日本経済

2017年8月21日

【三橋貴明】インフラ後進国

From 三橋貴明

【今週のNewsピックアップ】
インフラ整備に向かうアメリカ、背を向ける日本
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12302212589.html
交通インフラの整備と経済成長
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12302748029.html

「我が国の優れたインフラが老朽化し崩壊するのを、
もはや看過することはできない。

我々は環境を保護しつつ、光り輝く新しい道路、
橋梁、鉄道路線、運河、トンネル、高速道路を建設する。

日本人の労働者、日本産の鉄、日本産のアルミ、
日本産の鉄鋼でわが国を再建する」

と、日本の総理大臣が国民に向けて演説した場合、
いかなる反響があるでしょうか。恐らく、

「また、公共事業のバラマキか!」
「公共投資などやると国の借金で破綻する!」
「また、鹿しか通らない道路をつくる気か!」
「人口が減っている日本で、道路なんか作るな!」

などなど、批判の大合唱がマスコミから始まると思います。

そして(不幸なことに)、多くの国民はマスコミの批判に同調することでしょう。

実は、上記はアメリカのトランプ大統領の
先日の記者会見をもじったものです。

「日本」を「アメリカ」に変えれば、
そのまんまトランプ大統領の演説になります。

高速道路、高速鉄道、港湾などの全国的な整備状況を比較すると、
日本はすでに「インフラ後進国」です。

それはまあ、1996年のピークと比較し、
公共投資を半分に減らしてしまった以上、当然です。

特に、地方のインフラ整備は立ち遅れは悲惨で、
各地の交通インフラは「昭和」水準にとどまっています。

ようやく作られた高速道路も、片側一車線対面通行ポール立てだらけです。

本来は、四車線で建設する予定だった高速道路が、
予算カットの影響で二車線しか作られず、
真ん中にポールを立てて対面通行で使用しているのです。

途上国ですら、こんな道路(暫定二車線と呼びます)を
高速道路とは呼びません。

しかも腹立たしいのは、自分は過去に整備されたインフラの
恩恵を受けていながら、将来のための投資を否定する連中が、
我が国に大勢いることです。

加えて、東京都民の問題。

東京都は、もちろん世界有数のインフラが整備された都市です。

民間の鉄道網を含めると、恐らく交通インフラの
水準は世界一ではないかと思います。

インフラ整備を続けてきたからこそ、東京に人が集まり、
東京圏は世界最大のメガロポリスに成長したわけでございます。

世界屈指の自然災害大国に、
世界最大のメガロポリスを造ってしまった。

正気の沙汰ではありません。

東京圏という怪物に若者を吸い取られ続け、
日本の地方は人口が減少していっています。

特に、生産年齢人口の減少が著しいため、
各地で人手不足が深刻化していっています。

だからこそ、生産性向上のための交通インフラの整備なのです。

現在の日本が地方のインフラ整備を大々的に実施すると、
短期的な需要創出でデフレから脱却でき、
東京圏と地方のインフラ格差が埋まり、人口流出が止まり、
少子化も解決に向かうことになります
(東京圏は日本で最も出生率が低いのです)。

もちろん、生産性向上効果により、日本経済の成長率も高まります。

それにも関わらず、陳腐な財政破綻論やインフラ否定論に
世論や政治家が騙され、地方の交通インフラ整備
という正しい道に踏み出せない。

我が国は「情報」の間違いにより、
国民が貧困化していっているという現実を、
日本国民は理解しなければなりません。

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【三橋貴明】インフラ後進国への8件のコメント

  1. 神奈川県skatou より

    三橋先生のご活躍を熱く熱く応援しております。

    どうしたらインフラを良くする機運になるのだろう。
    つらつら考えていたのですが、ビジネスの世界の手法で、こんなものがあります。

    同じ会社の人を他部門から数名集めて、ワークショップをします。テーマはまず、20年後の自分たちの(仕事の)未来を考えてみよう。つぎに、直近の課題と改善について考えてみよう。

    この方法はシンプルながら特徴があります。
    何の前提も無く現状の改善を考える場合、今の問題点を見ているだけでは新たな考えが出ないことが多いです。また、未来だけ考えると荒唐無稽になりがちです。20年先など、現実感がかろうじてある未来を最初に空想することから始めて目前の具体を考える、という方法があります。

    さて日本のインフラはどうしたらいいでしょう。
    20年後の日本は、どんな社会でしょうか。
    総人口は?人口分布は?産業は?工場は?産業用地は?オフィスビルは?勤労者は?通勤手段は?物流は?高齢者は?子供は?子育ては?エネルギーは?食糧は?資源は?・・・

    20年後の日本を、白地図に書いてみて、その未来にどうしたら近寄れるか考える。そういう方法のほうが単純な現状の修復だけでなく、今ある根源的問題(人口集中、産業偏在、通勤地獄等々)が、改善するかもしれません。発展の余地を確保するにも、必要かもしれません。
    (そもそもワークショップは街づくり勉強会で多用されていたりしますが)(日本全体である、ということが重要かと)

    描く未来は20年後。だから原野にメガロポリスを創造するなんて無茶はなく、今ある社会の姿を活かしつつ未来を考えることが
    出来そうです。

    そういう作業は本来官僚なり政治家がやるもの、やっているはずでしょうが、専門に分かれすぎているかもしれません。こういうことは門外漢のほうが面白いものができそうです。

