州連合(EU)の対策が
遅れる一方、周辺のEU加盟国が
独自に国境管理を厳格化したことで、
非加盟のボスニアがしわ寄せを
受けた形だ。(後略)』

2015年のメルケル政権による
移民受入の余波が
未だに続いています。

ハンガリーを皮切りに、
EU加盟国が次々に
国境を高くしていった結果、
ドイツ、スウェーデンを
目指す移民がボスニアに
「滞留」してしまっているのです。

EUに加盟しているクロアチアは、
国境の壁を厚くしているため、
ボスニアからしてみれば、

「何してくれとんじゃ!」

という話になります。

もっとも、クロアチアに
責任を押し付けるは酷であり、
やはり「メルケルの責任が最も重い」
としか表現のしようがないのです。

アメリカの場合は、
元々が移民国家であるため、

「不健全な移民国家から、
健全な移民国家を目指す」

ために、国境管理を
厳格化していっているわけで、
まだしも救いはあります。

といいますか、お移民問題の
「落としどころ」はあるわけです。

それに対し、欧州はありません。

移民国家ではなかった国々に、
ドイツの勝手な振る舞いにより
移民が押し寄せ、国民国家が
壊れていっているのです。

当然、国民国家を維持したい国から、
つまりはハンガリー、ポーランドから
国境を高くし、「我が国だけは守る」
という姿勢を見せ始めました。

問題は、すでに移民人口比率が高い
ドイツ、オーストリア、スウェーデン
などです。

これらの国々では、
反・移民が広がり、彼らがいう
「極右勢力」の政治的パワーが
伸びてきています。

オーストリアは、すでに
反移民色が強いクルツ政権が
誕生しました。

クルツ首相は、7月頭に
メルケル政権が移民送還を
めぐりもめていた際に、

「(オーストリア)政府は、
特に南部の国境の保護に向けた
措置を講じる用意がある」

と、発言しています。

移民を守る。

ではなく、国境を守る、
時代というわけですね。

もっとも、アメリカとは異なり、
ドイツやオーストリア、スウェーデン
などの移民問題は「落としどころ」
が見えません。

とっくに手遅れになっており、
今後はひたすら「移民問題」で
国内が混乱する状況が
続くのかも知れません。

(さすがに「移民排斥」は困難でしょう)

移民問題が厄介なのは、
日本もそうですが、
「国民を分断」
してしまうことです。

反移民派が勃興すると、
移民を庇う勢力も
「人権!」「寛容!」「多文化共生!」
などと叫び始め、同じ国民同士が
決して相いれない価値観を振りかざし、
衝突を繰り返すことに
なってしまうのです。

いずれにせよ、中長期的に見る限り、
世界の主要国は「国境を蘇らせる」
方向に動こうとするのは
間違いないでしょう。
(成功するかどうかは別にして)

そんな時代に、国境を
引き下げようとしている我が国が、
将来に対しどれほど危険な
リスクを押し付けることになるのか。

日本国民は改めて
考える必要があります。

日本は欧州の道を
たどってはならないのです。

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