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2015年11月26日

【三橋貴明】御用学者

FROM 三橋貴明 http://keieikagakupub.com/38news/

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【YouTube】

本当に経済学は経済を良くするのか?
https://youtu.be/T7qPdljmVfg

TPPは日本の植民地化を進めるのか・・・?
https://youtu.be/ntQpHSDoyjY

三橋貴明が自らの目で確かめた中国”鬼城”の実態とは?
https://youtu.be/YkvY94zM_yc?t=4m16s

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1999年、ある学者が「転換期の日本経済(岩波書店)」を刊行し、社会保障と財政について、以下の通り主張しました。

「社会保障制度の基本に立ち返りどのようなシステムを設計するかではなく、ともかく財政赤字を抑制するためには数字の上でどのようなことがなされなければならないか、という議論が先行してきた。そのために『国民負担率』をめぐる議論と同じように、社会保障を抑制しないと日本経済が『破局』をむかえるというプロパガンダが使われてきた」
 
すなわち、財務省が主導する緊縮財政路線を手厳しく批判し、「財政や社会保障の本質的な意義を思い出すべき」という主張でございます。

実に真っ当で、納得がいく主張でございます。大変残念なことに、16年後の今も、財務省を中心に「社会保障を抑制しないと日本経済が破局を迎える」といったプロパガンダが横行し、デフレ下の緊縮財政が継続しています。

結果的に、我が国は成長路線を取り戻すことができず、財政が悪化し、またもや社会保障の抑制、という悪循環が続いているわけです。

『2015年11月25日 読売新聞「診療報酬下げ攻防へ 16年度予算編成 10年ぶり切り込み焦点」
2016年度予算編成に向け、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は24日、15年度からの社会保障費の伸びを5000億円弱に抑えることを柱とする意見書を麻生財務相に提出した。財務省は医療機関に支払う診療報酬を引き下げ、財政再建を着実に進めたい考えだ。しかし、厚生労働省と強い政治力を持つ日本医師会は反発しており、激しい攻防戦が予想される。(中略)

政府は6月、20年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化させる財政健全化計画を閣議決定し、「集中改革期間」とした今後3年間で社会保障費の増加を1.5兆円程度に抑える目安を掲げた。16年度の伸びを5000億円弱に抑えるのは譲れない一線といえる。財政審の吉川洋会長(東大教授)は記者会見で、「最初が肝心だ」と強調した。(後略)』

代表的な御用学者と言っても過言ではない東京大学の吉川洋教授が会長を務める財政審が、ついに本命たる診療報酬の引き下げに動き出しました。つまりは、財務省が診療報酬削減に進み始めたということです。

冒頭の「ある学者」の言葉を、再掲します。

「社会保障制度の基本に立ち返りどのようなシステムを設計するかではなく、ともかく財政赤字を抑制するためには数字の上でどのようなことがなされなければならないか、という議論が先行してきた。そのために『国民負担率』をめぐる議論と同じように、社会保障を抑制しないと日本経済が『破局』をむかえるというプロパガンダが使われてきた」

まさに、社会保障制度の基本を無視し、日本財政破綻論という嘘のプロパガンダに則り、社会保障の抑制を進めようとしているのが、吉川洋教授率いる財政審の御用学者軍団というわけでございます。
 
さて、上記の実に真っ当な社会保障と財政に関する主張が掲載された「転換期の日本経済」を書いた人物が誰なのか、お分かりですね。

もちろん、東京大学の吉川洋教授です。すなわち、現在は財政審の会長を務め、社会保障の基本を無視した緊縮路線推進のために尽力を尽くしている、吉川洋教授その人なのです。
 
これが、日本の現実です。

学者たちが、財務省の緊縮路線を推進するため、平気で「真っ当な主張」を翻す。理由が権力なのか、名誉なのかは知りませんが、学者としての良心の欠片も持たない御用学者たちの存在こそが、我が国の病の象徴なのでございます。

このまま財務省の診療報酬削減路線が推進されると、我が国の医療サービスの質は下がらざるを得ません。すでにして、現場の医師たちは人手不足の中、過労に喘いでいます。

ちなみに、OECD諸国の人口1000人当たり医師数の平均は3人ですが、日本は2人です。しかも、日本の医師数は、高齢者や産休でお休みしている女医さんなどを全て含め、水増しした状況でOECD平均の三分の二なのです。実際には、OECD平均の半分強といったところではないでしょうか。