    「経世済民」がテーマの方々が集まって作ってみたら、とても面白そう。ふとそう思いました。

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      1. 神奈川県skatou より

        あるいは、新聞記者などマスコミ業界の方にやってもらったら面白いかな、と。

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  2. momo より

    かの有名なミルトン・フリードマン大先生は、労働者達が財政拡大を求め続ける事に嫌気が差して、憲法だか法律にPB目標を入れ込んだとか。
    その頃のアメリカでは財政拡大が善だったようですね。たぶんケインズとケインジアンの影響が強かったからでしょう。今はその反動で、シカゴ学派が強い影響力を持っているので超緊縮財政が善となっていますが。
    三橋さんのおっしゃるように、インフレ期に財政引き締めしてデフレ期に財政拡大すればいいだけなのに、経済学者は自分の立場を守りたいがために、一生この不毛な争いを続けるんでしょうね。そして我々はそれに振り回されると。

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  3. とすくん より

    国家滅亡とは外敵からの攻撃によるものだけでなく内側から溶解していくのだという事が三橋先生のおかげで理解できました。自分は今、内側から崩壊しつつある国の途上の時代を生きているのだと。…周りの人間にそれを理解出来ている者は皆無です。ワタクシの中のヒーローはかつての洋楽歌手から今では三橋先生になってしまいました(笑)

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  4. 赤城 より

    世界屈指の自然災害大国に、
    世界最大のメガロポリスを造ってしまった。

    正気の沙汰ではありません。

    東京圏という怪物に若者を吸い取られ続け、
    日本の地方は人口が減少していっています。

    東京圏という怪物という言葉は非常に的確且つインパクトが大きいのでよい表現だと思います。
    まさにその怪物が日本を飲み込み自らを喰らって国家を自滅に追い込んでいるのです。そうして食われるより食う側に行きたいと怪物の一部になって生き残ろうとする日本の若者たちの姿は、我が国の行く末を示しているのでしょう。この国を自滅に進めている頭脳たちも皆怪物の一部であり、自分たちの目先の利益だけしか見えない東京日本人が日々怪物を育てている。そうして怪物は自らの手足まで食い散らかして喜び、何も出来ない丸々と太った体と首だけが残って本当にまな板の上の鯉状態になっているのでしょう。

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      1. 神奈川県skatou より

        自分が思うに、、田舎の若者が都会を目指すのは、本質かなと思いますので、それはそれでよいのかなと思います。むしろ、Uターンをもっと盛んなものにすればと。

        都会はある程度無機質であり、実験場でもあるでしょう。
        (都会の片隅にも田舎的暮らしも社会もあるのですが)

        そして若さが集まって活況となった果実は間接的に全土に還元する、するべき、「地方は自立せよ」とかいう昨今の大臣の真逆な思想で、というあり方のほうが、個人の成長に合わせた循環型社会になるのかなと。

        世界にまれにみる怪物の活かし方。
        ひとつの考え方ですが。

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        1. 赤城 より

          返信をありがとうございます。
          東京という一極過ぎる強者が怪物となって地方を食い殺していくという現実は、グローバル主義、新自由主義という名の弱肉強食至上主義と同じ根を持つ思想が根底にあると思います。強者のみが自己責任で生存できる荒野を良しとしている社会。弱者を食い散らかしてどんなに殺し続けても利益を独占する強者であり続けられる以上は賞賛される社会が今の日本に存在している。その感覚で強者が弱者を叩き殺す優越感と快感を得ることが出来て、さらにそれが天下の社会正義にもなる、大金儲けさえできていればね。一般の東京人にしてみれば弱いものを正義の棒で叩いて優越感というものも得られる。弱いものいじめを正義の名の下に堂々とできるわけです。
          この国の百年後の未来を見据えてなされる地方も含めた国家の生存戦略がどう考えても存在していない以上は自滅を止められないでしょう。国家予算が地方すべてに十分に付けられることがこのまま永遠に無ければ地方が叩かれ潰され食われることも止められない。若者も生存のために有利なら当然出て行って外国人が増えるだけでしょうね。仕方なく出て行った人が帰りたくなって帰ってくる人も少ないけどいますが。地方の未来が東京以上に見えないのだから仕方ない。

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  5. あまき より

    高速交通網整備の必要を強く信じている者のひとりだが、ネットワークの観点から言って、中央新幹線のリニア方式採用はむしろ新幹線網整備に水を差すことになるのではないか、と往生際の悪い私はいまだにぶすぶす拘っている。

    教科書のような理想を言えば、すべて「開いた」システムで整備されてゆくのが望ましい。高速道は一般道と接続し相互乗入れ可能なので「開いた」システムである。一方新幹線は、経緯から在来線との相互乗入れが基本不可能となり、「閉じた」システムとせざるを得なかった。

    閉じたものをネットワークで活かすには、開いたものに造りかえる(英欧のように新在直通を可能にする)か、閉じたもの自体でネットワークを構築(新幹線網を整備)する必要がある。我が国は現実的選択として後者を取ったが、いまだ新幹線網と呼べるものが存在しない。その新幹線網が出来ていないうちに、新幹線からも「閉じた」リニア方式が中央で採用されてしまった。

    これが従来の鉄輪式なら、高速道と同じ「開いた」システムで、名実ともに東海道のバイパスとなっただろう。山陽方面から中央に続々乗入れ、所要時間を短縮してゆく様子を見れば、四国山陰建設の機運さらに高まっただろう。鉄輪式でも経営判断として直通させないのではと見る向きもあろうが、新大阪で分割し以西は8両ずつ走らせるという手もある。いずれにせよ中央がリニア方式で閉じられるとこれら自在な施策はかなわない。

    新幹線の大成功が、何か新幹線が完成を遂げたものとの思い込みを呼び、また半世紀を経ても本格実用に至らないもどかしさが採用に傾けさせたのかどうかはわからない。が、リニア方式決定によって新幹線網整備の議論とは関係がなくなった。そしてリニア方式のみ語られてきた背景には、東京一強を突き崩し、再浮上に賭ける大阪の立場を支持したい意向が強くあったものと、戯画的に憶測している。

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