日本経済

2018年11月3日

【三橋貴明】誤解なき「移民政策」

From 三橋貴明@ブログ

三橋TV第10回
【中国は日本の20倍の軍事力に?】
https://youtu.be/bsFgk4i2XxI

農業分野の「生産性向上」の
歴史は本当に面白いです。

日本は端から収量倍率が
高い稲作だったため、
土地面積当たり養える人口は
それなりに多かったのです。

というわけで、日本は江戸時代から
すでに欧州諸国と
比較すると人口大国でした。

しかも、動物性タンパク質を
魚貝類から摂るため、
「牧畜」の必要がありませんでした
(宗教上の理由で、四つ足の動物を
食べることが禁じられていたため
もありますが)。

対して欧州は、収量倍率が低い麦作中心。

かつ畑作であるため、
連作障害を避けるために三圃制。

さらに、動物性タンパク質は
家畜から摂るため、
広い土地が必要になります。

江戸時代、土地面積あたり養える人口は、
欧州は日本の十分の一程度に
過ぎませんでした。

とはいえ、それでも中世以降、
欧州の農業はローマ時代と
比べると格段に進化したのです。

具体的には、鉄製の農機具の普及、
犂を引かせる動物が、牛から馬に変わる。

さらに馬の轡や曳き革、蹄鉄が発明され、
大型の鋤を十頭を超える馬で
一気に引けるようになりました。

現代でいえば、トラクターの
出現のようなものです。

中世欧州の農業生産性は、
11世紀以降の二、三世紀で
二倍から四倍に向上したと
考えられています。

となると、むしろあれほどの
インフラ技術を誇ったローマ帝国で、
なぜ農業分野の生産性が
起きなかったのか、
という疑問が生じます。

色々調べた限り、
ラティフンディウム(大農場+奴隷制)、
コロナートゥス(ほぼ農奴制)
といった「制度」にあったとしか
考えられないのです。

つまりは、働き手(奴隷、小作農)に
生産性向上の意欲がなかった、
という話です。

安倍政権は、口では
「生産性向上」といいつつ、
同時に移民を入れようとしています。

カネ目的の移民が、
「日本の農業」のために
生産性向上に努力してくれる
はずがないのです。

何しろ、彼らにとって
日本の農地は「自分の土地」
ではないのです。

『入管法改正案
外国人労働者受け入れ上限設けず
https://mainichi.jp/articles/20181102/k00/00m/010/171000c

山下貴司法相は1日の
衆院予算委員会で、
外国人労働者受け入れ拡大のための
在留資格新設を柱とする
入管法改正案に関し、
受け入れ人数の上限は設けない
方針を示した。

受け入れ見込み数は
「法案審議に資するよう精査する」
と述べ、改正案が実質審議入りする
時期にも公表する可能性に言及した。

一方、主に途上国の外国人が対象の
「技能実習制度」で来日した
技能実習生のうち、
今年1~6月に4279人が
失踪したことも明らかにした。

政府は2日、改正案を閣議決定する。
(中略)

安倍晋三首相は予算委で

「移民政策をとることは考えていない。
誤解を払拭(ふっしょく)したい」

と重ねて強調。

根本匠厚生労働相は、
労働基準法などの労働法制が、
労働者の国籍にかかわらず
適用されると説明した。

長妻氏は外国人技能実習生の失踪が
過去最多ペースだと指摘し、

「(受け入れを)
どんどん広げていくのは無責任だ」

と批判した。(後略)』

「移民政策をとることは考えていない。
誤解を払拭したい」

と、安倍総理は発言していますが、
今回の入管法改正案は、
紛うことなき「移民政策」です。

そもそも、しつこく繰り返しますが、
移民とは、

●国連の定義:
出生あるいは市民権のある
国の外に12カ月以上いる人

●OECDの定義:
国内に1年以上滞在する外国人

なのです。

しかも、今回の入管法改正が、
外国人労働者に「定住」「家族帯同」
の道を開き、さらに
「受入数に上限を設けない」
というのでは、
これは移民政策というよりは
「過剰な移民受入政策」
以外の何物でもありません。

誤解など、存在しないのですよ、
総理。

特に、現在の日本は
生産年齢人口比率の低下を受け、
人手不足が深刻化しています。

無論、農業分野に
おいても顕著です。

ならば、政府は移民受入ではなく、
生産性向上のための投資に
「おカネを支出」する必要があります。

具体的には、農業自動化の
技術開発を進めつつ、
新設備を導入する農家に助成金なり、
補助金を出す必要があるのです。

農家にしても、

「今まで、十人を雇わなければ
できなかった収穫作業が、
一人でできた」

ということになれば、
生産性が十倍になった
という話になります。

論理的には、所得が
「実質」で十倍になるのです。

これこそが、「国民が豊かになる」
であり、経済成長なのです。

ところが、日本政府は
相も変わらず緊縮財政。

あらゆる規制を緩和、撤廃し、
日本の将来を破壊したとしても、

「政府がカネを使うのだけは嫌だ!」

というわけで、経済界の要望もあり、
人手不足を移民で
埋めようとしているわけです。

グローバリズムのトリニティでいえば、
緊縮財政を前提に、
規制緩和+自由貿易である
「ヒトの国境を越えた移動の自由化」
を進めていっているわけでございます。

結局、根っこに「緊縮財政」がある以上、
安倍政権にまともな
「経世済民」の政策は打てないのです。

とはいえ、このまま黙っていても
仕方がありませんので、

「資本主義国ならば、
人手不足は生産性向上で埋める」

「生産性向上のために、
政府は財政支出を拡大する」

といった「正しい政策」を
ひたすら訴えていくしかありません。

今後も何千回も繰り返すつもりですが、
人手不足は移民ではなく
生産性向上で埋めるのです!

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【三橋貴明】誤解なき「移民政策」への2件のコメント

  1. たかゆき より

    政治は 芸術だ (たぶん)

    政治家や 役人の 出身大学
    その 偏差値の 優劣など
    なんの役にも立たない

    政治的センスが なければ 
    この ザマ

    センス って 

    選挙や 国家試験では 明らかにできないのでは?
    では どうするか??

    それが 問題

    センス皆無の
    白痴には 白痴の政権しか持てないのだ べ ♪

    返信

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  2. あまき より

    玉石承知でGoogle Mapの口コミを見るとなかなか興味深い。
    外国人労働者に依存する業界店舗への酷評が半端ないレベル。
    中には利用者なら誰でも嘘でないとわかる詳細に及ぶ例も。

    事あるたびに反ヘイト法を印籠に打擲せんと出て来る左側。
    しかしイデオロギーと無縁で暮らす一般国民は誠に正直です。

    韓国徴用工裁判判決。外国人と乗じての渋谷ハロウィン暴動。
    日本に対する4灯式信号でいう「黄・黄」の警戒現示では?

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