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2014年12月14日

【平松禎史】霧につつまれたハリネズミのつぶやき:第八回

From 平松禎史(アニメーター/演出家)

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●『月刊三橋』12月号のテーマは「2015年の世界と日本はどうなる?」
世界はデフレ破局へと向かうのか? なぜ、マスコミの経済予測は信じてはいけないのか?

もし、あなたが、世界を正確に知り、嘘情報の被害に遭いたくないなら、、、

http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

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◯オープニング

やすらぎよ 光よ
とくかえれかし
命こめて 祈る我らの…
(後略)
(作詞:香山滋)
昭和二九年、1954年に公開された『ゴジラ』の終盤に歌われる鎮魂歌です。

この歌には、悲惨な出来事に直面した日本人の感性がとても表れていると思います。

第八回「日本よ、『とくかえれかし』」
『ゴジラ』は、ゴジラの上陸コースが東京大空襲と酷似しているということで米軍による殺戮を告発する意図がある、と論じる向きもありますが、これも一面はあったとしても映画のテーマを決定するものではないでしょう。
映画のテーマ、または映画が示唆するものはもっと広く、戦争だけに限ったものとは思えません。

「平和への祈り」が流れる場面は、生き残った子供たちの将来がやすらぎと光に満ちているようにと、そんな風に祈らずに入られない場面です。

どうして主語「誰が」「何が」が抜けてしまうんでしょう。
これは日本人独特の感性…自然災害との長い付き合いから生まれたものではないか、とボクは思います。
戦争も原爆の恐ろしい被害も自然災害の体験のように転化してしまうのではないか。

自然災害で「誰が」を追求しても始まりません。(対策の遅さを追求する向きはよくありますが…)
「何が」起こったかは受入れる他はありません。
頂いている恵みの方を重視して、土地を離れる選択はされず、残された我々がどう受け止めるかだ、と考えようとする。

所ジョージさんの名言としてブログなどで引用されているものにこんな戒めがあります。
「良い事も悪い事も自分のせい!他人のせいにしてるとそういう自分になっちゃうよ!」
この言葉にも、外に向けた「誰が」「何が」でなく自分の受け止め方だ、という意識が表れていますね。

西洋的な意味での思想の枠に収まらない感性、物事をそのまま引き受けようと心がける意志があるのかもしれません。
誰かのせいにして共同体が壊れるようなことを避ける意識が強かったのではと思います。
様々な矛盾を呑み込んで、民の安寧を八百万の神々に祈る…。

これは合理的な理屈で覆すことが出来ない感性ですよね。

日本国憲法、第九条について、制定の経緯や目的はともかく、この憲法で日本を立て直してきたという思いで守ろうとする心情も、日本的な感性だと思うのです。
日本人が考える沖縄米軍基地反対や反原発も、矛盾を含めてそう思えてきます。
安倍首相を絶対支持!という意見にも、祈りに近い気持ちがあると思う。

これもまた、理屈で覆るものではないように思います。

それが良いとか、悪いとかではなく。

_ _ _

我々日本人は…などと大上段に変えた言い方は不適切かもしれませんが…追い詰められた時に選択を絞り込んでしまう傾向があるように思います。
上手くいくときもあるでしょうが、絶対に善い結果を出すわけではないでしょう。
しかし、良い結果を出す保証がなかったとしても、「これしかない」と選択肢を絞ってしまう傾向があるのではないでしょうか。

理性と意志を持ちながら、相反する感傷で行動しようとする、「めまい」を起こしそうな行い。
矛盾することを同時にやってしまう”癖”を自覚しないと何度も同じ過ちを冒してしまいそうです。

当メルマガでもお馴染みで、『ゴジラ』を題材に著作を発表しておられる佐藤健志さんが、とある有料コラムでヒッチコックの『めまい』を題材に、矛盾することを同時に行ってしまう不思議な習性を論じられていたのも印象的でした。

_ _ _

「あのゴジラが最後の一匹だとは思えない。」
山根博士の言う「最後の一匹」は、戦争や災害、大不況という、ある時代の人間が体験する一つの惨禍を指して言っているのではないと思えてくる。

「水爆実験が続けて行われとしたら、あのゴジラの同類が…」と続きます。
直接的に受け取ればそれまでです。
しかし暗喩と考えれば、こうも言えなくはないですか?

「誰が」「何が」から、目を逸らさずよく見なければいけない。
軋轢を恐れて逸らしてしまう我々自身の”癖”を、まず知ろうとしなければ、またいつか同じ惨禍が繰り返されるだろう。
そんな問いかけにも思えてきます。

「犯人探し」をして吊るし上げよ、と言っているわけではありません。
何が失敗だったのか分析し見直すことは前向きなことであって、後向きな全否定ではないのです。

_ _ _

今日は衆議院選挙の投開票日です。

東日本大震災をもたらしたのは東北地方太平洋沖地震という怪物です。
あのような巨大地震はあれが最初でも最後でもなく、首都圏や東海、東南海でも今後数十年内に高い確率(首都圏では30年内に70%)で起こると言われています。
それでなくとも建設から50年以上経ったコンクリのインフラは老巧化して崩壊の危険があり、笹子トンネルでは死傷者まで出てしまっている。通行止めや通行規制のある橋梁は合わせて1200以上あるそうです。

日本全土に巨大怪獣が眠っています。

地域同士の助け合いを含め、災害が起こってから考えるのではなく、起きる前に考えて行動しておく。

そのための国土強靭化です。

最大限生かしてもらうよう一票を投じます。

_ _ _

1998年からデフレに陥った経緯と対策の誤りを15年後の現代の私達は知っています。
2012年末に誕生した今期の安倍政権が打ち立てたのが景気対策三本の矢です。

来年は第二の矢、財政出動の拡大が求められます。
過去の成功と失敗に学べば、今はその選択が正しいと思えます。
さらに、過去の成功と失敗に学べば、その選択がいつでも絶対に正しいのではないことも同時に認識しておく必要があるでしょう。
当メルマガを読まれている皆さんには釈迦に説法とは思いますが(^_^;)

現実を受け止めて、歴史に学んで国民と国土(=国家)のために最善を尽くす。
政治に求めるのはそれだけと言ってよいでしょう。

◯エンディング

過去…といっても十数年程度のちょっと前ですが…日本経済で行われたことを自分たちの頭で考えて、自分たちで見直すことが出来るようにならないと堂々巡りが続きそうです。
これって
戦後から現在まで、戦勝国の評価に盲従し自分たちで先の戦争を評価できていないこと目を逸そうとする心理と似通っていると思うのは気のせいでしょうか。
戦後体制からの脱却を唱えながら、戦後体制にしがみつこうとする「めまい」現象も。

_ _ _

「景気回復、この道しかない」

どんな道で景気回復するんですか?

日本よ、「とくかえれかし」

どんな日本に帰ってきて欲しいんですか?
っていうか、帰ってくるものなんでしょうか。

◯後CM 1
ボクも参加しています。
日本アニメ(ーター)見本市ー題字ハヤオ-
http://animatorexpo.com/

◯後CM 2
さかき漣先生原作の映像化
じわじわ進んでおりますよ\(^o^)/♪

PS
なぜ、民間エコノミストの経済予測は信用できないのか?
経済学の「嘘」を見抜いて世界と日本の動きを正確に知りたいなら、、、、
http://www.keieikagakupub.com/sp/CPK_38NEWS_C_D_1980/index_sv2.php

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