日本経済

2016年8月22日

【三橋貴明】運送サービスと防災安全保障

From 三橋貴明

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2016年7月12日、
南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設などが国際法に反するとして、
フィリピンが中国を相手に提訴した裁判で、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所は、
中国の主張に法的根拠がないとの判断を示した。

これに対して、中国は強く反発し、強硬な姿勢を崩していない。

また、8月6日には、日本の尖閣諸島周辺に中国の漁船約230隻が侵入し、
同日、中国の爆撃機が南シナ海を飛行するなど、挑発的な行為を続けている。

この先、中国の国際的立場はどうなっていくのか。それによって、日中関係はどうなるのか。

三橋貴明が、まずは現状を冷静に分析し、日本の強みと中国の弱点を炙り出し、日本が取るべき道を探っていく。

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「日中冷戦〜誰が日本を追い詰めたのか?」
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 【今週のNewsピックアップ】

快適な日常生活の「大黒柱」である運送サービスについて考える
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12191668076.html

続 快適な日常生活の「大黒柱」である運送サービスについて考える
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12191995815.html

二日続けて、日本国の「安全保障」の一翼を担う運送サービスについて取り上げました。

なぜ、運送サービスが安全保障と関係があるのか。それは関係がありますよ、とくに「防災安全保障」と。
大震災などの大規模自然災害が発生した際には、被災地が物資の不足に苦しみます。食料や水を手に入れることができないため、被災者は「弱い者から死んでいく」状況に陥るのです。

被災者の命を助けるためにも、被災地への道路インフラを早期に復旧し、運送サービスで物資を送り込まなければなりません。

当たり前ですが、日本政府が「予備の運送サービス」という供給能力を保持しているわけではないため、民間の運送サービスに依頼をします。

実際、東日本大震災の際には、被災者を救うために全国の運送業の方々がトラックに物資を積込み、大渋滞に苦しみつつも被災地へと徹夜の運転で向かいました。

一応、政府から「手当」が出たのですが、実際にはガソリン代にもならない水準だったそうです。

それにも関わらず、全国のトラック野郎たちは東北に向かったのです。なぜか。同じ日本国民が、苦しんでいるからです。

もはや、そこに「ビジネスとしての理屈」は存在せず、あるのは国民意識(ナショナリズム)だけです。ナショナリズムに基づく、運送サービスの苦労が、被災地の「同じ国民」の苦難を和らげたのは間違いありません。

すなわち、自然災害大国である我が国では、土木・建設サービス同様に、運送サービスについても「防災安全保障」を担う産業であると認識するべきなのです。

ところが、我が国は90年に物流二法を制定し、運送サービスの規制緩和を断行。理由は「運送サービスの費用を下げる」という、まさにビジネスとしての理屈によるものでした。

結果的に、運送サービスに新規参入が相次ぎ、価格も引き下げられ、98年のデフレ化以降は働き手の賃金までもが下がっていくという結果になりました。

そして、現在、賃金水準が低いために、人手が集まらず、サービス品質の維持が不可能になりつつあります。

同時に「次の自然災害」の際に、被災地を救うパワーが落ちつつあるという話でもあるのです。すなわち、防災安全保障の弱体化です。

ブログでは運送サービスの「防災安全保障」との関わりに触れませんでしたので、本稿で補足してきます。

ーーー発行者よりーーー

2016年7月12日、
南シナ海に対する中国の領有権主張や人工島の建設などが国際法に反するとして、
フィリピンが中国を相手に提訴した裁判で、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所は、
中国の主張に法的根拠がないとの判断を示した。

これに対して、中国は強く反発し、強硬な姿勢を崩していない。

また、8月6日には、日本の尖閣諸島周辺に中国の漁船約230隻が侵入し、
同日、中国の爆撃機が南シナ海を飛行するなど、挑発的な行為を続けている。

この先、中国の国際的立場はどうなっていくのか。それによって、日中関係はどうなるのか。

三橋貴明が、まずは現状を冷静に分析し、日本の強みと中国の弱点を炙り出し、日本が取るべき道を探っていく。

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【三橋貴明】運送サービスと防災安全保障への2件のコメント

  1. 拓三 より

    運送業は完全なるブラック化してまんな。この20年、規制緩和と歌いつつ規制強化されてきた業種や。参入が増え単価が下がり尚且つ走る時間、距離などの規制で所得が大幅に減少した最も政府によるポンコツ政策の煽りを受けた業種でんな。IT関係の人間が仕掛けたとは言わんけど、是非はともかく総合的に言えばGDPが下がったと言う事は経済が縮小した事だけは事実でんな。一部の企業(一部個人の所得)は大幅に伸びたけど。そもそも新自由主義的政策は人口増加(移民)ありきの政策や。人口増加(移民)がなければ経済が縮小し、デフレになるのは自然なこと。当たり前でんな。需要を育てることを考えへんのやから。(イナゴ政策)まあ、考えた民族は狩猟民族やし、しゃあないか。(奴隷政策も同じ発想)そんな事より、日本が移民なしでデフレ脱却したら大混乱が起きるかも。デフレ企業がデカくなりすぎているような。でも移民なしでデフレ脱却をする事が望ましいと思う今日この頃であります。  

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  2. 學天測 より

    お忙しいからでしょうかね〜三橋さんにしてはちっと議論の建て方がくどいし、荒すぎませんかね〜くどいようですが、はっきりいって疑問が湧きまくりです。1)労働者の所得を引き上げて、目先の人材確保と言う発想で対応できるとは将来的に思えないとすると結局、根本的な人手不足への対応は自動運転技術などの設備投資による生産性向上しかない訳でその辺なんともピンボケ。無責任に目先雇って、設備投資によって雇用がどうなるかわからんでしょう?2)労働者対してフローでしかない所得を上げても、土地本位制の時代はとっくに終焉しており、ストックではキャッシュフローでマイナスでしかない死産であるマイホームを購入させるのは時代錯誤とは考えませんか?教育にしても、住宅にしても、今後、政策は質を求められますよね?フローとして支出をさせればいいのではなく、将来キャッシュフローを生むきちんとした資産を買わせる事が大事でしょう。はっきりいってそういう自分らを富ますような選択をする賢い消費者、労働の在り方や生産性の向上を積極的に実現していく賢い労働者でなきゃフローでいくら配っても、負債ばかりを抱え込んでキャッシュフローを圧迫し厳しいのでは?3)そもそも、どういう産業社会をグランドデザインしているのか?21世紀は脱工業化の知的創造社会ですから、もしも中間層の所得を確保するなら起業させる事が大事でチャレンジさせるなら、むしろ中間層の労働者優遇よりも再チャレンジ、再起しやすい様な底辺を支えるセーフティーネットこそが大事ではないか?4)プラザ合意辺りからの経済的な日本包囲網を考えれば国際社会に対して、きちんと正統性を建てる事は大事でしょう。小市民な日本人の中間層の独りよがりなガラパゴスで矮小な幸せを語ったって説得力がない。例えばイーロンマスクなどああいう人類の未来を切り開くなど、そういう共感を呼ぶようなコンセプトじゃないとぱっとしないし駄目でしょう?それこそ、仮に経済が良くなっても、またまた国際社会からエコノミックアニマルなど言われやっかみを買い潰されますよ。アマゾンなどはアメリカなんかではITを使って一般人に配送に巻き込んだりしてますし、日本だってタクシーに一般人が参入するんですよね。その辺、どうにも知恵がなさすぎな気がしますね。一連のこの話は、なんか政治屋的な話で私は理解できない。

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