日本経済

2018年12月17日

【三橋貴明】経済の問題。

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】

“移民法”が日本にもたらすもの(前編)
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12425597281.html
“移民法”が日本にもたらすもの(後編)
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12425802744.html

日本の移民受入論は、
別に最近始まったわけではありません。

80年代から、
「経済」「生産性」等に無知な識者が、
無責任な移民受入論を主張し、

それに西尾幹二先生や、
故・西部邁氏が反対する構図があったのです。

西尾先生の「「労働鎖国」のすすめ」 から、
移民推進派の宮島喬氏の発言を引用します。

『「今までの日本の社会が閉鎖的であったことを考えると、
外国人労働者を一定程度受け入れることは日本の社会を国際化する、
開かれたものにするという意味でいい刺激になるとおもいます。」

「将来の日本人の高齢化、高学歴化、経済のサービス化、
この三つが進みますとどうしても外国人労働者が必要になる
熟練度の低い職種が出てくるでしょうから
(単純労働)だからだめというのは硬直した考え方だと思います。

むしろ将来に備えて、
低熟練の外国人が日本に入国して、一定の訓練や教育を受け、
必要な職種に就いていくための

受け入れ体制を作っていく必要があると思います。」(「国際人流」平成元年四月号)』

何というか、わたくしに言わせれば
物凄い「人種差別主義」「職業差別主義」だと思います。

「熟練が低い低賃金の職で、
日本人が就きたがらない」

のであれば、生産性向上で賃金を引き上げ、
その職に日本人が就けば
「家が建つ」状況にするべきなのです。
それが資本主義です。

ところが、宮島氏は
「低賃金の非熟練職は外国人にでもやらせとけ」
と言っているわけで。
露骨なまでの差別主義者でございます。

それはともかく、
80年代の日本は経済が絶好調。
国民の人件費も、未だに上がり続けていました。

日本の人件費が下がり始めたのは、
97年の橋本緊縮財政で
経済がデフレ化した以降のことです。

当時の日本は「ヒトが高い」国だったのです。

というわけで、
「こんな人件費が高くては、
グローバル市場における
国際競争力(※価格競争力)が低下する」

という議論が起き、
移民受入論が始まったのです。

とはいえ、改めて考えてみると、
「ヒトが高い国」とは素晴らしい国です。

しかも、ヒトが高い環境は、
資本主義的には生産性向上を企業経営者に強要します。

何しろ、そもそも現代的な資本主義は、
東インド会社がインド産綿製品
(キャラコ)をイギリスに持ち込み、

かつ「イギリスの人件費が
インドの約六倍だった」という「環境」が始めたのです。

六倍の人件費を吸収し、
イギリス国内における「イギリス産綿製品」の価格を
インド産よりも引き下げるにはどうしたらいいのか。

生産性向上で、単位労働コストを引き下げるしかありません。

というわけで、
綿製品の生産コストを引き下げるための
技術発展が始まりました。
すなわち、産業革命です。

産業革命という技術投資と設備投資により、
イギリスの綿製品の生産性は
「数百倍」になりました。
結果、何とイギリスからインドに運ぶ運送費を考えても、

「イギリス産綿製品が、
インド市場においてインド産綿製品よりも安い」

状況になり、イギリス綿製品が
インド市場に雪崩れ込みます。
結果、インドの綿産業は崩壊。

それまで、綿布産業で繁栄を極めていた
インドのダッカ、スラート、ムルシダバードなどの街は
貧困化の一途をたどり、当時のイギリスのインド総督が、

「この窮乏たるや商業史上にほとんど類例を見ない。
木綿布工たちの骨はインドの平原を白くしている」

と嘆くに至ります。

その後、インドはイギリス産綿製品の
「市場」及び綿花の供給地に落ちぶれ、
最終的には「イギリス領インド帝国」と化し、
インドの「住民」は主権を失いました。

生産性向上とは、
まさに「歴史を変える」ほどにインパクトがあるのです。

カール・マルクスの唯物史観
(モノの生産諸力が歴史を動かすという考え方)は
、間違いなく一面の真理です。

さて、現在の我が国は長引くデフレーションで、
経済成長率が低迷。
先進国から「衰退途上国」と化してしまっています。

問題は、経済なのですよ。
経済成長を抑制するデフレーションを解決しない限り、
我が国に繁栄はありません。

そして、移民受入は生産性向上を抑制し、
かつ国民を「安い賃金でも働く奴隷的労働力」との競争を強いることになります。

移民受入は、
「移民政策のトリレンマ」により国民の自由か安全な国家、
もしくは双方を破壊します。

加えて、大本の問題である
「日本の経済」をも壊してしまうからこそ、
三橋は猛烈に反対をしているのでございます。

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【三橋貴明】経済の問題。への2件のコメント

  1. 神奈川県skatou より

    >何というか、わたくしに言わせれば
    >物凄い「人種差別主義」「職業差別主義」だと思います。

    安易な「国際化」は欧米化にすぎず、そのなかには人種差別も含まれている場合もありますので、注意が必要ですね。
    かの地も一部、それから脱却しようとしているだろうとは思いますが。。

    むかしフランス留学した人から最近聞いたのですが、日本だと小学校では児童に教室や廊下、体育館の掃除をさせるのが普通だが、フランスではやらせないそうです。なぜか聞いたところ
    「掃除する人の職を奪ってはいけない」
    ということだそうでした。
    一見素晴らしいような返答ですが、そこには
    「掃除は旧植民地の人の仕事」
    という職業差別があるいうことです。

    ちなみに自分は、スタートレックNEXTGEN(だったかな?)をみて不快に思ったことがあります。これは無様な宇宙人の話ではなく、アジア人蔑視じゃないか、という疑義ですが。

    どこにどんな形で潜んでいるか分からない。それは彼ら自身、悩んでるかもしれないが、厳然として今なお存在し続けている可能性がある。
    無分別な国際化は、とても罪深いと言えそうですね。
    (その点、安倍世代には無理そうですが)

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  2. 日本晴れ より

    お金の問題もあると思いますが
    この間のチャンネル桜の討論で松原議員が
    東日本大震災の時も暴動は起きずに略奪が起きずに人々は列を作って並んで物資を待っていたこれが失われます移民でというのが印象的に残ってます。お金では買えない日本の良さが移民で失われるでしょうね安倍総理や自民党は売国です。

    返信

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