日本経済

2018年6月12日

【三橋貴明】長崎新幹線 フル規格軸に検討を!

From 三橋貴明@ブログ

時局 2018年 07 月号 に、連載
「三橋貴明の経世論 第16回
資金の過不足」
が掲載されました。
https://amzn.to/2sHdYfp

改めて、長崎新幹線(新鳥栖-武雄温泉)
整備の収支改善効果(年平均)は、
以下の通り試算されています。

● フリーゲージトレイン ▲20億円
● ミニ新幹線 単線並列 約9送円
● ミニ新幹線 複線三線軌 約2送円
● フル規格 約88憶円

一番「危険」なのが、
フリーゲージトレイン(FGT)です。

長崎新幹線でFGTが成功してしまうと、
我が国は今後二度とフル規格の
新幹線の整備計画化ができなくなる
ところでした。

何しろ、「あの」財務省が
FGTにはしつこく予算を
つけてくるのです。

ただでさえ収支改善効果がなく
(というかマイナス)で、
かつ日本国のフル規格新幹線に
「とどめ」を差しかねなかったのが、
FGTだったのです。

『長崎新幹線 FGT導入を見送り
ミニ新幹線を軸に検討へ
https://mainichi.jp/articles/20180608/k00/00e/020/270000c

九州新幹線長崎ルートに関する
与党の検討委員会は8日の会合で、
車輪の間隔を変えることで
レール幅の異なる新幹線と在来線を
乗り継ぐフリーゲージトレイン(FGT)
の長崎ルートへの導入を
見送ることを決めた。

今後、全線が新幹線のフル規格か、
線路の敷設を工夫して在来線でも
新幹線が走れるミニ新幹線を
軸に検討する。(後略)』

いやいや、FGT見送りは慶事ですが、
なぜ「ミニ新幹線を軸」に
検討になるのでしょうか。

記事中で、

「国土交通省の検討結果では、
全線フル規格が費用対効果の面で
最も優位としており、
長崎県もフル規格での整備を求めている。

しかし、整備費の総額は膨らむため、
佐賀県が過大な財政負担などを理由に反対。

与党検討委は今後、佐賀県の負担軽減
についても検討する方針。 」

と書いていながら、勝手に
「ミニ新幹線」が軸といった
見出しを掲げる。

毎日の記事を隅から隅まで読んでも、
「ミニ新幹線」が軸になるという
根拠は書かれていません。

記者による、明らかな印象操作です。

ミニ新幹線とは、
既存の鉄道路線の線路の横に、
もう一本線路を敷き、
新幹線が「通行可能」とする手法です。

実際に、秋田新幹線、山形新幹線は
ミニ新幹線方式です。

秋田新幹線も山形新幹線も、
車両は新幹線車両なのですが、
線路は普通の鉄道です。

というわけで、ミニ新幹線は
「新幹線」と名前はついているものの、
速度は時速110キロ程度しか出ません。

新幹線で東京から秋田に
行ったことがある人は、
気が付くはずです。

東京から盛岡まで速い速い!

そして、盛岡から秋田まで遅い遅い!

実は、福島から山形を経由し、
秋田に至る「奥羽新幹線」の
基本計画は存在します。

ところが、整備計画にはならない。

「とりあえず、新幹線車両で
秋田や山形に行けるから、
奥羽新幹線はもういいや」

となってしまったわけでございます。

一旦、長崎新幹線の
新鳥栖-武雄温泉間が「ミニ新幹線」方式で
整備されてしまうと、
同区間のフル規格化は
二十三世紀になっても実現しないでしょう。

同区間がフル規格で整備されると、
長崎-博多間が51分。

佐賀-博多間が20分に短縮されます。

無論、フル規格の場合は
佐賀県の負担が800億円ほど増えます。

とはいえ、
フル規格新幹線整備の経済効果は、
間違いなく800億円どころ
では済みません。

何しろ、新幹線整備の投資は
一時的なものですが、
効果は何十年も続くのです。

長崎新幹線は、フル規格で
整備しなければなりません。

そのために「政治」が動かないのでは、
日本に政治家は不要、
という話になります。

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【三橋貴明】長崎新幹線 フル規格軸に検討を!への2件のコメント

  1. ぬこ より

    財務省の裏の勢力を分析しないと、分かりませんよね。

    失わせた(笑)20年の一方で、日本の過剰な資金や供給力や技術の恩恵を受けつづけた、
    東の金融詐欺ローマ帝国と、西の存在詐欺ギョーザ帝国が露骨に怪しいですけどね。

    その両者を大きく育てたダイエー帝国もクソですけどね。
    イスラエル創ったり、パキスタン創ったり、世界中に核拡散したりと。

    明治維新から日本はダイエーの植民地みたいなもんですよね。
    ジャプコとでも言うんでしょうかね?

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  2. 長崎新幹線においては「N700系」「E5系」のような「標準軌・フル規格の車両限界の車両」が通れるようにする必要があります。そして、狭軌・在来線規格の車両も通れるようにしておく必要があります。
    「新幹線路線網の拡大と在来線路線網のを分断させない」という考え方からです。山形新幹線と秋田新幹線の田沢湖線区間では改軌されたため、狭軌の在来線が通れなくなってしまいました。

    この記事の著者に提言したいのですが、
    「フル規格の新幹線」を想定して記事を書いていると思います。確かにフル規格の新幹線の整備をすればマクロ的な経済・社会的効果は大きいですが、並行在来線経営分離や新幹線駅の有る無しによる地域格差発生などの問題があります。

    マクロ的な経済・社会的効果と地域格差発生の抑制の両立を図る考え方・方策として「中速鉄道」という概念を提案します。整備新幹線および「基本計画線」の多くは「中速鉄道」のほうが適していると思います。

    私が考える「中速鉄道」の形態として
    ・在来線を時速160km程度で走行できる規格に造り変える

    ・単線と複線を組み合わせたフル規格新幹線(最高速度は時速200kmくらいで曲線も既存の新幹線よりはきつめにしてもよい)。そして、部分的に並行する在来線とこの新幹線を並列させる

    ・青函トンネルと同じく、新幹線と在来線を同じ線路上に走らせる三線軌条方式(最高速度は時速160~200kmくらい)

    などを考えています。「マクロ」と「ミクロ」を両立させる事が大事だと思いますし、新幹線の整備において、並行在来線をJRから経営分離させずに済む方法を模索するべきです。

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