日本経済

2016年8月31日

【三橋貴明】日本の正しい貧困対策

From 三橋貴明aブログ

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 経営・ビジネスではなく「経済」の目的が何かといえば、
「国民の需要を、(主に)国内の供給能力で満たし続けること」
 になります。そして、国民の需要が満たされない状況を「貧困」と呼びます。

 貧困には二種類ありまして、一つは、
「国民の需要を満たすための供給能力が不足している貧困」
 すなわちインフレ型貧困であり、二つ目は、
「国民が供給されたモノ・サービスを購入する所得が不足する貧困」
 すなわちデフレ型貧困になります。

 現在の日本が、実質賃金が下落するデフレ型貧困から抜け出せずに苦しんでいるのはご存じの通り。
 インフレ型貧困だろうが、デフレ型貧困だろうが、「貧困」は国民の実質消費が減少させます。「モノ・サービスが足りない」もしくは「所得が足りない」結果、「買えるパンの量が減っていく」のが貧困なのです。すなわち、実質消費の下落です。

『7月の実質消費支出、前年比0.5%減 市場予想は1.0%減
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL29HU6_Z20C16A8000000/
 総務省が30日発表した7月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は1世帯当たり27万8067円で、物価変動を除いた実質で前年同月比0.5%減少した。減少は5カ月連続。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値は1.0%減だった。季節調整して前の月と比べると2.5%増加した。
 勤労者(サラリーマン)世帯の1世帯あたりの消費支出は30万2422円で前年同月比3.5%減少した。3カ月連続で前年同期を下回った。』

 というわけで、日本の実質消費の対前値比のグラフをアップデートしました。2016年2月は、うるう年による嵩上げ分を差し引いてあります。

【日本の実質消費の推移(対前年比%)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_53.html#Jcon1607

 日経新聞は「減少は5カ月連続」と表現していますが、うるう年分を除くと、2015年9月から11カ月連続の下落です。

 何と、日本国民は実質的に一年近くも実質消費を減らしているのです。すなわち、「パンを買えなくなっている」という話です。

 まさに「貧困化」です。

 ちなみに、日本国民が貧困化しているのは統計的な事実であったとして、だからと言って「政府は国民にカネを配れ〜っ!」などと、サヨクチックなことを言いたいわけではありません。必要なのは、お金ではなく「所得」です。
 政府はお金を配るのではなく、仕事を創出するべきなのです。やるべきことは、たくさんあります。
 本日の「おはよう寺ちゃん」で寺島さんが仰っていましたが、日本には14000を超す河川が存在します。今回の台風10号もそうですが、先日の台風9号でも、埼玉西部などで、
「これまで氾濫するなど考えられなかった河川」
 が溢れ、洪水が発生しました。

 東北地方に台風が上陸した(台風10号)も初めてですし、北海道でこれほどまでに台風被害が起きたのも前例がありません。我が国の水害、土砂災害のリスクは、確実に高まっています。
 ならば、「国民の生命や財産を自然災害から守る」という需要に対し、政府が支出すればいいのです。そして、国民が「生産」を提供し、政府が創出した需要を満たしていく。

 結果的に、国民の所得が創出され、正しいルートで貧困が減少していくことになります。さらに、国民を自然災害から守ることができるのです。
 何が、問題なのですか。財源ですか?
 長期金利が▲0.075%で、日本銀行が国債を買い取ることで、政府の実質的な負債が減少していっている国で、何を言っているのか、という話です。

「国の借金があるから、公共事業はできない」
 などと主張する連中は、日本国民の生命や安全よりも、「カネ」「借金」しかも実質的には存在しない「国の借金」の方を重視していることになります。何と、浅ましい連中なのでしょうか。

 もっとも、上記の類の「浅ましい連中」が跋扈しているのは、日本国民が長引くデフレで「お金をあまりにも重視するようになった」ためでもあるのでしょう。というわけで、日本国民は改めて「お金」について学びなおす必要があると考え、三橋は現在「日本人が知らない本当のお金の話」(ヒカルランド)を書いているのでございます。

 いずれにせよ、日本国にとって正しい貧困対策とは、カネを配るのではなく「仕事を創出する」ことなのです。特に「国民の生命や安全を守る仕事を創出する」ことこそが、日本政府に求められているのです。

ーーー発行者よりーーー

はーやん様のレビュー: ★★★★★ 
「中国の本質が理解でき感謝です。」

特に印象に残ったのは以下3点となります。

1.グローバル経済の凄さ

確かに中国の経済規模は無視できないと思います。
冷戦前の1991年以前は鎖国していたので貧乏でしたが、
それ以降外資を導入して経済拡大したのはよく理解できました。

品質は悪いといわれていますが、新幹線も原子力も自国で
製造できるようになっているのは、経験の蓄積といえ、今後も脅威と思います。

2.中国共産党の意思決定の速さ

これは選挙で選ばれていないので民意を反映しないで
意思決定できる点がなるほどと思いました。
独裁国家であることを再認識しました。

3.尖閣の問題

日本として妥協してはいけないと思います。

領土問題は世界のどこでもありますが、
妥協すると相手の思うつぼっていうのは当たっていると思います。

いつ解決できるかはわかりませんが、
日本国として毅然とした対応が大切と感じます。

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【三橋貴明】日本の正しい貧困対策への2件のコメント

  1. kanata より

    公共事業を牛耳る都議会のドンに、現職大臣や官房長官までがひれ伏すようでは世も末です。小池都知事にはぜひ対決姿勢を貫いてもらいたいし、次の選挙で都議会自民党議員が全員落選し、桜井誠氏の「日本一」が取って代われば、本当に東京から日本が変わるかも知れません。それくらいのことが起きてほしいですね。

    返信

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  2. たかゆき より

    日本に主権は存在するか??存在しません。。。よって デフレ対策も行わず安全保障も 知らんぷり ♪他国から 「金よこせ」と 言われれば 抗うこともせず肯うだけ>「国の借金があるから、公共事業はできない」 などと主張する連中は、国民ではなく ただの人民国家の成立要件は 領土 国民 主権 とか、、この国には 国民がおらず 主権もなしそして領土さえも 他国の草刈り場よって 日本とは国家の体をなしていないのだ ♪

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