なぜ、こんなことになってしまったのか。まさしく、1999年の吉川教授が懸念していた通り、社会保障制度の基本を無視した緊縮財政路線が推進されてきたためです。

そして、16年後の2015年、その吉川教授が自らが手厳しく批判していた、社会保障制度の基本を無視した緊縮財政路線の先頭を走っています。これが「日本の現実」です。

腐っている・・・・。以外に、表現のしようがありません。

この手の御用学者が政界を跋扈している限り、我が国が「経世済民」を取り戻す日は訪れないでしょう。

「日本の現実」に、改めて愕然としてしまわれた方は、
↓このリンクをクリック!
https://youtu.be/T7qPdljmVfg

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【三橋貴明】御用学者への6件のコメント

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  2. 稲美弥彦 より

    御用学者に限ったことではないが、世界各国の指導者を見ると皆さん、情けなく感じ、多くの学者と指導者が二枚舌を使い過ぎていると感じた。安倍や朴クネは反日や嫌韓で争っているけど、両方とも北朝鮮に厳しい上に新自由主義をやり過ぎている。現にこの前、韓国で反政府運動が出たのはその為であった。しかも両者ともアメリカを非難する態度が見えてこれず、米軍問題を問おうとしない。日本の米軍基地問題と韓国の米軍慰安婦問題は本質的にはアメリカを批判する際に重要な者だと言える。それで欧州の指導者も基本的には反ムスリム行為ばかりで差別ばかり行う。欧米人は自分の都合の良いようにロシアやイランを罵倒して、テロ組織ISISを支援するので、これも二枚舌と言える。こういうのを見ると各国の指導者はグローバリズムの進み過ぎで劣化して、各国の国民が自浄作用を失くしているように思えます。恐らく、欧州ならEUやユーロが壊れない限り、ムスリム差別が消えず、景気回復できないのは当然の結末でしょう。そして、安倍政権の批判も重要だが、国連の批判も決して忘れてはならない。

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  3. ofu_1 より

     同業者(アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞)の賞を貰ったクルーグマンがIMFの講演で自説は誤りと発表し、アベノミクスの梯子が外されました。 日銀に乗り込んで白河の首を取った安倍政権の今後の振る舞いは注目です。 霞が関も政治業者も自分の生活が一番大事ですので安倍晋三(敬称略)と一緒に沈む人は誰もいない筈です。 丸腰ですので他国に攻め込むことはできないので、近ちゃん、プーちゃん、オバちゃんからの助け舟を待つしかありません。  安倍晋三も自分の生活が一番大事ですので特攻アベノミクスから、国民をダシにして撤退作戦を敢行する筈です。 

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  4. 學天測 より

    私、歴史とか戦史とか兵法書とか法とか、その他もろもろ学ぶのが三度の飯より好きなんですけどもw社会保障制度の基本を無視した緊縮財政路線の先頭を走っています。というより人類の基本を無視した国家統治をしているというしかないです。論外ですよw歴史上、節約を主にして生き残れた共同体なんて聞いたことがありませんから。有りますか皆さん?私には理解不能だw

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  5. たかゆき より

    君子は豹変す♪易経にあるようですが、、、逆は必ずしも 真ならず。。君子豹変に続く言葉は小人は革面す。そこで 問題です。吉川某は次のいずれか?1)君子 2)小人 3)変人 4)君子及び変人 5)小人及び変人6)1)〜5)のいずれでもない

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  6. 拓三 より

    ただの臆病者で御座います。なぜこの人達が経済の主である『成長』と言う言葉を忘れたのか。博打で例えるならば、ここに大本命(1.2倍)の馬券があります。100万張れば20万儲けです。しかし外せば100万損です。外した時、つまり責任が及ぶ事を恐れているのです。この人達に、なぜ本命(高確率)なのか理由は関係ありません。外した時の責任の大きさだけなのです。だからチマチマ100円、200円で大穴しか狙わないのです。なぜ大穴(低確率)なのか理由は関係ありません。外しても100円200円なら責任は小さい事の方が重要なのです。負け犬根性そのものです。しかし「チリも積もれば山となる」と同様、負けは負け、それが今の日本経済で御座います。

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