日本経済

2017年8月28日

【三橋貴明】ヴィンランドの自由

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
おカネを成立させる国家
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12304452651.html
沈黙は国民国家の「死」
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12304812034.html

中野剛志先生が、ザ・リアルインサイト2017年8月号
「亡国の呪縛!『貨幣の正体とグローバリズム』」
に出演されていました。
https://youtu.be/cq9PsBwt_2U

改めて、おカネとは何でしょうか。

何度も書いていますが、おカネとは
「貴金属」「交換用商品」とやらではなく、
債務と債権の記録です。

中野先生がリアルインサイトの番組で使った例ですが、
わたくしがイチゴを生産し、サバと交換しようとしたとします。

とはいえ、漁業に従事されている方は、
秋になるまでサバを水揚げすることはできません。

というわけで、漁民の方はわたくしからイチゴを受け取り、
「この証書を持つ人に対し、サバを○○円分支払います」
という借用証書を渡しました。

わたくしは、別に秋になるまで借用証書を
律儀に持ち続ける必要はありません。

自分の○○円の債務の弁済として、
借用証書を使ってしまって構わないわけです。

自分の債務の弁済のために、
他者に対する債権を用いる。

まさに、おカネそのものであることが分かると思います。

そして、人間は社会的な生き物です。

社会に属していなければ、
生きていくことはなかなか難しいわけです。

なぜ、社会に属する必要があるのか。

それは、人間が文化的な生活を送る上で、
道路をはじめとする公共インフラ、警察、
消防、軍隊、司法、医療といった
「公共サービス」が必要であるためです。

インフラもない、警察も消防も軍隊も司法もない。
医療も自分で何とかしなければならない。

弱肉強食のサバンナですが、
よく例に出す「ノルウェーのバイキング」たちが、
まさにこの状況でした。

十世紀頃、ノルウェー人(「ノース人」あるいは「バイキング」)は、
ブリテン島北部、フェロー諸島、アイスランド、グリーンランドに植民しました。

その一部が、現カナダ東部
(ニューファンドランド)にまで到達したのです。

ニューファンドランド島からは、
当時のノルウェー人が持ち込んだと思われる
糸車や鍛冶の道具などが発見されています。

いわゆる、ヴィンランド(草原の地)です。

ヴィンランドに到達したノルウェー人のトールヴァルドらは、
いきなり先住民九人と戦闘状態になり、
一人を逃してしまいます。

さらに、トールヴァルドたちは
一団の小舟に乗った先住民に襲撃されます。

一連の戦闘で、トールヴァルドが矢にあたって死亡。

とはいえ、何しろヴィンランドには
政府(ノルウェー政府)がありませんでした。

先住民との戦闘で死亡しようとも、
いかなる金銭的損失を受けたとしても、
全ては自己責任です。

「全てが自己責任」の世界で生きていくことは、
なかなか難儀な話です。

というわけで、人間は社会を作り、
政府が各種の公的サービスを提供することで、
豊かで安全な暮らしを実現しようとするのです。

その政府が、公的サービスの支出を
「日本円」で行う。

さらに、財源として日本国民から「日本円」を徴税する。

公的サービスは不要だ!
自分は山の中で、自給自足で生きていく!

というならば話は別ですが、そうではない以上、
日本国内で日本円以外のおカネが流通することはありません。

ところが、ビットコインといった
「グローバルな通貨」が流行すると、すぐさま
「いずれ日本円は駆逐され、ビットコインがおカネのメインストリームに躍り出る」
といった言説が登場します。

この手のバカ話に煽られ、ビットコインへの
「投機」が殺到した結果、以前は
1BTCが500ドル程度だったのが、
今や4000ドルにまで高騰しています。

まあ、投機はギャンブルであり、
巧く売り抜けられれば儲けることができますので、
止める気はないのですが、いずれにせよ
「自己責任」でございますので、ご注意ください。

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【三橋貴明】ヴィンランドの自由への3件のコメント

  1. robin より

    経済は社会の中に埋め込まないといずれ公共サービスも市場原理主義やレントシーキングの対象にされて社会そのものが不安定化しそうだが。グローバルな視点から見れば偏見だらけの自国文化によって社会秩序は維持されているのでは、グローバルな経済秩序、市場原理主義、拝金主義だけで社会が継続出来るとは思えないが。公務員が市場競争やらマーケットニーズやら経済学用語?に洗脳されている(振り、真似してるだけ?)のを見るとあなた方の役割は利益を上げる、歳出を削減することでは無いだろう、と言いたくなる。歳出削減は数値化出来るし目に見える、出世や限られたポストを巡る競争の上で平等な基準であり皆納得し易いのか。市場競争により品質向上や費用削減を促すのは間違いではないが利益以外の動機があっては問題なのか、公共サービス部門の動機はそれこそ皆の幸福のため、自国や家族を守るため、そういう動機は「時代遅れ」の自己満足なのか。全ての動機を金に統一することこそグローバルな平等なのだろう、経済学の前提でもあるのか、需要は無限にあり、デフレは存在しないで常にインフレ、公共サービスの概念も無い?、国家が国民に公共サービスを提供しないなら、納税の義務も無いのか、債務と債権の記録も成り立たずより原始的な貴金属の物々交換の時代に逆行するのでは。目には目を~もグローバルに通用しそうな平等な法だろうか。

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  2. たかゆき より

    バカ話 ♪

    世はバカ話の 洪水
    政府もマスコミも バカ話の 垂れ流し、、、

    仮想通貨は 所詮バーチャル 騙される方が マヌケ

    オツムの弱い方々の
    頭の螺子を どうやって緩めるかが 腕のみせどころ、、

    上は政府から 下は詐欺師まで 悪党が溢れかえる とよ あし はらの なかつ くに ♪

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  3. momo より

    全てを自己責任で生きていくのは不可能に近く、コストがかかりすぎます。福沢諭吉は「税金を払えば身の安全を保障されるのだから気持ちよく払え。自分で警察を雇ったら莫大な費用がかかる」と言っていましたが、まさにその通り。
    先日のチャンネル桜の種子法に関する放送において、野口種苗研究所の野口勲さんは「各家庭で家庭菜園をやっていただくしかない。それが種子を守る事につながるかもしれない」とおっしゃっていましたが、各人が家庭菜園を行うと、農家が栽培した食物をスーパーで買うのよりずっと、コストと労力がかかります。JA農作物品質管理にしてもそう。あれを自分たちでやろうとしたら、はっきり言って無駄です。我々はどれだけ安く、高品質な食料を手に入れることができていたのか。忘れてはいけませんね。

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